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第15話 ある程度の予測

「それで、お前は結局先輩から何も聞かずに帰ったのか?」

「ああ、そういうことになるな」

「気にならないのかよ?」

「いや、気になってはいるが、先輩が話してくれるまで待つべきであるだろう」

「お前は相変わらずなんだな……」


 学校にて、俺は坂崎に夜空先輩とのデートのことを話した。

 途中までは普通に聞いてくれていた坂崎は、デートの最後に起こったことにかなり驚いているようだ。

 それは当然である。俺だって、あの出来事には驚いたのだから。


「まあでも、久し振りと言われたということはつまり、お前と黒宮先輩のお父さんは面識があるということだよな?」

「そういうことになるだろうな。初対面の相手に、久し振りなんて言う挨拶はしないだろう」

「しかしお前は覚えていない……記憶力が悪い方ではなかったよな?」

「人並みにはあると思っている」

「それなら答えは一つだな。お前はまだ物心がつく前に黒宮先輩のお父さんに会っていたということになるだろう」


 坂崎の言っているようなことは、俺も考えていた。

 もしも俺が小さな頃に夜空先輩のお父さんと会っていたとしたら、その挨拶でもおかしくはない。その後に実は小さな頃に会った頃があると続ければ、話の流れとしては納得できる。


「しかし、黒宮先輩のお父さんは夜空先輩に聞いた訳だろう?」

「ああ、そうだな」

「つまりそれは、夜空先輩はお前とお父さんが会っていたのを知っていたんじゃないか? でも話していなかった。その理由は……」


 坂崎は、そこで言葉を詰まらせた。

 状況的に、俺もそこまではなんとなく予測することができた。だが、そこから先には進まないのだ。色々と可能性は考えられるが、そんなにしっくりとこなかったのである。


「なんだか状況がよくわからないな。そもそも、黒宮先輩は一体いつお前とお父さんに面識があるってわかったんだろうか? 付き合う前と後では、色々と変わってこないか?」

「そんなに何か変わるだろうか?」

「そりゃあ、変わるだろう。もしも知っていたなら……」

「坂崎、どうしたんだ?」

「いや、なんでもないさ」


 坂崎が急に言葉を止めたため、俺は困惑することになった。

 だがその原因は、すぐにわかった。坂崎に鋭い視線を向けている宇原さんが目に入ってきたからだ。


「明莉、ど、どうしたんだよ? そんな顔をして……可愛い顔が台無しだぜ?」

「それは……雷人が色々と言うからでしょう?」

「いや、それはその……悪かった」

「うん。よろしい」


 宇原は俺達の近くの席に腰掛けて、笑顔を浮かべた。

 状況はよくわからないが、彼女が来たというならそろそろ潮時であるだろうか。そう思って、俺はゆっくりと立ち上がる。


「坂崎、そろそろ俺は行かせてもらう」

「黒宮先輩の所にか?」

「ああ、そうだ。生徒会の手伝いをしに行く」

「律儀な奴だな……」

「俺は夜空先輩の彼氏だからな」


 基本的に、俺は放課後は生徒会の仕事を手伝うと決めている。それが彼氏としての俺の役目だからだ。


「別に彼氏だからといって、生徒会を手伝う必要があるという訳でもないだろう」

「それが先輩との約束だ」

「約束ね。でも彼氏になったから生徒会を手伝えってというのはちょっとどうなんだと思うけどな……」

「……まあ別に黒宮先輩は総一君に手伝って欲しい訳ではなかったと思うけどね」

「え?」


 坂崎の言葉に返答したのは、宇原さんだった。

 彼女のその発言は、俺にとっても気になることである。夜空先輩は、確かに俺に生徒会を手伝って欲しいと言っていた。それは間違いないのだから。


「それはどういうことだよ?」

「どういうことかは秘密。それは黒宮先輩に悪いからね」

「悪いって?」

「まあ、とにかく総一君は早く黒宮先輩の所に行ってあげた方がいいかな。あんまりデートの時のことは考えずに、先輩に接してあげてね。多分、話してくれる時が来ると思うから信じて待ってあげて」

「ああ、わかった」


 宇原さんの言葉に、俺はとりあえず頷いた。

 彼女は、夜空先輩の考えを見抜いているようだ。面識はないはずなのだが、どうしてそんなにわかるのだろうか。

 ただ前々から宇原さんはそういうことに関して鋭かったような気もする。まあ何はともあれ、俺は夜空先輩を信じて待てばいいということなのだろう。

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