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憎しみがアベコベな世界

作者: GON狐

 夜に賑わう酒場の1席。そこで男女が喧嘩をしていた。きっかけは些細なものだった。酒場で飲んでいた時に、男が誤って女の酒を手に取り、飲んでしまった。酒を取られた恨み。女は手に持った包丁で男を刺した。突然の出来事に驚いて手を地面につけて仰向けに倒れ込んだ男に対し、女はさらに攻撃を続けた。その目には憎しみの感情が篭っていた。まるて仇を打つかのように、男の頭を、首を、手足を、あらゆる臓器を、滅多刺しにしていた。周りの客を見ると、それを横目で見ながら酒を嗜んでいた。中にはその凄惨な殺人現場をほとんど視界に入れることなく、談笑している者もいる。グサリ、グサリ、アハハ、ウフフ、グサリ、グビグビ、グサリ、グサリ、ドンッ、グサリ、クゥーッ、グサリ、グサリ。酒場が奏でるオノマトペの合唱は、異質さを感じないほど溶けて混ざりあっていた。彼らにとって今の殺人は当然の報復であった。ガラガラ、1人の客が入ってきた。女は未だに男を刺し続けている。一心不乱に、まるで狂ったかのように。新しく酒場に入ってきた客は、今まさに女に馬乗りされている男の弟だった。彼は、少し困ったような顔をし、女に対して兄の非礼を詫びた。女の手はようやく止まり、包丁を男から引き抜いて酒場のマスターに包丁を汚してしまったことを詫びて返却した。男の弟は兄だったものを綺麗に包み、車に乗せて帰っていった。女も何事も無かったかのように席に戻り、1人で飲み始めた。唯一女が感じていたのは、ついさっきまで目の前にいた男が居なくなって1人で飲まなくてはいけないことに対する悲しみであった。ともあれ、男の間違いから始まった憎しみの火種は、その数十分で消化された。少しだけ乱れた酒場の空気は、事の終わりから数分で完全に元に戻った。1人になった女に髪を金に染めて悪趣味なネックレスをした男が話しかけ、ナンパした。少しだけ躊躇しつつも、満更でも無い様子で女はその要求を受けいれ、共に酒を飲み始めた。家に帰ってきた男の弟は、兄の遺体を家の火葬場に入れ、できた骨を納骨するために再び車に乗って出かけて行った。兄は殺されたが、それはしょうがない事だ。そうされてもしょうがないことを兄はしたのだ。彼は兄が殺されたことを仕方がないと諦めた。女がした事にも多少腹が立つが、さして目くじらを立てるほどのものでもあるまい。この程度の事で腹を立てていては、自分の教養のなさを見せつけるようなものだ。


 憎しみの重さや罪の重さが滅茶苦茶で、多少の齟齬はあろう。しかし、これで憎しみの連鎖は産まれない。

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