第一章 1 「一度目の人生」
少年はただただコツン、コツンと歩いていた。
「――」
何もかもがどうでも良くなり、自暴自棄になって、そして結果、少年は様々なものを失った。
「なんで…」
少年の名は朝宮 康、今はただのニートとして街を歩き回っている。
こんなはずじゃなかった。
もっと上手くやれると思っていた。
そんな事を言っても周囲の目は冷たいまま、冷めきった目で康は街の人々から見られている。
それもこれも全ては康の日頃の行いが原因であり、何もかも全て自業自得、様々な悪事に手を染めた結果、康は今日、退学を言い渡されたのだった。
始まりは余裕のない生活とほんの少しの出来心からだった。
康は空腹状態でその場をさまよい、そして目に付いた商品を躊躇いながらも手に取り、そして自身の懐へと収めた。
その時から康はどんどん悪事を行うことが多くなっていったのだった。
万引きに始まり、人の財布をスったこともある。
それが徐々に、徐々にエスカレートしていき、最終的には人に対し暴力を振るうことも多くなった。
「クソっ、なんで俺ばっかり、」
―もちろん理由はある。
康には父親がいない。
そしているのは母親と、認知症を患った母方の祖母のみ、そんな状態では当然金にも時間にも余裕はなく、自然とそれは康にも影響を及ぼし、次第に、次第にだが康の心の中は荒んでいった。
まぁ結局、退学となった理由はクラスメイトを殴ったからであって康のこれまでの悪事が全てバレたからではなかった。
とは言っても、康に恨みを持つ者は大勢いる。
それこそ、街の人々は何かしらあれば直ぐに康を疑うほどに康は信用を失っていた。
退学になったのも全ては守ってくれる存在なんかがいなかったから、学校にも、街にも、多分この国には…いや、この世界にはもう、朝宮 康の味方をする者など…
「ふざけんなよっ、」
康は目の前にあった石を蹴りながら悔やんだ表情で地面を睨みつけた。
こんなの自分で望んだ未来なんかじゃない、これは違う。一体全体何故こんなことに…俺がなんでっ、
朝宮 康の望んだ未来…それは―
「グサッ」
鈍い音が康の背後から響いた。
その直後に康の背中からは考えられないほどの激痛が走る。
「あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、いだいっ、いだいっ…クソっ…なんでっ、お前は一体…」
「俺か?俺はお前に人生をめちゃくちゃにされた1人の人間だよっ!死をもって償えっ!」
そうしてフードとマスクを被った男にされるがままにそのナイフを振り下ろされ、最期は…
「クソがっ、」
背中が熱く、燃え上がりそうな程に熱く、絶叫しながらもこの世界を憎んで、そうしてそのまま、その男と同じ表情のまま、朝宮 康はその生涯に幕を閉じた。




