トヤさん日記 R
トヤさんは女性である。
トヤさんは背が小さい。
トヤさんは関西弁である。
トヤさんは変わった人である。
トヤさんはチョコレートとプリンをこよなく愛する人である。
チョコレートパフェにプリンが乗っていたら最強だと、トヤさんは語っていた。
ある日のトヤさんのことである。
トヤさんは川の前でかがんでいた。
水面を見つめ、じっとしている。
「どうしたの?魚でもいる?」
「ちゃうねん。川の水見とってん」
「川の水?」
「知っとるか?川の源流の水はちょろちょろとしか流れてないねん」
「うん。知ってるよ」
「うちずっと疑問やってん。何でちょろちょろがこんなに増えんねんて。でも、分かってん。何でこんな水が増えるんか」
トヤさんは眼鏡をかけてもいないのに、眼鏡を直すしぐさをする。
「これは、温暖化のせいや」
ビシッと指差すトヤさん。
「温暖化?」
「せや、水はな、温度が高いと膨張するねん。昨日テレビで言うとった。山は涼しいやろ。だから、ここまで降りてきたら暖かくて膨張しとんねん」
確かに温度が高いと水は膨張するが、川の水かさが増える理由ではない。
「ここよりもっと下流に言ったら、もっと膨張して大変なことになる。日本沈没する言うとった。テレビで」
遠い目のトヤさん。
「せやからな、うちもなんかせなあかんと思うてん。だから、これで地球救うねん」
トヤさんはおもむろにバケツを取り出した。
そして、川の水を汲むと草むらに水をぶちまけた。
満足げなトヤさん。
「世界は救われた」
・・・
いや、トヤさん、救われてないから。
まだ地球、ピンチだから。