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Adonai's Failure  作者: 白河田沼
第一章 始まりの回想と鏡の国

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第03話 "運命"が扉ごと噛み砕く音

思えば、考えるべきだったのかもしれない


どうして男に乱暴を受けた少女がそのことを言葉に詰まりながらも

ただの高校生に話してくれたのか


どうして、あくまで間接的に対処をして、首謀者君との直接的な対立を避けるという手段を取るほど、慎重な少女が、ただの高校生に

そのことを教えてくれたのか。


「嫌だな〜、私は信用しているよシアちゃんのこと。」


そういう彼女の表情はどこまでも慈悲深い、まるで子供を諭している母親のよう。


「シアちゃんには、いないんじゃなかったの?施設で育ったって聞いたけど。」


・・・・・・確かに、私は親に捨てられた挙句寺院に断られて、偶々受け入れてくれた教会の施設で育った。

親を知らない子供だ。


「だけどだからこそ、知っているんだよね。

自分がもう見ることの出来ない、だから思い出すことも出来ない。

あなたの知らない自分の本当の母親がしていたかも知れない母性に満ちた貌を。」


・・・相変わらず人のデリケートな部分も見抜き、感情を言い当てる。だから苦手だったのに、、


<Rain>で相談を受けたからって、ホイホイ、言われた通りについてきてなんの対策もしなかった、しようとしなかった、自分の、私自身のあまりの迂闊さを呪う。


「私のデリカシーのなさを恨むんじゃなくて、自分の迂闊さを呪うなんて、本当に優しいんだね、シアちゃんって」



「それは貴方もだろう。井伊波さん」


・・いや正確には、だったというべきか。


「名前言っちゃうんだね、いつもは名前も呼んでくれないのに。なんかの練習でもしてるの?それとも、もしかしてちょっと怒ってる?」


ああ、当然だ。怒っているとも、貴方がもっと早く、私に相談してくれなかったことに。


「それは、あの人が死んじゃいけない人だったってこと?」

そう発した彼女の言葉は、笑顔のままだというのに、これまでとは比べ物にならないくらい、毒を含んでいた。

決して、死してなお、殺してなお、あの男を絶対に許さない、という。真っ黒な憎悪を。

彼女はきっとこう思っているのだろう、私自身の力で、この如何ともし難い状況をどうにかしようとしたのに、後から話しただけの貴方が、今悔やんだところで、意味などないし、もうヤってしまったことは手にかけてしまったことは変えられない、だから何も言わないでと。


だけど言わないと、言わなければ

彼女はもっと暗い場所に行ってしまうかもしれない、そう考えて私は口を開く。




「それもある、けど、けれど、、いくら名前を授かる価値もない男でも殺してはならない、それをしてしまえば・・・」


「同類になる、、とでも。最初に恨まれる理由を作ったのはあの人だよ。」


「・・それは論点ずらしだ!!理由を、恨まれる理由を作ったというのは、正しい、だけどもっと、やり方があった筈だ。例えば証拠を取って、、「警察」に通報するとか。」


「以外と考えが甘いね、シアちゃん。それに結構怒ってくれてるね。

まぁそんなことよりも、わからないかな。私がどうしてここまでの行動を取ったか、私に考えが足りなかった?それもあるかもね、でもね、()()()()()()()()()()()私たちの状況は」


「・・・・まさか警察組織もグル?!」


「その通り!!ふふいくら警察に通報しても、襲われたと言ってもハハ!

、何もかも無駄だったってこと!!なにせ自分で撮ったそういう動画でさえははは、証拠として届けても、何もヒヒヒ、取り合ってくれなかったんだもん!!

・・・・・きっとこの男が事前に根回しをしていたんじゃないかな」


怒りを露わにしながらけれど狂ったように笑うという器用なマネをした後、一拍おいて落ち着いたと思えば、私に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それを危なげなく捕まえて手の中を見る。




それは1センチにも満たない小さな立方体、けどこの状況で意味のないモノを渡すほどボケてはいない筈だ。だからじっくりと検める。・・やはりただのブロックなのだろうか全て赤色でただ小さいだけの

、、、いや違う、これは奇妙なブロックなんがじゃない!

