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Adonai's Failure  作者: 白河田沼
第一章 始まりの回想と鏡の国

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第18話 決意

透明な世界、

そんな世界には私は覚えがあった。

それは「蛇」がいる世界であり、私が死後辿り着く場所そのものである。

絶たれたはずの首を触りながらも私は実感する。



ああそうか、私は死んだのだと


「そうだ、死んだのだ、お前よ。」



「久しぶりだね「蛇」いい加減、私の声で話してくるのも、変な二人称私に使うのも辞めてくれるかな」



「それは、土台無理な話だ、こちらにも個性が必要なのだよ。個人的な意味だけでは無くな」

私に似た声でそう話しかけるのは「蛇」だと私は理解していた。

「空白」が輪郭を持った存在、私よりも少しだけ大きいその長身でけれど「蛇」はこう続ける。



「加えて今回のヤラレっぷりは実に見事だった。こちらから拍手を上げてやりたい所だ。」




「そんな、事はどうでも良いから、ほらあれ早くやって。手のひら翳して意識奪うやつ。

あれすれば代償を一つ払うと共に生き返れるんでしょう。前回のは記憶の実感だけれど、今回は何なの、教えて。」


「今回は感情だよ、お前よ。お前は感情とここに居た記憶を失う。」

「そっか、」なんて声は出なかった。

何せそれは予想通りであり、

ある種予定通りであるからだ。

今から私は感情を失う、蘇生の代償として「蛇」が手のひらを翳すと共に感情を奪われるのだ。

それはまるで殺人のようであり、

それはまるで殺害のようであり、

それはまるで虐殺のようであった。

まるっきり倫理観の伴わないそれに、翳された透明ながら輪郭のある手のひらにけれど私は目を閉じる。

そしてこう言った。




「私の感情、全て貰っていって。」

という言葉と共に視界が色付いていけばけれど私は目を覚ました。

乃瑠夏と鈴の居る中、遺灰城の寝台の上で私は目を覚ました。




◻︎

白い天井、私はそれを見て目覚めた。

目に映るのは乃瑠夏と鈴の二人。そして白い天井、ただそれだけであった。

顔を横にしてみればけれどそこにあったカレンダーには予想通りこう書かれていた。

2998年8月10日、一日経った形である。

私は先程禍根鳥の提示した抗い難い誘惑に抗い、そして暴走しかけ殺された。

常人ならパニックに成っても仕方ない。

何せあれは死そのものであり、この状況は蘇生そのものであるからだ。

だからこそ自身が生きている状況に驚き、事情を知っている人を探して自身がどうして蘇ったか、何かやらかしていないか念のために聴かなければならないところだったのだ。



正直、驚いている。

自分が死ななかった事にではない・・それは他人事の記憶ながら禍根鳥に殺された時、「蛇」の夢と共に経験済みである。

二度目なのだ、慣れはする。慣れんけど。

何故今回は「蛇」が殆ど干渉して来なかったのか疑問はあるもののそれ自体が根本的に少ないのだ。

少しだけ違和感はあるものの

だからこそ、蘇った事に対する驚きは少ない

問題なのはどうやって私が蘇ったのかでは無く、どうやって禍根鳥が暴走しかけた私を殺したかである。



あの時、私は確かに怒りを感じていた。

「蛇」から齎されたその憤怒の力を解き放ちアイツの首を絞め殺してしまおうと、抗おうと確かに決意した。

けれど結果はこう、この様である。



私は負けた、

ただの一撃で首を落とされて死んだのだ。

それに驚きがない私では無いがけれどそれよりも聞くべきことがあった。

どうやって私を殺した禍根鳥の手から流れたのかについて私は聞かなければならなかった。

聞くに打ってつけな人物が二人居た


乃瑠夏と鈴である。

嫉妬の魔女の代理と暴食の魔女の代理である彼らはしかしきっとそこに居るのだと私は知っていた。

鈴が壁に背を預けて

乃瑠夏は目の前の椅子に座っていたのを察ししていた私である。

正直、気まずいながらも段々と理解する。

視界だけではない、確かに()()()()()()()()()()()()()()()

