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第1話 異世界転生 主任から0歳児へ転職(ジョブチェンジ)商人の息子として再スタート

朝の通勤ラッシュ。ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中、俺は吊革を握りながら、今日の提案内容を頭の中で整理していた。


(まず、先方の課題を整理する……現行の物流コストが高すぎる。だからこそ、うちの新しい配送プランを提案すれば、コスト削減だけじゃなく、納期短縮にもつながるはずだ)


今日の商談相手は、長年の取引先だが、最近競合他社との契約も増えている。ここで提案を成功させなければ、今後の関係が危うくなる可能性がある。


(まずは、相手の反応を見て……)


次の瞬間――。


突然の衝撃が、全身を包んだ。


「……っ!?」


視界が揺れる。足元が崩れ、意識が遠のいていく。


――そして、次に目を開けた時、そこはまったく別の世界だった。


---


目の前に広がるのは、ぼんやりとした光と影の世界。

視界が定まらず、焦点を合わせようとしても、30センチ先のものしかはっきりと見えない。


(どこだ……?)


近くに、何かが動いているのが分かるが、その輪郭は曖昧で、ただ大きな影として捉えられるだけだった。


次に聞こえてきたのは、優しげな女性の声だった。


「この子の名前は、マクシミリアン。マクシミリアン・ザイドルよ」


(……俺の名前?)


どういうことだ? 意識ははっきりしているが、状況が全く理解できない。


さらに、周囲の様子を確認しようとした瞬間、自分の口から勝手に声が漏れた。


「おぎゃあぁぁぁ!」


(……泣いてる!? 俺が!?)


自分の意思とは関係なく、喉の奥から泣き声があふれ出す。まるで、体が本能に支配されているようだった。


(待て待て、落ち着け……これはどういうことだ?)


---


状況を整理しよう。


✅ 体が明らかに赤ん坊になっている。

✅ 知らない言葉が、なぜか理解できる。

✅ 環境が明らかに現代ではない。


(つまり……俺は転生した?)


しかし、そんな馬鹿げたことが本当にあるのか? いや、現にこの状況を説明できる他の理由がない。


もしこれが転生だとすれば、俺はどこに生まれたのか?


30センチ以内に見えるものを探す。視界の端に、**ぼんやりとした肌色の影**が動いているのが分かる。


(父親……か?)


次に、俺を抱きかかえているらしい存在が、近づいてきた。


「マクシミリアン、よく産まれてきたな」


低く、しかし優しい声が響く。父親らしい人物の気配を感じるが、その顔ははっきりと見えない。


「お前は、我がザイドル商会の跡取りとなるのだ」


(ザイドル商会……?)


聞き慣れない言葉だったが、どうやら商人の家に生まれたらしい。


(つまり、俺の家は商人としてある程度の地位を持っている……)


貴族ではないにせよ、ゼロから成り上がるよりはマシだ。

この環境なら、俺の前世の知識を活かせるかもしれない。


「お前が成長したら、この家を任せることになる。そのためにも、しっかりと学ぶのだぞ」


父親――ゲルハルト・ザイドルの声には、期待が込められていた。


---


転生してしまった以上、過去の世界には戻れないだろう。


(ならば、この世界でどう生きるか、考えないとな)


まず、この国はどんな場所なのか?

俺が生まれたザイドル商会とはどれほどの規模なのか?

貴族と商人の関係はどうなっているのか?


そして、なぜ俺はこの言語を理解できるのか?

転生者だからか、それともこの世界にはそういった仕組みがあるのか?


さらに、俺には他に何か特別な能力があるのか?


ワクワクする感覚が湧き上がるが、それを必死で抑える。

大切なのは、冷静に情報を整理し、計画を立てることだ。


(まずは、この世界の商業の基盤を知ることから始めよう)


貴族と商人の関係、ギルドの力、税制、交易の仕組み……


――俺の新しい人生が、ここから始まる。

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