・・・・・・これは、、、、


「あの人だったものだよ?、

随分とちっちゃくなっちゃったから、もうどうな顔か、どんな姿だったか、わからないかもしれないけど。」





「初めまして私の名前はグズダメ男でーす」

なんてふざけた調子で言いなが椅子からも卓からも身を乗り出して私の手のひらの上にある()()()()()()()強い力で抑えながら、嘲った表情を()()に向ける。



「それで、、貴方は何がしたいの!!

まさか()()()()()()()()じゃないよね?!、そんな役にたたない事を「役に立たないことなんて言わないで」

そうして初めて私の言葉を明確に遮った井伊波は 必死な表情で頭の中にあるであろう言葉を感情のまま伝える。



「この男は、この子は、人を貶めて悦に浸ることしか生きる意味を見出せなかったのに!!

この姿になってようやく!他人の、、他人の幸せを手助けすることができたんだから!!?」


・・・・もうめちゃくちゃだった。肉片になったのに、消しゴムのかけらにも満たない大きさに()()()()()()というのに、それが人を幸せにするとか。

嘲った表情を()()に向けていたのに私が否定すればミンチ以下にした肉片の価値を必死に、私に対して説くところとか。


・・・明らかに狂っている、狂人と呼ぶになんの躊躇いもない行動と言動。


どうしてこうなってしまったのか、、。


「そう思ってる?」




いつのまにか彼女の顔が、私の目と鼻の先にあった。

()()()()()()()()()()()()()()()()




ん?!

今私は何を考えた?

彼女の瞳は、まぁ綺麗だけど、艶やかな唇?

なんだそれは。私がどうして同性に対して、どうして。そんな感情を抱くはずが、

おかしい、何かが、決定的に。


「ようやく効いてくれた。」

小さくなりすぎた肉片を見るために、左に向いた重心が、さらに傾いてゆく。

その怖さに、恐ろしさに、目を瞑ってしまったあと、目を開けば私の視界には放送室の床が見えている。


体が動かない。口すら動かない、動かせない。


「混乱してるよね、だから教えてあげる。」


そのすぐあとに乗り出していた机から離れ、床に臥した私に、膝を床につけ、這うように近づいて私の顔を覗き込みながら、こう言った。





「私は()()が使えるの」


















⬜︎

「は、今こいつ何言った?って思ったよね。」


思いました。本当に何を言ってらっしゃるんですか。

()()なんてあるわけないじゃな「いや、あるんだって本当に」

は?全然わかりませんもしかしてその戯言と私が口も動かせないのには関係があるのですか。


「いや、あるって言ってんじゃん。そういう()()なんだから」

・・・つまり、今私がこうして頑張って貴方の顔を見るために目を必死に動かしているのも、貴方のいう。()()のせいだと?

私がそれにかかったと?


「私がかけたんだけどね、だから動けない。あと、びっくりしすぎると敬語に戻っちゃうんだねー」

初対面を思い出すわーなんていう軽口については頑張ってスルーして、他のもっと根本的でだけど重要なことを聞く、目で、頑張って訴えかける。

魔法を使えるってどういうこと?!

どうしてそんなことができるように!??

そうしたら彼女は()()()()()()()()()()()()答えた。あっさりと、なんでもないかのように。


「貴方が手に持ってるその子のおかげだよ」





















「は?」







◾️

貴方が手に持ってるその子のおかげだよ」


なんの気なく言った彼女の言葉は、さらなる困惑をもたらすのに十分だった。ん、いやそれよりも、、、


「さっき喋れたよね、は?って少しだけ聞いた話と違うような」


違和感の正体に気づく。元凶の言葉で、いいや今はそれよりも、

口、口だ、口を再び動かしてみる。


「我々は宇宙人だ!!」


いける、しゃべれる。


「・・・まだ、ボケ足りないのかな?もうツッコミ疲れちゃったけど。」

自由にすればいい、ツッコむのは自由なのだし。

まぁそれでも覚えていてほしいこともある。


そう切り出した。


彼女は様子を伺っている、じっとこちらを見ながら。

早く話せということなのだろうか。

ならば望み通りにしよう。そしてその隙を見せたことを、後悔させてやる!!