在ったのだ、それを知る方法が、

カレンダーの日付を知るように、禍根鳥から貰った新しい記憶達の中に。


魔女(ウィッチ)の基本能力を使いこなす記憶が




魔女(ウィッチ)の五つの基本能力これらは五種類あった。


読心魔法

それは魔女(ウィッチ)なり損ない(フェイラー)の基本能力である。

心を読むというその魔法は、

魔術の基礎にして魔法の秘奥であるそれには誰もが到達でき、誰もが到達できない。

正しく「魔法」その一端である。


魔力探知

魔力を探知し感覚を広げる術である。

五感を拡大するその術は弱きものであれば魔術の域を出ないが、

強きものであればあるモノに匹敵するようだ。

そう「魔法」の域に。


それこそがこの魔術の心髄にして根幹であるのだ。





情報解析

取り込んだ霊子や魔素の情報を収集し集積する技術である。

霊子と魔素、それには多くの情報がある。

物質の最小単位たる霊子の中にある「情報の元」、それを取り込み、読み取り解析する。

それこそがこの力の心髄の一つである。


これは魔術と魔法の秘奥にして根幹そのものであると言えるだろう。




輪廻転生

ある者を代価とし生き直す力であり

あらゆる力の根源である魔女の血、それが持つ権限の一つである、代償を必要とするこの魔法は最初の魔法、その一つでもある。

故に数ある魔法の中でも最古にして最大の魔法、そのものなのだ。



継承の魔法

これは力を継承させる魔法である。

その際にある力の消失を回避するための血印(ペインター)、あるいは魔女刻印(ペイントアウター)を用いないこの力は伝承のようなものであった。

百年以上の歴史を持つその力は、基本能力の一つにして継承を()()()()()成すが故に魔法の極致そのものである

だからこそ最新の基本能力にして魔法の「極致」そのものと呼ばれているのであった。




・・・などなど、長ったらしくも鬱陶しい、しかして重要そうな言葉がそれぞれ新しい記憶として禍根鳥憂喜によって刻まれていた。

「蛇」に関しないであろうこの力は、魔力探知に当たるとも私は知っていた。

人が居る事をも察するこの力を無意識に起きた瞬間から私は使いこなしていたのだ。

魔女(ウィッチ)でもないのにである。

しかしそれに引っ掛かりを覚えながらも予言の魔女(フェイラー)だからだろうと納得しつつ私は話す。





「・・・・おはよう、乃瑠夏、鈴。さっきぶりだね。さっきは代行会議・・だったけ。その途中で意識失ってかつ連れさられちゃってごめんね。まさか暴走する前に禍根鳥さんに殺されるとは思わなかったよ」



「気にしなくていい、お前が殺されたのはお前の責任では無い。

加えて言うがあれは代行会議でも何でもないただの集まりだ。それに連れ出されたのも色欲の魔女の代理が悪いだけでお前の過失ではない。

そして集団で詰問するような形にしてしまったのは・・悪かったと思っている。」

眠気冷めやらぬ中けれどしっかりと滑舌をよくしながら話せばけれど退屈な程冗長にけれどはっきりと鈴は私に述べた。

代行会議、

魔女の代理で鏡の国(クルシア)の未来をも決める会議なのだ。

重要である事に違いは無い。

国家や世界においてはとっては不可欠な存在である。

ところで鏡の国(クルシア)鏡の世界(クルシア)は別物である。

鏡の国(クルシア)とは八つある都市国家の中でも中枢の都市国家を指す言葉であり、

そして鏡の世界(クルシア)はこの魔女(ウィッチ)が支配する世界全体を指す言葉である。

首都と国家のようなその関係だがしかしここで重要なのはただ一つ。





中枢都市国家である鏡の国(クルシア)の未来を決めれば鏡の世界(クルシア)の未来をも決まるという点である。


これは首都、国家間に似た関係を持つ二つであるが故の事であるのだ。

しかしそれを決めるのは「代行会議」・・では無く「代表会議」という賢人会と国際議連をも巻き込んだ物と成るのだ。

話し合いで国家どころか世界の命運を決する。

その第一段階とは言え「代行会議」では代表会議と似たような議題が多く話し合われる。

私は当時そこに呼ばれたと考えていたのだ。

しかしそれがただの質問コーナーの圧迫面接擬きだったとは・・・驚きである。





そんな事を考えつつ体を起こせば確認するのはただ一つ、自分の首である。


触れてみる。

捻ってみる。

弄ってみる。

そのどれをしても首は取れはしなかった。

何と完全に首はくっついているのだ。

これは驚きである、正直ここまで驚いたのは久しぶりだ。

まさか自分が本当に蘇生していようとは・・どうしてか首が繋がっているから大丈夫と分かっていてもこれには心底驚いていた。


信じられていなかったのだ、私自身。

自身が二度目とは言え蘇っている事に

そして、鈴と乃瑠夏の助けありきとは言えそこから逃れた幸運を私が持っている事に

だからこそ私は言う。





「・・ん、付いてる。首、禍根鳥に断たれたのに。

不思議なもんだね。鈴は知ってる、私が蘇った時の事?

