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第9話 ガラスの改良と新たな試み

エリザベートの家を訪れた翌日、俺は再びルートヴィヒの工房へと向かった。前回作った試作品のガラスは、確かに今まで市場で見たものよりも透明度が高かった。しかし、それでもまだ満足のいくレベルには達していない。


「お、坊主、また来たか」


工房の奥からルートヴィヒの渋い声が聞こえてくる。炉の前では弟子たちが忙しそうに動き回り、ガラス作りに励んでいた。


「試作品の仕上がりを見て、改良の余地があると思ったんだ。もっと透明で、質の良いガラスを作れないか考えたくて」


ルートヴィヒは腕を組みながら俺を見つめ、口の端を少し持ち上げた。


「ほう、なかなか商人らしいことを言うようになったじゃねえか」


―――


俺は前回作ったガラスのサンプルを手に取りながら、改良のポイントを整理する。


✅不純物をさらに減らす→ 砂の洗浄方法を工夫し、鉄分をより効率的に取り除く必要がある。

✅溶解温度の管理→ 高温を安定して維持できれば、ムラのない均一なガラスが作れるかもしれない。

✅成形技術の向上→ 厚みの均一化や気泡の発生を防ぐ工夫が求められる。


「まずは砂の純度をさらに上げたい。前回は川の砂を使ったけど、他の採取地も試してみたいんだ」


「なるほどな……」


ルートヴィヒは顎に手を当て、少し考え込む。


「そういや、昔王都で仕入れてた砂は、もっと純度が高かったんだ。今は手に入らねえが、あの品質を目指せばいいかもしれねえな」


「王都で? どこから仕入れてたんだ?」


「南の方にある鉱山地帯だ。ゲボ鉱山だったか…だが、そこから砂を運ぶには、かなりの金がかかる。商会の力を使えばどうにかなるかもしれねえが……」


(つまり、コストを抑えながら良質な砂を手に入れる方法を考えなければならないということか)


「まずは、エーバーハイム周辺でもっと純度の高い砂を探してみよう。それでダメなら王都からの仕入れも考える」


「よし、なら試してみるか」


ルートヴィヒの弟子たちと共に、俺たちは新たな砂の採取計画を立てることになった。


―――


砂の採取は商会の中堅商人であるオットー・ラングに依頼し、彼が数日かけてエーバーハイム周辺の複数の採取地からサンプルを集めてきた。


「マクシミリアン様、これが今回採取してきた砂です。川沿いのもの、丘陵地帯のもの、それぞれ性質が異なります」


オットーはいくつかの袋を並べ、それぞれの特徴を説明してくれた。俺はさっそく砂の粒を確認しながら、ルートヴィヒと話し合う。


「見た感じ、丘陵地帯の砂の方が鉄分が少なそうだな」


「確かに。色も少し白っぽいし、より純度が高いかもしれねえ」


「じゃあ、まずはこれを試してみよう」


オットーも工房の中で作業に加わり、弟子たちと一緒に砂の洗浄作業を手伝ってくれた。


「まずは細かいふるいにかけ、不純物を取り除きます。その後、水で洗浄し、沈殿物を取り除きましょう」


俺たちは連携しながら作業を進め、より透明度の高い砂を抽出することに成功した。


「これで、少しは改善されるはずだ」


そして、洗浄した砂をルートヴィヒの工房の炉へ投入し、ガラスの溶解を開始する。オットーも炉の温度管理を手伝いながら、慎重に作業を進めた。


「坊主、今回の出来は……」


炉から取り出した新しいガラスは、以前よりもさらに透明度が増していた。


「これは……!」


光にかざすと、前回よりも不純物が少なく、滑らかな表面が美しく反射している。


「やったな!」


ルートヴィヒも満足そうに頷いた。


「まだ完全じゃねえが、確実に良くなってる。次はこの品質を安定させることだな」


「そうですね。量産のことも考えないと」


オットーはにこりと笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。


「マクシミリアン様、これがうまくいけば、ザイドル商会にとっても大きな商機になりますね」


「そうだな。次の課題は、この品質を維持しながら量産できる仕組みを作ることだ」


ガラス作りは着実に進化している。次のステップは、この品質を維持しながら量産する仕組みを作ることだ。


俺はさらに改良を重ね、理想のガラスを作るための計画を立てることにした。

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