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Adonai's Failure  作者: 白河田沼
第一章 始まりの回想と鏡の国

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第16話 少女は再び目を閉ざした

魔素の操作と言うのは至難のものである。

原子に等しいそれらは紫がかった黒の見た目通り人類に仇なす・・存在ではない。

だが味方をしてもいない、ただそれは「欲望」に従うのだ。


「意思」

魔素や霊子そして未知なる物質達は従いそうもない、それらはしかし従うのだ。

意思、それもより強い意思を持つ欲望(たましい)に、正確で精密(強い現)虚構()に。

それは知れば知る程、願えば願う程、事象として突出していく。


正に


「意思、いいや欲望(たましい)の現実化、ね。だけどここまで空気が違うとは・・禍根鳥さん、この人たちが・・・」



「ああ、そうだ彼ら(わたしたち)こそが魔女の代理だ、口だけでは無くな。」

吸い込まれるような髪をバッサリと切った黒髪黒目、片耳から鈴を垂らした女、鈴が冷ややかにも思える瞳ながらそう告げた。

魔素と魔力が、そこに反映される欲望が「特異」だからこそのこの空気感なのだ。

冷たい、冷たい、まるで畜生でも見定めるような、冷たい空気。

そこに乗る感情はあまりにも人間的であり非人間的だった。



だからこそ問うた。


「私は畜生でしょうか!!この扱いはしょうが無いんでしょうか?!!けどどうしてだろうか?!!!どうか?代行会議で何しましょうか??」



「・・・・なんでラップ調なんじゃよ、お主。」

あっさり下らないなんていう目を向けれらながらも突っ込んだクリミナのおかげで私のラップは終わった。

身振り手振り、エブリも付けたというのに、人生初めてだったというのに!!

あ、これ三回目だ。


ま、いいや。

と感じかけ、思い出した。

19号、赤紐の赤子、バフォメット達のじっととした視線を

魔女の代理達の冷たい、冷たい視線を、「死」の恐怖を




終わった、多分人生も。ああ神様これが不信心な私への罰なようです。

さようなら、現世、こんにちは、天国。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「お主、そういうキャラじゃないじゃろボケるのはやめろ。」




「あ、ごめん、つい。」




「それに天国には行けんじゃろうて。ていうかなんで代行会議とか知って」という言葉を聞き流して、私は考える。


記憶について・・・

どこまで思い出したのか。

・・・魔素の扱い方と従わせ方「代行会議」は()()()()()()()()()()()から引き出されたものであった。



特に「代行会議」とは・・魔女の代理達が都市最高権力者として、そして世界最高戦力として鏡の世界(クルシア)の今後を決める為の、都市国家(領土)と世界の今後を決める為の肝要にして重要な何かを、何を徴用し重宝するかという理由(何故)を決める為の会議だった。