私、禍根鳥に非道い事されてなかったよね。」




「無論だ。俺がお前の気配を追ってここに来た時には血溜まりの中お前がうつ伏せで眠っていた。

首はその時すでに治っていたがお前を血から剥がすのは難儀だったぞ、

血が乾き切ってカピカピだったからな。」



「・・乃瑠夏は‥蘇った時の事知らなそうだしまあいいか。

不思議だし仕組みは分かんないけど不死身なのも予言の魔女ってそういう感じなんだで理解出来るしね、知らんけど。

人間の生ってのは分からないもんだ。

・・・そんな事よりも突然だけど二人に言いたい事がある。」

そう凛とした調子で言えば私は鈴と乃瑠夏に向き直り笑む。

そして瞬時頭を下げた。

あっけに取られた気配を私の下げた頭に向けて来る二人の気配を魔力探知で感じながらけれども私は言う。

はっきりとした大声で、心を込めて





「ありがとう、私を助けてくれて。」

私はそう言った。

風でカーテンが揺れる中

二人の髪が揺れているその中での唐突に謝罪と感謝の言葉を述べたのだ。

「いきなりだな」・・や「何故謝っている。」という驚きと疑問の言葉は聞かなかった。

通常聞くであろうその言葉は、

当然の返答はけれど返ってこなかった。

けれどだからこそ、帰ってきたのはこの返事であった。

鈴は言った、まるで乃瑠夏の想いを代表するように





「気にするな掟破り、一人の魔女(ウィッチ)として当然だ。」



「・・・うん、それでもありがとうって伝えたかったんだ、ありがとう。」

鈴の言葉と共に顔を上げてそう言ってからけれど私は笑った。

これからの痛苦を知らずに

これからの苦難も知らずに

これからの試練も知らずに壁に背を預ける鈴と目の前に座る乃瑠夏に対して・・朗らかに笑った









「ところでどうして、赤紐のあの子は吐かなかったの?私なんてゲロゲロゲロゲロ吐きまくった記憶があるんだけど。」

そんなある種ユーモラスに満ちた言葉に対して鈴はしっかりと私に返答をよこさなかった。

・・「おそらく」という言葉の後に聞いた言葉は三つに分けてこうだった。

まず詳しい理由は分からないと、私のように禍根鳥本人に調整された者、そして実はつらいけど演技で平気な振りをしている者、そして禍根鳥に慣れ自ら調整を行って適応した者、だいたい三つに分かれるのだが、




「でも禍根鳥は自分自身に調整を施したって言っていた。それなら周りがゲロまみれじゃないのも禍根鳥のおかげの筈だけれど「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ね、・・・・もしかして調整してたって事それも良い方に」


