トヤさん、熊本に行く
トヤさんは熊本に来ました。
熊本と言えば、やはり熊本城を見ておくべきかと思う。
そう思ってはいたのだが、
「ほら、すごいで。めっちゃパクパクしとる。めっちゃたくさんおる」
トヤさんは全然興味なさそうだ。
トヤさんは近くの川と言うか、堀のような場所で、鯉を見てはしゃいでいた。
その鯉達が別段きれいというわけでもない。
そんな鯉なんてどこにでもいるだろうに。
なんで熊本まで来て鯉を見なければいけないんだろうか。
「あのな、なんで鯉があんな風に口をパクパクさせとるか知っとるか?」
「エサでも探しているんじゃない?」
鯉は口に入るものはなんでも食べてしまう悪食である。
それこそブラックバス同様生態系を壊すとして、放流が問題になっている魚である。
恐らく初めは水面に落ちた虫とかを食べていたのだろうけど、それを見た人間がエサをやったせいで、人影を見たらエサをくれると思って、あんな風にパクパクしているのだろう。
「いつも通り甘いな」
トヤさんは左手を腰に当て、右手を握り、口元に当て、こほんと咳払いした。
「あれは呼吸しとるんや」
「・・・呼吸?」
「そうや、知らんやろうけど、亀だって鼻だけ出して呼吸したりするんや。水の中で生活しとると思って甘く見たらあかん。みんな生きてるんや。もちろんクジラもイルカもな!」
「トヤさん、えら呼吸って知ってる?」
トヤさんは固まった。
そして、不気味な笑いが漏れてきた。
「ふっふっふっ。ようやくやな。ようやくうちの高尚なボケに突っ込めるようになってきたみたいやな」
高尚なボケ?
「けど、調子に乗ったらあかんで。まだまだやねんからな!うちのボケは分かりにくいからな。気ぃを抜とったらあかんねん」
そう言って、トヤさんは走って熊本城へと向かった。
・・・
ああ、やっぱり天然物は活きがいいなぁ。