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第10話 普段行かない店は

 水族館に行った後、俺は夜空先輩とともにショッピングモールに来ていた。

 水族館からそれ程遠くない場所にあるここで、昼食ということになったのだ。


「何か食べたいものはあるかな?」

「これだけ色々とあると迷ってしまいますね……」

「ああ、そうだね。だから私も君に聞いたんだ。つい目移りしてしまう」


 ショッピングモールの中には、色々なお店が入っている。ファミリーレストランや回転寿司、うどん屋さんまで様々だ。

 やはりファミレスがいいだろうか。大抵のものは食べられるし、一番無難であるような気がする。


「総一は好きな食べ物なんかはあるのかな?」

「好きな食べ物……そう言われると少し困りますね。なんというか、色々とありますから」

「なるほど、それなら苦手なものを聞いた方がいいかな?」

「基本的に嫌いなものはありません」

「そうか。つまりそこから絞ることはできないということだね」


 夜空先輩の言葉に、俺は少し面食らってしまった。自分の失敗がわかったからである。

 こういう時には、嘘でも好きなものや嫌いなものを答えておくべきだっただろう。なんというか気が利いていない。もっとその辺りについて考えておくべきだった。


「それなら普段はどういう店に行くのかな?」

「普段ですか……? えっと……」


 あまり外食はしないという言葉を、俺は飲み込んだ。

 ここは嘘でも何かしらの店を言うべきだろう。夜空先輩は、きっとそこに行こうと言うはずだ。


「やっぱりファミレスなんかが多いですね」

「ファミレスか。なるほど、それならそこでいいかな? 定番今日は他の所に行こうか。せっかくだから、新しい所を開拓していこう」

「……そうですね」


 俺の予想は、大きく外れていた。

 だが確かにこのパターンも理解できる。それに特に問題があるという訳でもない。俺もファミレスにこだわっていた訳ではないからだ。


「とはいえ、ファストフード店なんかも君には馴染みがあるのかな?」

「え? ああ、それはそうですね。友達とよく行っています」

「ふむ……」

「あの……逆に夜空先輩は普段どのような所に?」

「生憎、外食はあまりしない主義でね」

「そ、そうですか……」


 逆に質問をしてみたが、夜空先輩からは虚しい回答が返ってくるだけだった。

 ただそれは俺が先程したことでもある。だから残念がっている場合ではない。行き先を考えるべきだ。


「……あ、すまない。違うんだ。私も時々は外食する。父に連れて行ったりしてもらっているからね」

「そういう時にはどういう場所に?」

「お寿司屋さんとか」

「お寿司屋さん……」


 多分、夜空先輩が言っているお寿司屋さんは、ここにある回転寿司のような所ではないだろう。もっと高級な回らない寿司のはずだ。

 それを聞いてしまって、俺の中でのハードルはかなり上がってしまった。そんな夜空先輩を連れて行けるような場所は、このショッピングモールにあるのだろうか。

 なるべく高級な店の方がいいかもしれない。しかし大丈夫だろうか、俺の財布は。


「総一、どうかしたのかな?」

「え? いえ、すみません。ああ、そうだ。海鮮とかにしますか?」

「海鮮……ああ、いや、その、気にしないでくれ」

「気にしないでくれ……」


 夜空先輩の善意から出た言葉に、俺は少し落ち込んでしまった。

 自分の考えを悟られたことが、とても恥ずかしい。これは彼氏としては、なんというか情けない状況だ。


「そうだな。回転寿司というものにしてみよう。実は前々から少し興味があったんだ。お寿司が回るんだろう? 実際に見てみたい」

「そ、そうですか……」


 明らかに気を遣われていることがわかって、俺はさらに落ち込みそうになった。

 しかし、俺は思考を切り替える。いつまでも落ち込んでいたら、それこそ先輩にさらに気を遣わせてしまうだろう。ここは元気を出して、頑張るしかない。


「わかりました。それなら回転寿司に行きましょう」

「ああ、そうしようじゃないか」


 俺の言葉に、夜空先輩は笑顔で答えてくれた。

 なんとなくまだ気を遣われている感じはするが、それはもう気にしない。俺はこれからなんとか、先輩を楽しませる必要がある。だから、切り替えて回転寿司に行くのだ。

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