「ツッコまない自由もあるんだよ!セックスみたいに!!」


・・・・勝った、これは勝った。

なにせ井伊波は一言も言い返してこない、言い返せるほどの反論が思いつかないのだろう。

私の言葉があまりにも優れていたが故に、カウンターの機会さえ奪ってしまうとは、自分の才覚が少し、恐ろしい。

学校で待ち合わせたあと、相談を受けて翻弄されてばかりだった私が、普段からも彼女の言動に翻弄されまくった私が、ようやく勝てた。

これは神に感謝を述べなければ、ずっと続けてきた祈りの成果が出たのだ。

彼女の鼻を明かしてやりたいという純粋な願いに対して、主が、私の願いが叶うように、その御力(みちから)で導いてくださったのだ、、、

まぁ 一回も祈ったことないけど。


「私ではどうやってもツッコミが追いつかないや」

やった、ようやく聞けたよその言葉が、そう考えたあと喜びのまま次の言葉をきく。

ならば聞かせてもらおう、初めて味わう敗北の味は、と少し、いやかなり大仰な物言いだが


「わかってるなら聞かないでほしーな、

あと忘れてるかもしれないけど、今貴方は寝転がってて、しかも

声も出せなかったのにやっと、出せるような状況なんだよ。

何か他に言うことは?」


それが敗北者の言葉か。


「シアちゃん。」



・・・なんでしょうか


「しつこい。」


ひ、、怖い。

ま、真顔で、そんな感情を感じさせない瞳で私を見ないで、、、、


「なら、どうすればいいかわかるよね?」


は?全然わからんが?


「は?」


前略

お父さん、お母さん。

私は今日、死ぬかもしれません。

私が自転車に乗って転んだ時も、勉強で壁にぶつかった時も、

優しく導いてくれましたね。

その事を心より感謝します。


まぁ、親なんていないんですけど。


「・・・・もう本当にすごいねシアちゃんは、、私には真似できないや。」


諦められている、呆れるのを通り越して、諦められている。

どうして、こんなことになってしまったんだ?!

こんなふうになるのは、これで3度目だと言うのに!!


ん、、、、、3度目?


3度目ならいっか。


「そんなのは神様が許しても私が許さないよ。」


そうじとっとした目で笑みを引き攣らせながら言われた

本当に器用な真似をする。

けどそろそろボケるのも終わりにしないと


「・・ほんとボケ倒しで、傍若無人なんだから。

いやというより、あえてやってるのかな、私だけに。

他の人より私のこと下に見てるんじゃないの?」


下に見ているというのはあり得ない、どちらかといえば

貴方のことは、、


「怖い?」


あぁ、怖いよ、その察しの良さも。

私の方が成績がいいはずなのに言ってもいない本心を理解されることも。


「も、ってことは他にもあるんだ。

そのことは今のわたしに、いえそう?」


無理だね、


「絶対?」


絶対。




「それは残念」


・・そうやって、すぐに察して引き際を()()()誤らないところ()、、本当に怖い。


だけどまぁ、今はいいや。

怖いことばっかり考えるのも、あまり健康に良くないしね。


、、、それで本題なんだけど、


「ん、あぁ本題、本題ね。覚えてる覚えてますとも!」

そういう彼女の目は、泳ぎに泳ぎまくっている。

その速さだと、もう洗濯物を前に置けばすぐ乾かせそうな程に。


「そんなに泳いでません。」


泳いでる自覚はあったんだ


「当然です、人並みには自分のこと客観視できるんだから。」


、また、いつもの謙遜?

目を泳がせるほど動揺してる時に普通の人はわざわざ、自分の行動を分析していないと思うのだが。

それとも、そもそも見た目ほど動揺していなくて、さっきのはあくまでも、演技だとか?


「考えすぎだよ〜、シアちゃんてばぁ〜。もう、ホントにわたしのこと信用してないんだから〜。わたしのこと信じれない、悪い頭はここかな〜」


いたい、結構いたい。

こめかみに爪を立ててぐりぐりしないでほしい、

人差し指一本だけど痛い。

なんで頭って言ったのにこめかみなのって、ことがちょっとしか気にならない程痛い。


「お仕置きってやつだよ〜、まぁ結構余裕そうだけど、そうじゃないと態々わたしの言葉の違いについてツッコまないよね。

それに本題を話すって意味では私も賛成かな。そろそろ話しておかないと()()()()()()()()だし」


・・・・時間がない?