「いいや、禍根鳥は調整をした、むしろ悪い方に。」



「・・・鈴、それってつまり。」



「ああ、そのままでは周りがゲロまみれになる筈だ、そして「小細工」も長持ちしていた筈。

けれどそうはならなかった。何故か・・・」

鈴の言葉にしかしすぐに察しがついた私である。

一つは確実で一つは弱いながらも、しっかり察しがついたのだ。


「小細工」

禍根鳥が施した認識阻害魔法は大きく二つの効力がある。

まず一つ、対象のずれ。

話している存在を()()()()の認識の阻害。

そして二つ目。

記憶に対するずれ

それが自身の物と認識できななくなる程の認識の阻害。

それは自身のみならず辺りの認識をもずらす「御業」であった。自身に対する記憶に対してのみ限定されたそれは、しかし効かなかった。



クリミナや皆に、

禍根鳥が弱い訳ではないただそれに、「小細工」に左右されずに()()者こそおかしいかったのだ

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

自然と「小細工」を解いた彼らが


何故か、それはおそらく・・・



「「嫉妬」と「暴食」の影響だ、俺ら二人の「仕掛け」のおかげで奴の魔力に感覚を狂わされる者がいなくなったということだ。」

決定事項を告げるように雄弁と語った鈴の言葉にしかし私は同意する。

そう、それしか答えは無かった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


・・仕方が無かった「計画」の為に、

██████████

そして恣意を蘇らせる為に

今と成ってはきっぱりと断って殺された物の

いつの間にか仕組まれていたそれはしかしこのことも意味する。

即ち・・・・



「裏切りは既に見透かされていると禍根鳥は考えるはずだ、それも奴が「暴食」と「嫉妬」と呼ぶ存在にこれは重大な事だぞ掟破り。」



「・・・・どう言う事でしょうか、もっと分かりやすく説明して」


「ああ、乃瑠夏は、「嫉妬」は「暴食」に並ぶ程の力を持つってことだ。魔女の代理の中でも特に強いって事さ。この俺が禍根鳥の代わりに保証しよう」

そんなある種意外性に満ちていた鈴の言葉に私は頷く。

そうだった、

この私にとっては

少なくともあの言葉を聞いた時から、二人は二人だった。

それが私にとっては嬉しく、そしてとても喜ばしい。

だからこそ、彼らに何んとなしに問いかける。





「貴方達が強いのは分かったよ。だけれど聞きたいんだけれど禍根鳥の目的は何だと思う。私が知っているのは殆ど無いんだ。」




「奴の目的は自身の力と七十二字騎士団を以てして地獄を作るつもりだ。それも奴にとっての()()()()()()をな。」

突拍子もない言葉にしかし目を開く私である。

そんな物は聞いた事が無いのだ。

私が「計画」というものについて聞かされ██████████という「目的」の元彼女を蘇らせるという理由で協力を持ちかけられた時も一度も聞いた事が無いのだ。

けれど一つ「計画」については禍根鳥から聞かされていた

ところで「計画」とは()()()と呼ばれる存在が作り上げたものである。

一つ、それは"人類の平和の為に"遂行されるものであり

二つ、それは魔女(ウィッチ)の悲願そのものであり

三つ、それは「予言」を解釈して作られたものである

「殿下」とも言われるその人物が構築したそれは、正しく揺るがないものであると魔女(ウィッチ)の多くが知っていた。

だからこそ、私が従ったと言ってもいいのだがしかしあそこまでの事態に成るとは知らなかった。


知らなかったのだ。

禍根鳥が遺灰城に侵攻するなんて、

七十二字騎士団と言われる大量の魔女(ウィッチ)なり損ない(フェイラー)の死体軍団を用いて多くの人を殺すだなんて

私は知らされていなかった。

だからこそ、私は問う。




「禍根鳥の力と七十二字騎士団って何、そして四回目の地獄っていうのも教えて」

と当たり前のように人を気にすることなく堂々と私は言った。

だからこそ帰ってきた言葉は一つだった。

事実を述べるように、当然のような言葉でじっとした調子で鈴は言った。

「地獄」について

そして七十二字騎士団について知り得る限りの全てを









「「地獄」とはこれまで起きた首謀者不明の事件だ。

驚異の根源も知れずにけれど脅威の理由も分からないその鏡の国(クルシア)最大規模の事件は称して「地獄」と呼ばれていた。

この地獄は三つあった。

一つ目の地獄

命の地獄

生命は尊厳があり、安易に死を選択すべきではない・・その考えの元起こった死ねない地獄、命の地獄。

死亡者10273人


二つ目の地獄

質の地獄

生命の「質」に注目し、充実した人生を送ることを重視する考えの元起こった裏切りの内戦共に居れない地獄、質の地獄。

死亡者20746人


三つ目の地獄

終末の地獄

延命をするおりも末日を重視する考えの元起こった生きれない緩やかな死の地獄、終末の地獄。

死亡者59469人



「それら「地獄」の目的は死体の回収とそれを操る事による戦力の増強である。

命の地獄では「命の死の魔力」

質の地獄では「質の死の魔力」

終末の地獄では「終末死の魔力」と言った風にな

これらの死体にはそれぞれがそれぞれの「死」の魔力が込められているのだ、禍根鳥憂喜が作り出した「死」の魔力と同様のものがな。





「禍根鳥の立場上、奴を捕まえられなかったがしかしこれはある自体を示していた。


これらが示すのは潜在的な国家あるいは鏡の世界(クルシア)転覆の危機であった。

つまりは禍根鳥が死体を回収する度に、禍根鳥麾下の七十二字騎士団がその数と性質を増やしていくことに加えて国家すら危うい事になって行くと言う事だ。

おそらくは地獄とて奴が起こしたものだろうと俺は考えている。

賢人会が発表していないだけで奴にが「地獄」に一枚噛んだという証拠は多く見つかったからな。

だが、それ以上に重要な事があった。





「つまりは三つの地獄の合計90218人の死亡者、


9万人以上の死者それら全て

ある者がその死体を利用するためのものであった・・・

彼らは死体を利用される為に殺されたのだ。

禍根鳥憂喜の手によって




「七十二字騎士団、これらに所属する十字の瞳を持った魔女(ウィッチ)なり損ない(フェイラー)と言われるこの存在について少しだけ話そう。

まずはこれに所属する者達の種族情報についてだ。


魔女(ウィッチ)

