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トヤさん、宮城に行く

トヤさんは宮城に来ました。


「何か、もう旅行するんも飽きてきたな」

トヤさん、そう言う事は宮城に来る前に言うものだと思うよ。

来てからそんなこと言われても困るって。

けど、いざ名所巡りしだしたら、観光客たちの中で一番楽しそうにしているのはトヤさんなんだろうけど。

「やっぱな。この季節はどっこも出かけへんで、家でゆっくりおこたにミカンやと思うねん」

「ああ、それも良いかもね」

確かにトヤさんのおでこに『自堕落』と書いたらきっとお似合いだろう。

カバンの中に油性マジックがあったろうか。

「そう思うやろ。そこでや。じゃんじゃじゃーん!」

トヤさんが自前の効果音と共に取り出したのは、スーパーで買ってきたネットに入った小振りで甘そうな温州ミカンである。

じっとミカンを見つめるトヤさん。

そして、何を思ったのか、いきなりネットを破り、ミカンを取り出す。

取り出したミカンに指を突っ込むトヤさん。

人差し指、親指、中指、小指、薬指と次々にトヤさんの小さな指がミカンに埋まっていく。

そうして、全ての指がミカンで埋まった。

トヤさんは満足そうに笑って、十本の指にミカンをつけたまま両手をかざす。

「ミカン・ザ・ハンド!どうや、恐ろしくて声も出えへんか?」

・・・

トヤさん!食べ物で遊ばない!


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