そこはかとなく嫌な予感がするが、一体なんの話だ。



「あなたには、()()()()()()、魔女の()を飲ませたの。」



魔女の・・血? なに、、、それ?





◼️


「魔女の血っていうのはね、

飲めば魔法使いになれる不思議な血なんだよ。



「信じられないかな?、無理もないや。けどね、わたしは嘘はつかないよ。 嫌いだからね。あと正確には魔女(ウィッチ)かな、女の子の魔法使いだからね。



「え、そんな事は、割とどうでもいい?、、話を続けろ??

結構酷いこと言うね、自覚ある?

・・・まあ、いいや。

お求め通り、話をもどすね。



「魔女の血っていうのはね、こことは違うけど、この宇宙と同じくらいの異界を作って死んじゃった、「魔女」の血なんだよ。

それをさっきの肉片(あの人)に混ぜておいたんだ。触れた時に「飲む」ように、当然概念的に。

同じくらいていうのは、宇宙全体のエネルギー量と、大きさの話ね。


「だから、普通の人も魔法使いにできるほどの強力な力がある。

けどね、そんな便利な魔女の血だけど当然、デメリットがあるの。



「そのデメリットは精神力が、根性が無ければ、死んでしまうこと。普通の人も魔法使いににはなれるけど、誰でもなれるわけじゃない。


「とんでもないデメリットだって?

まぁデメリットの方は()()を使えば、解決できるよ。


「もっとも、その様子だと、シアちゃんは()()()ではないかも知れない。確実に言い切れる訳ではないけどね



「・・・・驚かないんだ、もっとすぐに治せって泣き喚いたり、

最悪舌でも噛んで、自殺すると思っていたのだけど。だって口は動かせるんだしね。


「まぁ、舌だってかなり根本の部分を噛み切らないと死なないらしいから、人間って案外しぶといよね。



「だからわたしから提案。これまで使ってた()()以外の()()を試す、実験台になってよ。




⬜︎


「断る。」


それが彼女の提案に対して、出した私の結論だった。



「どうして?

わかっているとは思うけど、あなたに提案する時点で、ある程度実用的な段階に進んでいるんだよ。

シアちゃんに根性がないとは、普段の様子や、さっきまでの肝の太さから、とても信じられなかったから、多分魔女の血の方がおかしいんだよ。

だからそれを調整させてくれって言ってるの。

わからないわけないよね、あなたは私よりも頭が良いんだから。」


あぁ、私は貴方よりも、頭が良い、だからわかる。



これは、無理だ。助からない



「本気で、言っているの?」



あぁ本気だ、声は確かに出せるし、意識も考え事が出来るくらいはっきりしているが、()()()()()()()()()()、これでは何をしても無意味だろう。




「なら、まだ、調整でどうにかなる範囲だよ。

ちょっと後遺症は残っちゃうかも知れないけど、それだって他の手段を使えば「それに!」


私は彼女の言葉に被せるように、

()()()彼女にとって残酷な言葉を放つ。



「もう、()()()()()()()()




◼️


「冗談でも笑えないよ、シアちゃん。」


そう言った()()()()()どうみても、悔しさに苛まれている人間の()()だった。


「ほらやっぱり見えてるじゃない。()()()()()なんて言葉、そうじゃないと説明が付かないよね。わたしを騙そうなんて100年早いんだから。」


その声色にはしかし喜色は含まれていなかった。

彼女とて気づいているのだろう、私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女の、井伊波の行動を組み立て、推測して、描写していたことに、