不老不死であり今生きている生き物の中での最優種

魔女の血によって覚醒する彼女らは大きく三つに分けられる


一つ、生まれながらに魔女(ウィッチ)な者

二つ、魔女の血を飲んで魔女(ウィッチ)と成った者

三つ、「魔女」あるいは全知全能にして神とも称される存在、魔女(アドナイ)に力を授けられた者この三つの違いが在ったのだ。

それらの違いについては当然、持った力の理由だ。

まず一つ目は神に見初められた者

二つ目は神の試練に打ち勝った者

そして三つ目は神、魔女(アドナイ)に使命を託された者であると言える。

遺灰城前広場と言われるあの場所で魔女(ウィッチ)を殺していたのは熟練の魔女(ウィッチ)含めた精鋭、その成れの果て、そして・・魔物(モンスター)と呼ばれる存在だった事を



なり損ない(フェイラー)

かの白き竜の姿をした怪物は魔女(ウィッチ)にして全知全能の存在「魔女」が作り出した存在の一つ

鏡の世界(クルシア)が創造された時から存在していた。

正体不明、来歴不明、証明不明の生物である。

魔女(ウィッチ)なり損ない(フェイラー)、この二つの存在が主に七十二字騎士団を構成していた。

無論、「死」の魔力が動かす死体としてな。

七十二の十字を持つその軍団は一つの軍団につき千人以上

三つ・・いいや四つの地獄に依った死体から成った七十二の軍団こそがその集大成だと俺は考えている。














「だからこそ、掟破りお前の力が欲しい。

お前のなり損ない(フェイラー)としての世界をも滅ぼし得る力が必要なんだ。

さすれば俺から死刑を取り消すよう取り図ろう。


「死刑を取り消すよう取り図る・・ね。」

思わずそう独り言ちた私である。

壁に背を預けている鈴の貌を見ながら、カーテンが風に揺れる中でけれど私は独り言ちた。

鈴と乃瑠夏、二人から目を離しけれど考える。


「死刑を取り消す」

それは私の悲願であり、通過するべき展開の一つだ。

鏡の国(クルシア)魔女(ウィッチ)と協力するにはまず死刑を取り消させ自身の命の保証をしなければ行けない。

三島という最高裁判所長官の様子からして死刑が決定しているのだからこれは当然の措置である。

だが、私には一つそれ以外に気になる事があった。


なり損ない(フェイラー)としての力が必要・・」この言葉である。

この不条理かつ不義理にも思える言葉は三つの意味を持つと私は考えていた。

一つ目は私の特性「模倣」の力を必要としている事、

して二つ目は私の中の「蛇」の力を欲している事、

そして三つ目は正体不明と言われているなり損ない(フェイラー)に対抗する手段を得る事であると考えていた。

世界をも滅ぼし得るというこの言葉から察するに当然前者では無く後者だと考えるべきだと私は考えている。



私の模倣の力は「想像」し「創造」する力だがこれには情報の「収集」と「集積」が必要不可欠なのだ。

この「収集」と「集積」の力はおそらくだが第二の「特性」の骨子であると私は考えていた。

しかし、それには限界がある。

無制限であろう「蛇」の力と違ってこの「特性」には制限があるのだ。

私の魔力量という制限が。




今も殆ど魔力は無い。

一日以上全力で暴れ回ったような疲労が残る形だ。

鈴の「拘束」は外れるとしても重要なのは一つ、


()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()




「よく、弁えているな掟破り。だからこそ分かる筈だ、この提案が断れないと」



「呑まないと鏡の国(クルシア)が危機って事だろう。分かっている中枢都市国家が滅びれば彼ら自身危ういと。命すら無いかも知れない、だからこそ私の答えは決まっている。」

そう告げれば私は瞳を開いた。

貌を鈴と乃瑠夏に向ける。

壁に背を向けながらもはきはきと喋っていた鈴と、

目の前で座っている乃瑠夏を見ながらも私は言った。








「無論。貴方達の助けに成ろう。」

そう「死は何も(あの子へのお)生まないぞ(前なりの贖罪だ)」という言葉を思い浮かべながら義務感と責務に満ちた声でそう私は言った。

鏡の国(クルシア)の人々の為に

禍根鳥に対抗する為に

そして、これからの「地獄」を生き残る為に私はそう言った。

それが()()()という存在の「計画」通りとも知らずに

私達の「計画」は壊れない

決して何者にも壊せるでは無いし

決して誰にも阻めるものでも在りはしないからだ。

〜人助けの魔女〜

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