表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成り損ないの魔女  作者: 白河田沼
第一章 鏡の国
8/36

第07話 急襲

鏡の世界(クルシア)か、なんだか可愛いね。」


「そうか?お主にまともな感性があることも以外だがな。」


「そうかもね。」

そう空返事をする

だがそれも仕方ないのかも知れない

今の私にとって重要な事は三つ


まず一つ目


これが無ければ始まらないし終わることも出来ないだろう

生きることも死ぬことも出来はしない。

あるに越したことは無い



そして二つ目

欠けた記憶を取り戻す



どうやら目の前にいる幼女の話によれば

私は昨日33人もの人を殺し、一つの街に存在する魔力を一夜にして奪いつくしたのだそうだ。

こうやって本能で魔法を使い心理防壁を築いて考えを纏めている今でも死へのカウントダウンは進み続けている。せめてその理由と動機だけでも知りたいのだ。



最後の三つ目それは鏡の世界(クルシア)の情報


鏡の世界と言うにはそれは当然喋るウサギや動くトランプの兵士、緑の園でのお茶会などが行われているのだろうがこの幼女クリミナの様子から見てももう少し過酷な世界だとみるべきだろう。




「・い・・お・、・・・・ア」


かの宇宙をも作りだした魔女の造り出した世界だ。やはりそちらの方が自然か

けれどどうしてだろう?


悪い世界という気はしない、微塵も。



「シア!!何をしておる!!!」


「・・・・っ何、クリミナ。」


その声に呼び戻された。

自身の考えに没頭し過ぎたのだろう。彼女の声を聴くことが出来なかったのだ。


「それはいいがそろそろ「渡る」ぞ。」



「・・・・・わかった。」


その承諾の言葉に幼女は手の平を鏡に翳しかけふと下げた。


(みどり)の目がこちらを貫く。

いつの間にか向けられたその瞳に見惚れていれば幼女は呟く



「お主はなんのために死を選ぶ。」





「・・・・え?」


思いがけない問いに間抜けな声が出た

目も大きく開いていたかも知れない


なんの為に死ぬのか


この問いの意味は分かる

その意図も、分かる

クリミナは言っていた。

日本の刑事裁判それらで提出されるような証拠よりも歴とした証拠。

状況証拠ではない確かなそれが在るのだと


おそらくは私を犯人だと見定める何かが

三つ以上の決定的な何か


だからこそ死は決して逃れられない。

だからこそ生は決して手に残らない

死を望むのであればこの行動に矛盾はない


けれど私は生を、記憶を取り戻し、真相を解き明かすことをこそ望んでいる。

矛盾しているのだ

目的も

何もかも

彼女が分からないのはそこだ、そこ以外にはあり得ない

私が分からないのはそれが()()()()()()()()()()()からだ。

けれどどうでもいい。


彼女に真っ直ぐ目を向ける。

私は()()()()()()()()()()こう答えた。



どうして罪人に死の理由を尋ねたのか

どうして私の行動に問いを投げたのか

何故なら



「「胸糞が悪いのは御免だから」」・でしょ。」


「・・・・」

被さった言葉はクリミナの目を開かせるには十分だったようだ

沈黙の中で私はこう答えた

私らしく、()()()()()()()


「生を望むから私は死にに行くんだ。空が危険に満ちていると分かっていても飛ぶ鳥のように」


「・・・・良い答えじゃ。」

空気が変わるのが分かった

何か、、()()が幼女の元に集まってゆく。

鏡の前に彼女が両の手を翳した


「大いなる我らが主よ。我らを見守りし天上の主よ。

その御力の元、我に奇跡を与えたまえ。

御目の元、彼の者らの秘跡を簒奪し尽くせ。我は御身を代行せし者、御身の意思を継ぐ者、

我が意思の元再び我らは一つとなる。」



唾を飲み込み足を進める。

一歩手前で歩を止め、彼女の貌を見つめた。


息を吸い込みカっと目を見開けば、その瞳は金に染まっていた。



開け(閉じよ)、門よ。」


瞬間、世界が割れた。






「少々、大がかりになってしまったがよいじゃろう。」

その声にハッと意識が目覚める。


「魔力も十二分以上じゃ、アレに込めねばならぬのが勿体ない程じゃな。」


髪が風に靡く

体は鳩尾の辺りで脇に入った腕に支えられていた。

そして目に映るのは白い摩天楼、

それを上から眺めている。



「綺麗だ。」

そんな言葉が出た。

それ程幻想的なのだ、塩の巨塔をも思わせるそれは目に入れることも憚れる美しさを誇るそれは、美麗という言葉をも思わせる。

しかしここで思い出す



「あれっ、鏡は?あれ関係あったの?」



「ほぼ無い。あくまで媒介じゃな。さっきの方法が特殊というのもあるが。」


「・・・そっか。」


それでいいのだろうか?一体何の為に何故か疲労し切り、かつ殺されかけたこの体を引きずってここに来たのだろうか。クリミナの容姿で癒されなければ死んでいたかも知れない。

そして鏡に手を入れるくだり。


いった?

いらないよね?

ならわざわざ鏡から鏡の世界(クルシア)に渡るっていう()()、わざわざ聞かなくても良かったんじゃないかな?



「ねぇクリミナ!どう思う!?さっきの()()いったと思う!!?」


「ふざけた事を考えていないで、早う行くぞ。どうやら時間が無いようじじゃしの。」



「・・・・わかった。」

その言葉にこう続ける。




「荷物として専念するね。」







「ここからだと転移魔法を用いた方がよかろう。

では行くぞ罪人。」


クリミナの気配が変わる。

先のものと同じだ


曲がれ(正せ)。」


空間が歪み、曲がる

しかしその先は起こらなかった。


バチリと歪みが正された。


「・・・・・」


幼女の目が見開き、私も言葉を失う。

一体どういうことだ。

呪文が間違っていたとでも



「・・・いいや呪文には問題がない。この感覚、わしの魔力が・・・・」


クリミナの頬を汗が伝い瞳が冷たく細められる



「弾かれた。」



ふと、背後に目を向ける


なんとなく気になる。

それだけ、それだけだったのだ。

あるいはこれこそ私がこれほどの扱いを受ける理由なのかも知れない。

そう私が死を与えられる理由



・・・・端的に言おう。

私は()()を目に収めた直後。


意識を失った



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