正直いくつか間違っているものと思っていたが、

ここまで当たっていると博士号がもらえるかも知れない。




「はは、ホントに、、笑えない冗談なんだから。

それに博士号は、最低でも5年間大学に在学して独創的な論文も最低3本は出さないと取れないって、聞いてるよ。もうそこまで生きられないかも知れないけど」







?聞いてるよの後が小声でよく聞こえなかったが

それよりも気になることがある。

「取れないって()()()()()」なんだか露骨に人に聞いたような口ぶりだ。

聞いてるよって言っているし。

死にかけで気になることではないかも知れないが、それでも、気になるものはなってしまう。


「一体誰に聞いたの?」




一々目も見えないのに細かいことが気になるのに驚いたか、それとも単純に聞かれるとは思っていなかったのか、

彼女は少しだけ驚いた素振りをしたあと、素直に答えてくれた。



「お兄ちゃんに聞いたんだ。もう随分と昔の話だけどね。」









⬜︎


お兄ちゃん、か、

そんなこと初めてあった時も聞いたことなかったな。


思えば私たちが初めて顔を合わせたのは中学2年生の頃。

今のボケボケ優等生である私と、ツッコミ担当劣等生の井伊波の、偶に話すけど正直挨拶しかしていないし、私としては苦手という。


関係とは、少しだけ違っていた。

具体的には私が成績不良、彼女が成績良好の、

アベコベコンビだったのだ。






・・・いや、それは嘘だな。

嘘というより、言葉が、説明が足りていない。


いいや、足りていないとは言っても()()()()()()()()()()()()()が足りていない。決定的に、根本的に、



順を追って言おう、私たちは()()とても仲が良かった。








◼️


「そんな()()()回想より、まずは私のお兄ちゃんの話をしようよ〜、前回スッゴイ意味深な感で終わったじゃん。きっとみんなもそっちの方が気になってるって〜」





・・・・世の中の大半の人はね、()()()()()()()()()より、かつて親友だった子供たちがどう仲を拗らせたかの方が興味があるんだよ。

あと、メタイ話禁止。



「・・・・・」

どうしたんだろう何故黙るのだ?


「・・・・・・・シアちゃん。

わたし普通に心配になってきたんだけど、視界が潰れて、体もうごかせないのに、その話、が誰に需要があるとか、そんな小さいこと気にしてる場合?

バカじゃない、っていうのは、まぁわたしをあれだけの間、騙したから違うって言えるけど、それにしても危機感ってものが足りないんじゃないかな。

いや、人が倒れているのになんの気なしに私達の過去回想から、自分の兄の話の方が価値があるとしてすり替えようとした、私が言えることでは無いけど。」



・・まぁそれもそうか、メタイ話というツッコミを何の気なしにスルーしたのは置いといて、

わたしに危機感が足りないという彼女の認識は、正しい。

けど、その危機感の無さもある意味私らしいと言える。




「詳しく話して、魔女の血の適正条件が何か知っているよね。」




根性があるかないかでしょ。

覚えてるよ






「なら、早く話してほしいな。、あなたにはもう、、」




確かに私には時間がない、目も見えなくなるどころか今は、、口すら







さぁ言えるうちに早く行ってしまおう、シア。




「つまり私は、()()()()()()()()()()()()。」









◼️

「その言葉を聞いて安心した。」





え、、今ので、私の回想終わり?



「終わりだよ」



え、うそ私のむっちゃ重要そうな回想、さっきのなんとでも解釈できる一言だけで、終わりなの?





「終わり、だって言う必要がないもの。」





、、、、それはつまり、私にはそれ以降の話を聞く必要が無いほど、根性なしのヘタレ女、ってこと?







「うんう、違う。貴方はね、とんだ根性の持ち主だよ。」



「理由は言わないけど」なんていう言葉もあとに聞こえたがそれよりも重要な言葉があった。

「とんだ根性の持ち主」か

そっか、、、

なんか良かった。







「・・・そんなに他人の評価が気になるの?

いつもは、他人の様子なんてなんのそので、いきなり変なことしたり。さっきみたいにボケ倒したりするのに?

それに今だって喋れるギリギリの状態なのに?」




他人の評価、か。

まぁそれも気になるけど、貴方は他人じゃ無いでしょ




「他人じゃ無いならなに、赤の他人?」









友達。




「は?」



・・・・今のやり取りで確信したよ、私たちは友達だ。



「、、今のやり取りの何処に友達だって確信するところがあったの。少なくとも()()()()()()に対する評価は精々が人殺し、悪く言って、サイコキラーってとこじゃ無いの?死ぬほど恨んでるからって、人を細切れにした、ただのやばい女じゃ無いの?」



「確かに、貴方は人を殺した。

それもどうやったかは知らないけど1センチ以下の肉片にして、加えて肉片の価値を否定したら発狂するし。

けど、さっき会話して、

そのデリカシーは無いけど、()()()()()()()()()()()()()()で、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ただの私の()じゃなくって、()()()()()だって信じられるようになった。」




