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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
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商業街ノーヴァ

 流石、商業街といったところだろうか。すこし歩くだけで目的の店がずらりと並んでいた。宿をでる前に宿屋の主人に情報を聞いたがあの辺りとしか教えてくれず、すこし困ったものだが確かに言われた辺り一帯が目的とする店で賑わっていた。

 目的の店が何かって?それは服屋だな。昨夜は疲れ果ててそのまま眠りについたが、今着ている服はもう汗と土汚れで清潔感がない。服が汚いと周りからの視線もイタイし、なにより気持ちが悪い。

 煌びやかな装飾や質の良い生地を使った店が多く立ち並ぶなか、服屋の区域の端のほうで庶民向けの服屋を見つけた。この世界のお金の価値はまだわからないので直接尋ねてみる。


「すいません。この店に安くて丈夫な服ってありませんか?」


 この際オシャレとか考えている余裕なんてない。丈夫で長持ちすれば今のところはそれで充分だった。


「いらっしゃい。丈夫なやつかい?ならこれなんてどうだ。ウルイダの糸で作ったものさ。破れにくくて長持ちするぜ」


「ウルイダってのがどんな生き物なのかわからないが丈夫そうだな。今、手持ちがこれだけなんですが足りますか?」


 俺は手持ちのお金を店主に見せる。お金の価値を知らないのがこんなに不便だとは思わなかった。昨日の宿もそうだが買い物するたびに所持金を見せてちゃ世話ないな。


「ああ、足りるぜ。少し多いくらいだ」


「ならよかった。そうだ、ひとつ聞きたいことがあるんですがいいですか?」


「どうしたんでございましょう?」


「この世界…いや、この国の通貨になれていなくて…さっきも見せて確認したんですがこの貨幣はどのくらいの価値かで教えてほしいんですけど~」


「お客さんがさっき見せた金十字が一枚100Cクロスです。で、こっちの銀の十字が一枚50Cクロス、そこの銅の十字が一枚10Cクロスとなっています。このウルイダの服は一着50Cクロスとなっています。因みにウルイダとは糸を生み出す家畜の魔生物となっております」


「そうなんですか。ありがとうございます。助かりました」


「他にはいいのかい?」


「そうですね~そこのカバンはいくらですか」


「これかい?これもウルイダの糸で作られたもので値段は服と同じ50Cクロスだ」


「じゃ~服とカバンを合わせてこれでお願いします。あの~店の裏で着替えてもいいですか?」


「別にかまわないぜ。他のお客さんに見られないように気を付けな」


 店主に金の十字型の硬貨を渡し、服とカバンを受け取り店の裏で着替えを済ませた。とりあえず着ていたものはカバンの中に詰め込んでおいた。この世界の通貨はCクロスと呼ばれているらしい。昨日と今の買い物で二枚の金十字硬貨を使った。ユイノウソウ採取で得た報酬が金十字硬貨五枚…500Cクロスでそのうちすでに二枚を使ったから残りは金十字硬貨三枚…300Cクロスか~


「よし、これで少しマシになったな」


 ウルイダの服はすこしゴワゴワしていて着心地がいいかと言われるとそうでもなかったが汗と土で汚れた服よりは幾分かマシだった。店の外へと出て次の目的地へ向かう。次は食料確保ということで街の入り口辺りへと歩を進める。


「う~む…」


「お客さん、どうしたんだい?」


 店の前で右往左往しながら考えていると食料品を扱っている店の店主があきれて話しかけてきた。


「いや、別になんでもありません。ちょっとどれを買おうか悩んでるだけなので」


「なんだいそんなことか。そんなに悩むんだったら全部買っちまえばいいのに」


「手持ちがそこまでなくてどれかに決めないといけないんですよね」


「何と何で悩んでるのさ?」


「この干し肉とそこ干し魚ですね。どちらも保存がきいて重宝しそうだし、なによりおいしそうなんですよね」


「確かにどちらの商品も保存も聞いて美味だな。う~ん、そうだな。お客さんならこっちだな」


 店主から渡されたのは干し肉でも干し魚でもなく、赤い大きな果実だった。


「えーっと…これは?」


「最近仕入れ始めた果実さ。味も申し分なく、腹にもたまって水分も補給できる代物さ。もちろん長持ちするよ」


「どうしてこれを…?」


「お客さん、保存がきくものを選んでただろ?これからクエストで遠征するのかと思ってな。長旅でここまで一つの品で補えるものはないからね~」


「クエストってなんですか?」


「へ?!お客さん、冒険者じゃないのかい?保存食なんて買い求めるのは遠征に行く冒険者くらいだからついそうだと思ったんだが…」


「そうなんですか。保存食を求めたのは好きな時に食べようと思っただけですね。あの~冒険者ってどこでなれるんですか?」


「なんだ~冒険者にはまだなってないだけでこれからなるつもりだったのかい。そうだね~冒険者ならこの街の中心にあるギルドホールで手続きを済ませればなれるよ。で、これは買うのかい?」


「えーっと、じゃあ一つください」


 店主から果実を受け取り金十字硬貨を一枚渡す。おつりとして銀十字硬貨一枚と銅十字硬貨二枚…計70Cクロスが返ってきた。30Cクロスで便利な保存食と情報をゲット、ウマウマだな。

 さて、冒険者かぁ~異世界といったらこれだよな~数多の魔物を薙ぎ払い、ダンジョンで宝箱を探す。ロマンだね~

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