トヤさん日記 S
トヤさんは女性である。
トヤさんは背が小さい。
トヤさんは関西弁である。
トヤさんは変わった人である。
トヤさんはチョコレートとプリンをこよなく愛する人である。
プリンアラモードとザッハトルテならどっちも欲しい欲張りさんである。
ある日のトヤさんのことである。
トヤさんは闘っていた。
相手は木に止まっているカラスである。
「てや、とう、バシバシ、ドカドカ」
口で効果音をつけながら、拳を繰り出し、けりを放っている。
カラスは、かあかあ鳴きながら逃げだしていった。
「ちゃらら、らったん、たんたんたー」
どうやらレベルが上がったようだ。
「トヤさん、何してるの?」
「大ガラスを倒した。レベルが上がった。今レベル三」
倒してないけどね。
しゃれこうべも持ってないしね。
「・・・なんか、トヤさんのレベル低いね」
「いや、この前までは戦士やっとんたんやけど、近所のおばちゃんに木の枝振り回したらあかんって怒られてん。だから、今は転職して武道家やねん」
「そうなんだ」
「これからピラミッドいって、黄金の爪探しまわって、結局見つからんで、そのまま屍になんねん」
「そう、がんばってね」
立ち去ろうとすると、服の袖をひっぱられた。
「悪の魔王やって、悪の魔王」
トヤさんのことだから、どうせいいっていうまで離さないのだろう。
しぶしぶ了解すると、トヤさんは容赦なく一撃を放った。
「やーらーれーたー」
わざとらしく倒れると、トヤさんは満足したようだ。
「世界は平和になった」
・・・
トヤさん、武道家似合ってるよ。
特にかしこさが低い所が。