けれど、鈴のことは・・・思い出せなかった。


プネウマも、

その名前に実感が無いから、言葉では(表では)プネウマと呼びながら、心の中では(裏では)バフォメットやバフォメット(プネウマ)と言ってしまう。

プネウマとは言っても回数自体は二回にも満たない、なんなら言葉(おもて)心の中(うら)でもバフォメット(プネウマ)呼びもだいたい三回以下であるのだ。



井伊波乃瑠夏など「井伊波さん」と声に出して呼んだり少年や井伊波乃瑠夏(少年)と呼んだり、まるで陰キャみたいであった。



申し訳ない、皆に。




「陰キャみたいで申し訳ない!!って顔などせずに顔を上げろ・・・・」

その慈悲深い声に顔を上げる

そこにいたのは「色欲の魔女の代理」禍根鳥憂喜、白髪を二つ結びにした左右非対称(アシンメトリ―)に黒布の目隠しをした少女であった。

野太い声の彼女は再び慈悲深くこう口にする。



「・・・・・目線を上げろ、少女。貴様の願望が目の前にしっかりある筈だ。」






ああ、どうしてこうなった、

目を向ける

ただ目を向ける、私の所望する光景が、願い望む光景がある筈だった。けれどそこに在ったのは。


「「傲慢の魔女の代理」

明星(あおい)である、貴様、世の嫁となれ」


「「憤怒の魔女の代理」

弩怒蛇明楽(あきら)だぜ、おい畜生クソがよ!!」


「「嫉妬の魔女の代理」

井伊波乃瑠夏です・・だって、心の中でなんも言ってないがな。」


「「強欲の魔女の代理」

富田神女(しんめ)ですわ。よろしくお願いしますわ、なり損ない(フェイラー)殿。」


「「暴食の魔女の代理」

鈴だ。何を話していた、お前。とっとと白状しろ(言え)。口だけでは無くな。」


「「色欲の魔女の代理」

禍根鳥憂喜だ、お前のことは()()()()()()()ずっと知っていたぞ。少女。」


「そして最後、「怠惰の魔女の代理」

怠編殖埜呂懸だそうだ、貴様とは一度会ったことがあったな。なり損ない(フェイラー)。ところで貴様誰」


中途に挟まれたまともな人達とバフォメット(プネウマ)による井伊波乃瑠夏擁護の特異さを尚上回るとんちきな空気と死んだような「個性達の戦争」、そして謎の求婚、と罵詈雑言に加わる存在しない記憶であったのだ、少なくとも私には理解出来なかった、その上・・・・



「ロックバンドみたいな名前バッカじゃな。バカバカしい。」

不思議な名前と地獄のような空気だった私が触れたのは。

クリミナがそう告げたように

ああ、どうしてこうなった、のだろうか。



そうして私は目を閉ざした、

体を針のように細くまっすぐに木のように自然そのものと化して

これから更に悲惨な目にあうと知らずに。




「まぁ、落ち着くといい少女。ほら飴だ」



「・・・・うん、ありがと、ん?」

針葉樹林と化していた私に、さながら御神木と化していた私に、捧げものがあった。

両の手を皿にして受け取り、目を・・・・開いた。

飴である、飴しかも・・・




「なんで七色に光ってるんですか」



「「契約破棄」で造り出した死の魔力だ、食えば・・・」



「食べれば・・・・・」





「食えば死ぬ。」



「・・・・・・」

うん、知ってた、なんでいきなり殺そうとしてくるかわかんないけど私は知ってた。

いいや分かるのかも知れない。

何故なら今開いている会議は私の死を決定する為の会議だ。

その前に、お前が傷つく前に、きっとこの「飴」を呑み込んで自害でもしろと

朧気ながら契約を「破棄」したであろう者達の末路は知っている。


・・・・・けれど本当に、本当に



「死ねるの、ここで。死ぬことが出来るの、私?」




「・・・・・・」

沈黙してしまった禍根鳥の顔から目を下げ、顔を手の平の中の飴玉に私は向ける。

そうだ死ぬことが出来るのだろうか、この私がこの諦めの悪い私が

早々に「死」なんて選べるのだろうか、強欲なこの私が

生き汚い、自分という女が


シアという人間(このわたし)


