プロローグ
登場人物
a: 殴りつけた手を擦っている男
b: 路地に倒れている女
A: 緑色のキャップを被った少年
B: 珍しいと言えるほど白い肌の少年
c: 灰色の髪の少年
ネブロイの街は枯れきっていた。無造作に張り巡らされた道を見下ろす建物は、強い日差しにさらされている。煙と暴力が染み込んだ脇道に、霞んだ影が1つ張り付いている。汚れた緑色のキャップをかぶった少年が金網の向こうから男たちをじっと見つめていた。路面には太陽の光が届かず、少年の体温を奪っている。
男は手入れに時間をかけていた。彼はこの街の住人たちよりも治安が悪化していることをよく知っていた。それが男を焦らせている。彼は女に優しく言葉をかけながら、きつく締め上げた手を緩め、その甲をなでた。
「安心しろ、今日も大丈夫だ。君はいい子だから、普段通りにやればいいんだ」と男は言った。
女はひどく咳き込んでいる。上半身を投げ出すように地面に倒れ込んで、目を伏せている。
「今日は寒いな」と男は言った。「君たちに稼ぎ方を教えてやったのは俺だ。そこで眠っちまったやつじゃない。俺が君たちを守っているんだ。ひどい客からは、その分の金を取っているだろ?」
緑色のキャップは右腰にベレッタ92を下げ、静かに身震いした。煙が見えなくなるほどの時間が経ち、緑色のキャップの他に少年たちが3人集まった。
「いつも通りだ」手首に火傷痕が残る少年が言った。「お前は初めてだったか」
白い肌の少年が緑色のキャップの背中を2度たたいた。
「そうだね、参加したことはなかったはずだよ」
「じゃあ、お前は緊張している」
「いや。楽しみだったから」緑色のキャップは男に視線を向けたまま、右手でベレッタ92をなぞった。「先走らないように気をつけないといけないくらい
「なかなか言えるようになったね」
「そうかも」
「弾の数は?」
「5。5発以上必要なとき,お前に6回目はないってベティが」
「あちゃー、またあの娘はケチってるんだ」
「いいや、最初はそれでいい。そもそも俺は1回も撃たなくていいと思っている。無駄はマヌケだ.最初からマヌケになる必要はない」
「うん,そうかもね」
白い肌の少年は、前に立つ灰色の髪の少年を見た。
灰色の少年は深く目を閉じている。どこから彼は来たのだろうかと思った。この街の治安を悪化させている自分たちを率いている、灰色の少年についてあまり多くのことを知らない。馬に乗ることができて、暴力が得意で、そして彼は沈黙を大事にしている。おそらくこれから先も、それ以上のことを知ることは難しいだろう。
「一番いい」突然灰色の少年が言った。「今あの人は一番安心している」
少年たちは男に丁寧に近づいた。
男は少年たちに気づいたのは、倒れ伏せた後のことだった。
煙草が地面に落ちた。この街では銃弾と同じくらい,煙草は貴重だ.火傷の少年が拾い上げ、大切に肺に吸い込んだ。
男は少年たちの暴力に抵抗することができなかった。銃の柄で顔の骨を折られ、堅い靴の先で何度も腹部を蹴り上げられた。そしてしばらくして、男は悲鳴を上げることもできなくなった。
緑色のキャップは、外套の紐を緩め、腰のベレッタ92を手にとった。
女は「助けてくれたんだ」と、白い少年に向かって言った。
女は白い少年を見つめた。
「ほんとうに」白い少年が尋ねた。「ほんとうに,申し訳ないんだけどね。あなたを助けたような形になってるけど、そうじゃないんだ」
「いいだろ。おしゃべりは好きじゃないんだ」と、火傷の少年は言った。
「ああ、そうだね」
女は容量を得ない顔をして、白い少年と火傷の少年を交互に見る。緑色のキャップをかぶった人物は、彼女の後ろに立っていた。
銃声が路地に響いた。今日で2度目の銃声だった。
「ああ、やっぱりもったいねえ」