トヤさん、福島に行く
トヤさんは福島に来ました。
「何や、大変なことになったな」
「そうだね」
気楽な当てのない旅だったのに、それが地震があって、津波もあって・・・
目の前の悲惨な状況に、トヤさんと二人立ち尽くすしかなかった。
「でもな、大変なんはうちらだけやない。もっと大変な人はようけおる。だからな、うちらに出来ることせなあかんのちゃうか?どうせ、何も他の予定無いしな」
二次災害の危険がある。
軽率な行動は控えた方がいい。
それとも落ち込んでいる人に笑いを届けるとでもいうのだろうか?
「自衛隊の人とか来ているみたいだし、そう言うのは他の人に任せた方がよくない?それよりも家に帰る方法をちゃんと確保しておいた方がいいと・・・」
「あほー!!」
トヤさんの頭を狙ったチョップはトヤさんの背が低いせいで届かず、あごに当たる。
地味に痛い。
「こうやって両手を空に向けてみぃ」
何をするのだろう?
大人しく従った。
「その両手には日本中からの被災者への思いが乗っかっとう」
重いよ。
重すぎるよ。
「そして、うちの両手には世界中から届いた愛と希望が乗っかっとう。そんで、これを・・・」
トヤさんは頭の上で合掌すると、手を口元へ持っていき、もぐもぐと何かを食べ始めた。
「ふぉぐふぁがふぉが」
トヤさんは何かを言っている。
よく分からないが、真似をしてみた。
「これで勇気百倍。アンパンマン並みには強くなっとうで!とりあえず何か手伝えること無いか聞いて回ろか?」
出来るとしても援助物資を配る手伝いぐらいだろうか。
トヤさんは今日も元気よく駆けて行った。
・・・
トヤさんは。強いな。とりあえず顔が濡れて、力が出ないなんてことが無いようにしないと。