「問題ない、貴様は選べる。」



「・・・え。」

白髪二つ結び左右非対称(アシンメトリ―)の黒布目隠しの少女、その野太い声が鼓膜を震わせる。

力強く、冷淡にけれど慈悲深く、

目隠しの黒さと左右の非対称性が目から脳裏に焼き付く

「迷うこともあるだろう、恐れることもあるだろう、中途で躊躇なく「死」を選ぶこともあるだろう。

しかし、貴様は、少女は、食える(選べる)。」



「なんでそう言えるの。」

この時の私は理解できなかった。

記憶を思い出していないからではない、

自信が無いから、でもない。

どちらも欠如している今でもそのどちらも理由にはならないのだ。



なにせ、



「貴方を信じれない、いいや()()()()()()。」

・・・のだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()、それだとまた・・・



「だって私は「遠く」に行く人を見たくないから・・だからどうか、どうか。言葉を選んで「何故なら、貴様は」




「・・・・・・・・」






「何故なら貴様は、「死」と共にあった予言の魔女(フェイラー)だから、な。」

そう私は言われた、

多くの者が見る中、魔女の代理達の畜生でも見定めるような冷たい空気の中、

訳の分からない言葉に困惑する中で私はまた、目を閉ざした。




七色に光る「死」の(魔力)を差し出されながら




「死」を感じながら

両手の皿に「在る」、虹色に光るブロックノイズ(魔力の塊)を見下ろしながら

その「悲惨」な状況に

私は再び・・・









目を閉ざした。











契約の破棄

その代償は「死」である。

それは鏡の世界(クルシア)誰もが知るものであり常識である。

魔術と魔法の世界において、魔女(ウィッチ)蔓延り魔法使い(メイガス)跋扈するこの世界においてこれらを交わすこと自体がある種の習慣であり慣習なのだ。


その段階は六種類に分けられる。


命令解消:魔素と魔力の生成と吸収量の増加

命令撤回:魔素と魔力の生成と吸収量の更なる増加と魔法の威力の倍加

命令破棄:魔素と魔力の生成と吸収量の飛躍的な増加と魔法の威力と精度の倍加


契約解消:上記の効果の増加と「死」の魔力の生成可能性の算出

契約撤回:更なる能力、魔力の向上と魔術と魔法の精度と威力の制限解除「死」の魔力の生成準備

契約破棄:能力の向上と更なる倍加と進化、そして「死」の魔力の生成、である


六つの段階から成るそれらにはある違いがあるのだ。

それは当然「契約」のメリットの増加とデメリットの減少である

それぞれ名目の違いはあるものの「契約」である。

これらの目的はただ一つ魔素や魔力の増大と倍加である。

契約破棄の代償は「死」である

このリスクこそが圧倒的な利益と利潤、圧倒的な術者本人の強化に繋がるのだ。


()()()()()()()()()()()もおそらくはこれなのかも知れない。


「あの時」に見たような物理的な断頭、死ではなく、精神的な死、記憶の非所有化である。

他人事のように思うことで確かにその時の、その時いた私自身は「死んだのだ」


自身の記憶を自身の記憶と思えないが故に

自身を失うが故に


故にこの現状は何かの「契約」の原因であると言えるのだ。

「死」からの復活だけでは記憶の非所有化にまでは至らないと考えての仮説であったのだが・・・





「・・・・・・」

沈黙、それの後赤子の鳴き声と共に目を開けばそこには七色の光を放つブラックノイズ、飴と見紛う程丸いそれがあった。そして少女は、禍根鳥は私に示した。



「死ね、「契約」と「死」を得るために、我々と世界の為に。」



「人類の平和の為に・・・・・





予言の魔女(フェイラー)。」

そう当たり前のことを言うように慈悲深く、「死」への誘惑と堕落への道筋を私に示して
















予言の魔女という概念について、我々は思い知らされた。

我々があまりにそれに無知であることを

我々があまりにそれに白痴であることを



我々は思い知らされたのだ、



魔女(わたしたち)が始めから失敗していたことを










「死ね、「契約」と「死」を得るために、我々と世界の為に、人類の平和の為に、予言の魔女(フェイラー)。」




「・・・・・・・」

その物騒な言葉を向けた禍根鳥の掌をシアは見る

七色のブロックノイズを

飴と見紛うその魔力は「契約破棄」によって造り出された「死」の魔力である。

故に、これは「死」そのもの。

これを呑み込めば彼女は死ぬのだ。

ヒトとしてもニンゲンとしても他ならないなり損ない(フェイラー)としても、


・・・最も彼女はどの分野にも含まれていない、彼女は正真正銘の・・・



「人殺し、選べ、「許されざる生」か「許されし死」か。」



「・・・・・・・」

慈悲深い禍根鳥の言葉にしかしシアは見る

新たに用意された選択肢の元少女は見る、いや見た。

己の両の手を、

手の平を、

吹く風を見た。


風が集まり虚空に変わる。

虚空が魔素に変われば、手の平に亀裂が奔る

光が手の平に落ちる。

瞳が赤く染まれば、光が視界を覆い尽くした






・・少女を(あか)が包み、大地と空を繋げた

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