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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
60/145

捕らわれた仲間

 暗い道を進んで行く。敵は目の前、慎重に進む必要があった。敵の大将であるドルフィネは対象の魂を奪う力を所持している。カイザの過去ではドルフィネの詠唱を妨害しようとしてその力をどうにかしようとしていたがその方法が通用するかはわからない。どのような仕組みで他人の魂を抜き取っているのかさえ分かればどうにかなりそうなものの、それがわからないから打てる手立てもないのだ。先の方で光が見えた…おそらくそこにガリズマさん達とドルフィネがいるのだろう。


「敵の黒幕であるドルフィネはガンサクという名の悪魔に体を乗っ取られています。ドルフィネ自身もそれを許容しているので彼自身ごと倒してしまっても大丈夫だと思います。ただ、倒す際にはガンサクがドルフィネの肉体を捨てて逃げださないかということには注意を払ってください。ガンサクを倒さなければ今回のような事態が別の場所で起きることになります」


「わかったのじゃ。じゃがしかし、そのガンサクという悪魔はどうやって倒すのかの?他人の肉体を乗っ取るような魔法は儂の知る限りなかったじゃろうし、そもそも実態があるのかどうかもあやしいのぉ」


「そうですね。確かに実態があるのかどうかもわからない敵が相手ではありますが…黙って見逃してはおけません。カイザさんの扱っていた特殊な空間魔法を用いて封印するのが最善ではありますがどうにかできないか色々と試しましょう」


「そんなに悠長な感じでいいのかの?」


「考えすぎてなにもしないよりはいいかと…試した内のどれかが有効に働いてくれればそれでいいんですよ」


「まぁ~そうじゃが…敵の力量は大丈夫なのかの?」


「俺だけの力では不足していますが…皆の力を合わせればなんとかなるかと」


「勝算は?」


「三割あるかないかですね。運よく効果のあるものが見つかればもっと高いです」


「まさしく未知の存在との戦闘じゃの」


「危険だと思ったら俺のことは見捨てて逃げてください。できる限り時間は稼ぎます」


「そんなことを言うではない。ケント殿が来なければ儂は奴らに利用される駒になるところじゃった。こうしてともに戦えること光栄に思っておるよ。それに未来ある若者を置き去りにして逃げる老いぼれに価値はあると思うかの?儂はそのようなことをするくらいなら最後まで戦う所存よ。儂も嘗ては名を馳せた冒険者じゃからの、最後まであきらめたりはせんて」


「シンリーさん…わかりました。共に奴を倒して皆で宴を開きましょう」


「うむ。それでこそ冒険者よ。どんな困難も全力を賭して乗り切り最後は皆で酒を飲みながら語り合う…懐かしいの~」


「それじゃあ俺が先陣を切ります。少し時間をおいてついてきてください」


 両手には猛虎タイガースタンスで生み出した手甲鉤ハンドクローを装備しいつでも戦闘できる状態にしている。虎撃連舞フーランペイジもすぐ放てるようにしており突入と共にドルフィネが魂を奪おうとしてもそれを妨害できる準備もしている。あとはとにかく神経を研ぎ澄まし絶対に倒すという強い意志をもって踏み出す足に力を込めた。一歩また一歩とゆっくりと光のある方へと進んで行く。最初は眩しかったが徐々に目が慣れてきてあたりの様子が見て取れる。奥には祭壇のようなものと何かを入れる器が見えた。そしてその側には…


「ガリズマさん!」


 祭壇らしき場所の側にはガリズマさんをはじめとしたギルド【ガベラ】のみんながいた。他には一緒に捜索をしていたギルド【ブラッド番人ウォーデン】の人たちも…皆、カイザにより眠らされたままのなのか苦痛の表情をしながら眠っていた。俺は皆のその様子見て周りのことなどお構いなしにそばに駆け寄っていた。それがどんなに愚行かわかっていても苦しむ仲間のことが心配でジッとなんてしていられなかった。


「ケント殿あぶない!」


 シンリーさんの大声で我に返った。振り返ることなく地面を強く蹴り横に飛び退いた。ベリルさんから教わったことの一つだ。仲間の誰かが声を荒げて危険を知らせたときはとにかくその場から移動しろ、移動する先は自身の視線で見て安全だと思えるところにとりあえず行けだったかな。特訓している時はよくわからなくて何度も殴られたっけ…頭で理解しようにも無理だったから最終的に体で覚えさせられた事だった。


 ズザッ


 背後で何かが地面に突き刺さる音が聞こえた。目視による確認はできないけれどその音がした場所は数秒前まで俺がいた場所だろう。飛び退いた勢いのまま受け身をとりその方向を振り向く。目に映った光景は黒々と輝く刃を地に突き立てたうつろな瞳をもつ少女だった。


「ケント殿無事か?」


「俺は大丈夫です…シンリーさんたちも大丈夫ですか?」


「儂もトーナ殿も無事じゃ…」


「それならよかった。…で、お前は誰だ!」


 俺の目の前にいる少女に見覚えなどなかったがその虚ろな目には俺たちに向けた明確な殺意が込められていた。カイザは俺やシンリーさんのように魂の価値は低いが戦力となるものを操って傀儡として使おうとしていた。目の前の少女は既に奴らに操られてしまった被害者なのだろうか。


「コ…ロス」


 地に突き刺さった剣を抜きまた俺に向かって突撃をしようとしている。この子は奴らの都合のいいように使われているだけなのに…倒すしかないのか?

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