トヤさん、福岡に行く
トヤさんは福岡に来ました。
「暑いな~」
「暑いねー」
トヤさんもさすがにこの暑さにへばっているようだ。
まるで溶けかけた雪だるまのようにドロドロと歩いている。
「そこでや。うち思いついてんけどな」
トヤさんは目を輝かせて、こちらに指を指してくる。
まあ、きっとロクでもないのだろうけど、一応聞いてみる。
「宇宙服の生地で涼しくなるっちゅうのあったやろ。それを裏地にして夏用のコートを作ったらどないやろ」
それは地球に居ても宇宙服を着るっていうことなのかな?
もし遠い未来、地球が人の住める環境でなくなった時、それは普通のものになっているのかもしれない。
「けど・・・」
「ん?何や?」
「夏にそんな暑苦しいもの着てたら、変人だと思われるよ。あるとしたらスーツの裏地を涼しくなる素材に変えるとか。あっ、それはもうあるか」
「いや、スーツはあかんねん」
「なんで?」
「うちがスーツ似合うと思うか?」
うん、似合わないね。
「でも、やっぱり変だよ。夏にコートは」
「そやな。確かに変に見えるかもしれへん。天才と変人は紙一重やからな。そういう風に見られるのもしゃーなしやな」
・・・
そして、トヤさんは間違いなく変人の部類なんだろうな、と。