トヤさん、長崎に行く
トヤさんは長崎に来ました。
「なぁ、何で人は死ぬか分かるか?」
唐突になんて重い話題を。
「さあ?何でと聞かれても分からないよ」
「そうやろ。うちも分からん。けど、死ぬの嫌やから不老不死になろうと思うねん」
じゃあ、とりあえずおでこ出して。
赤ペンで『无』の字書いたげるから。
「それでやな。ここに来た訳や」
「不老不死になるために長崎に?」
「そうや。なんでもここ長崎には日本の医療技術を越えるバテレンとか言うのが出入りしてるっちゅう話や」
「えっと、トヤさんはバテレンってどこの国だと思ってるの?」
「さあ、うちも最近知ったからな。よく分からんけど、多分ムーとかアトランティスの親戚やろと踏んどる。なんたって今の日本を凌ぐ医療技術なわけやからな」
「・・・トヤさんって、いつの時代の人間?」
「ん?何や、いきなり。時代ってカンブリア紀とかジュラ紀とかか?」
原初の海を泳ぐトヤさん。
恐竜と戯れるトヤさん。
「いや、江戸時代とか明治時代とかもっと最近の・・・」
「何や、それ。知らんわ。うちは今生きとる。今の時代の人間や。今の時代から何処に行けるっちゅうねん?未来でも過去でもない今を生きとんやろ?」
・・・
まあ、確かにそうではあるけどね。