「それは、その楽観って言うのは何。」


気になってしまうのだろう。

無理もない、私だってこんなふうに言われたらつい気になって、聞いてしまうのだろう。


だから、私はこう答える()()()()

ずるい(かしこい)言い方で。








「これ以上は無粋。

貴方が私に教えてくれた言葉だよ。」







⬜︎


「はは、本当に、ずるいや。

狡くて、賢くて、けど、本当にあなたらしい。」


そう言う彼女の顔はきっと満足げだ。



「きっとって、もう自信無くなっちゃったの?

あれだけ人を騙くらかしてくれちゃったくせに、それとも、もう。」



あぁ、時間のようだ。

少し眠くなってきた、口も動かせない、ぶっちゃけ耳も聞こえるギリギリくらいだ、これで詰みか、、





「待って、うっかり死のうとしないで」









・・なんだ?

こっちは、考えるのだってギリギリなのに、もう少し寝かせてほしい、あとで宿題はやっておくから。






「馬鹿、死んだら宿題も何もできたものじゃないでしょ!

今からなんとかするから、気合いで意識保って!!

あと、変な寝言言いながら死のうとすんな!!!」






()()なら受けないぞ、

貴方の力を死体になる女に使わせるわけにはいかない。

どんな力かすら知らないけど。



そう言ったのに私はそのすぐあと不穏な言葉を聞いた。










「なら、新技なら言い訳だ。」












⬜︎

え、もう死んでいいですか?




「ダメです、死んでも生かします。

あと、死んでもいいですか?なんて、こんな状況で聞かないで!殴り倒すよ!!」







うぇ、怖い。

そんな私のリアクションを一切気にすることなく、彼女、井伊波は一方的に言葉を告げる。



「私の魔女の血の()()を貴方にあげる。だからそれを使って祈るの!!」





なにを、どうやって。





「私に力を貸しなさい!!

って、一方的に、そうすれば血は叶えてくれる。

何故ならそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



わかったけど、一体どうやって血を・・っ

いきなり立ち上がって近づいてきて、どうしたのって・・・まさか?!








「そう、この()()血を分ければいいのよ、

切った手首からこぼれ出した()()()()()()()()()!!」






⬜︎

「なにしてんの?!

手首切ったりしたら本当に貴方死んじゃうじゃない!!」



そう言ったのは私だった、まさか本気を出しても小声を出すので精一杯だった、今の私にここまでの力が残っているとは。

こいうのを火事場の馬鹿力というのだろうか?

いや、今そんなことどうでもいい、マジでどうでもいい。

とっとと消えろ!!余計な考え!!!







目は見えない、体も動かせない、耳もギリギリ、鼻はそれなり、彼女の鉄錆の匂い、血の匂いを嗅げる!!まだ!!!

それと、首だけならギリギリ動かせる。口もまだいける、、


はやく止めないと!






そうして、彼女を止めるために動かした口は、悲しいかな。

彼女のこぼした血を受け取るのにちょうど良い場所にしか動かすことが出来ず、

そのまま手首から出る大量の血によって喋る機会を奪われてしまった。




・・・いや、悲しいかなじゃない、最悪だ、、

彼女がどんな魔法を持っているかは知らないが、魔女の血の()()と言っていた。

たとえ治せる力を持っていてもそれを失えば、私に渡せば、

それは明らかに手遅れだ。

もう、彼女の傷を治せない。

そもそも私がちゃんと力を手に入れられるかすらわからないと言うのに、そんなことをすれば井伊波は確実に、、




「死んじゃうかもね、、けど、いいんだ。私に悔いはないよ。」



そうして首しか動かせない私の顔にそっと手が添えられれば消えた


温もりを感じる


彼女の体温を感じた

彼女の鼓動を感じた

彼女の心を感じた


直感で彼女が抱きしめていることが分かった

自身の膝を枕にし軽く抱きとめる事にも、それに困惑しているのをまるで気にせず彼女は話しを続ける。





()()()友達、なんでしょ。」







・・・そんな当たり前だけど、今の私が最も欲しかった言葉を発した後、




まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


音が聞こえた





























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