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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
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手甲鉤

「これで手続きは完了となります。みなさん、頑張ってくださいね」


 今俺たちはギルドホールの受付に来ている。何をしに来ているかというとバーハニー採取のクエストの受注申請だ。受付にて参加を希望するものらが集まり、承諾を得ることで初めてクエストが開始される仕組みだ。勝手にクエストを達成しても報酬はでないのでしっかりと手順を踏まないといけない。少し面倒だがそれも決まりらしいので守らざるを得ない。


「よし、これで準備は完了だね。ケント君これからよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします。で、これからどうするんですか?」


「ん~そうだね~クエストに向けて準備を整えようか。携帯食料の確保や武器とか防具とか万全にしないとね。クエスト自体はバーハニーを採取することなんだけど、巣の中にあるものを簡単に取れるわけでもないからね~エイトビーを撹乱するために煙幕や他にも用意しておくつもりだよ」


「陽動二人と採取二人っていうのはどうしますか?」


「そうだね~陽動は私とラーシャルドでやろうと思うよ。私は光魔法が得意でね、目くらましなりエイトビーの注意を引くのにぴったりだと思うんだ。ラーシャルドと組むのはいざというときの盾約としてだね。遠距離、中距離はどうにかなるんだけど近接戦闘となったら私は役に立たないからね」


「俺とベリルさんでバーハニーの採取をするってことですね」


「うん、そうなるね」


「もし、巣の中でエイトビーに遭遇したらどうしたらいいんでしょうか?俺、ほとんど闘えないから戦力になりませんよ」


「そうなったら逃げりゃいいだろ?俺が先陣を切るから急に接敵することはないだろうしな。まぁ、いざというときのために最低限闘えるよう今から鍛えてやるよ」


「はい…お願いします」


「とりあえずギルドハウスに帰ろう。何があるのか確認しておきたいしね」


「そうだな。そういやケント、お前武器とかも持ってないんだったよな。俺が持ってるので使わなくなったやつをやるから今回はそれで頑張れよ」


「え?!武器をいただけるんですか?」


「俺のお古だからあまり期待はするなよ。ていうか、お前は武器無しで魔生物とやり合えると思うのか?」


「思いません」


「だろ?一緒にクエストを受けるんだ武器の一つくらいやるよ」


「ありがとうございます」


「いいってことよ。それより俺の指導はあまくないからな覚悟しとけよ」


「は、はぁ…」


「さぁ、着いたよ。ここが私たちギルド【ガベラ】のギルドハウスさ」


 ガリズマさんが両手を広げ歓迎してくれている先には三人で住むには十分すぎる大きさの一軒家が建っていた。中に入ると大きな広間があり、奥には暖炉が見えた。左右を見ると扉が何枚かあり、それぞれ目線あたりに誰の部屋かわかるように名前が刻まれたプレートが張り付けてあった。個室があるって凄いと思った。


「ケント、こっちこい」


「あ、はい。なんでしょう」


 ベリルさんに呼ばれた部屋に入るとそこには様々な武器が置かれている部屋だった。剣や手裏剣のような投擲具、鎖鎌と種類は様々だ。なんか忍者を連想するようなものが多くベリルさんってしのびなんじゃないかって思ってしまった。


「んーっと、これだな」


 部屋の中をゴソゴソと漁っていたベリルさんが何かを手に持ってきた。それは剣のようなものだったけれど取っ手がなく腕に装着するような形状をしているものだった。


「それってなんですか」


「これか~?これは手甲鉤ハンドクローだな。腕先に取り付けて使うものだ。突いたり切裂いたりと色々使えるものさ。装備してても手先が自由になるから採取したバーハニーを持てるし、普通の剣とかよりはいいだろうって思ってな。ほら、付けてみな」


「はい」


 ベリルさんに渡された手甲鉤ハンドクローを取り付けてみる。言っていたとおり装備しているのに手先が自由で何か持つ余裕があった。


「よし、ぴったりだな。んじゃ、今からみっちりしごいてやるぜ」


 手甲鉤ハンドクローの扱い方を聞いて、実際に使ってみる。生まれて初めて武器というものを使った。元の世界で武道とかやったことなかったし、武器の扱いの他に身のこなしとか戦闘に必要になりそうなことすべてを教えられ、体が覚えるまで叩き込まれた。はじめは武器の重さに振り回され振るうだけでも一苦労だったけど回数をこなすうちに何とか様になってきた。手甲鉤ハンドクローは固定の関係上内側(手の平のほう)からの衝撃には弱い。だから、攻撃する際も直線的に振るうのではなく、すこし弧を描くような軌道を意識して攻撃などこの武器の特性もなんとなくわかってきた。


「よし、大体こんなところか」


「はぁ…はぁ…」


「オイオイ、なにへばってんだよ。そんなんじゃすぐ死ぬぞ!お前が疲れて休んでいても敵は待ってくれないんだぜ」


「はぁ…はぁ…わ、わかってますよ。で、でも、すこし休ませてください」


「しゃーねぁーなぁ。息を整えるまでまってやる。落ち着いたら今度は俺と実践を想定した模擬戦だな」


 なんかベリルさんの目が輝いているように見えるのは気のせいだろうか…なんか生き生きとしている。もう疲れて動けないんだけど、まだやるんですかね…この人鬼だ。でも、やっておかないと実践でできるわけないし、俺が生き残るために教えてくれてるんだ頑張らないと…でも、無理っぽい。


「ベリル、今日はそれくらいにしてあげたら~ケント君、クエスト行く前に倒れちゃうよ~」


「ガリズマ、何言ってんだよ。やっておかないとクエスト中に死ぬだけだろ?一番疲れているときにどこまでできるのかって自分の限界も知っておかないとダメだろ?」


「君の言い分もわかるけどさ~採取にいくまで数日あるんだし、今日に詰め込まなくてもいいんじゃない?」


「あ~それもそうだな。よし、今日はここまで!ゆっくり休めよ」


「は…はい」


 俺はベリルさんの言葉を聞き終わるやいなやフラフラとギルドハウスへと入っていった。クエストが終わるまでギルドハウスの空き部屋を借りることになっている。その部屋に吸い込まれるように消えていった。


「そういや、そっちの準備はどうだ」


「まぁ、必要となりそうなものは大方準備し終えたよ」


「情報取集のほうは?」


「そうだね~巣の在りかは大体あたりをつけているよ。でも、すこし気になることがあってね。今、それについて調べてる」


「わかった。詳しくは出発前夜の会議にするか」


「そうだね。それじゃ~私も休むよ」


「おう」


 俺が眠りにつくまでの間ベリルさんとガリズマさんが何か話していたようだけれど、内容を聞き取る前に意識が遠のいた。冒険者って意外と大変なんだなぁって身をもって知ったよ。

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