第一章 4 「転生特典」
朝宮 康の魂は二度死んだ。
一度目は腹部を思いっきりナイフで刺され、二度目は犬に噛み殺された。
どちらも最悪な死に方だがやはり頭から噛み砕かれるのは気分が悪くとてもいい死に方とは言えない。
ただ、なぜかこうしている間も康の意識はまだなくならない。
それどころかより鮮明に、繊細に、そしてよりはっきりとその意識がまたも覚醒し始めたのだった。
「あうっ!!」
赤ん坊がそうして体をありえないほどの勢いで起こす。
そしてその景色を再び見ることとなり、またもそれが確実なもの、確定的なものに変わっていき、朝宮 康はまたも自覚するのであった。
また…なのか?
それは同じような景色、同じような雰囲気の同じような場所だった。
先程までいた場所と同じように風も吹き、草木も揺れる。
まるでさっきまでが夢であったかのように、そして夢から覚めたかのように穏やかな意識の覚醒に戸惑うもそれが夢であったとは思わない、思えないでいた。
朝宮 康は鮮明に覚えている。
グシャッと音を立てながらも潰された自身の頭蓋骨の音を、
全身を噛み砕かれながらも尚、ギリギリで意識を保ち続けていたことを、
犬…のようなものに襲われ、抵抗もできずに少ない時間で二度も命をおとしたことを、
「ぁぁ、ぁぁ、」
赤ん坊の呼吸が乱れ始める。
それは康が確信したからだ。
自身の死を、二度目の死を…そしてまたもその時はゆっくりと近づいていたのであった。
そう、辺りを見回す。
さっきと同じような景色、同じような雰囲気…否、先程と同じ景色、同じ雰囲気、そしてこの風の吹き方も、段々と強まっていき、そしてまた―
「ガサッ」
そうしてまた、雑木林の中から音が立つ。
「あぁ、あぁ、うぅあ、」
先程と同じ状況、同じタイミングでまたもそいつは姿を現したのだった。
よく見れば普通の犬より少し赤みがかっており、そして何より獰猛な牙を隠そうともせずに大っぴらに出したその姿、本当に、本当に、普通の犬では無い。
ただ、警戒しようとも、どれだけ命の危機が迫っていたとしても、朝宮 康は逃れることが出来ないのだ。
「グシャッ、」
そう、生まれてまもないような赤ん坊では襲いかかってくる犬に抵抗もできずに食われて、そして死にゆく運命なのだと、朝宮 康は察したのだった…
―ふと、目を開く。
「あぁ?」
もうここまで来ると納得せざるを得ない、故に朝宮 康は生まれてまもなくしてこの世界を恨んだ。
もう一度…三度目の同じ景色、同じ雰囲気、そして風の吹き方すら変わらないままに同じ人生をまたも歩むこととなるのだった。
そう、何も出来ないまま、もう一度、朝宮 康は先程と同じ時間を繰り返す。
そして同時に思うのだった。
これこそが本当の無限地獄だと…




