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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
55/145

正面衝突

「まじかよ…」


 無数の骸骨が合わさって生まれたそれは先程までの有象無象と違いこの空間ならではの進化を遂げておりこちらに対する明確な殺意を持っていた。奴の骨格は人間の骨格をモデルにしているようだがその関節は無数にありパッと数えただけでも数十あった。関節が多数あることにより蛇腹のように器用に曲げ伸ばしができるためこの狭い空間でも柔軟な攻撃ができるというわけだ。無数にいるだけだった雑魚敵が合わさり、敗北から学び進化するなんてそんなことあるのかよ…普通こういった場面って一つに合わさってでっかくなりましたよって展開じゃないのかよ…なんて思っても目の前の光景が変わるわけじゃないな。敵もバカじゃないんだ、相手の力量に合わせて勝つために工夫する。それが生物ってもんだ…ってかそもそもこいつって骨の集合体だから考える脳みそなんてなくないか?まぁ~細かいことは置いといてまずはこいつをどうするか考えないとな。あの無数の関節がある四肢は不規則な動きで行動予測がしずらいし、目視とあとは勘を頼りにどうにかするしかないか。再構築した骨の強度がどうなっているのかも気になるところだが…それは一撃浴びせて確認すればいいことだな。よし、大まかなことは変わらねぇ、とにかく押し切る!これでいいだろ。でも、背後に控えているカイザの技だけは注意しとかないといけないな。


「シンリーさん、作戦続行でいきます。敵の行動が読めないのでさっきよりも注意してください。俺は先にこのデカブツをどうにかします…援護任せました!」


「任されたのじゃ!」


 よし、それじゃあまずは強度確認といこうか。再構築して強度が増してたら虎撃連舞フーランペイジでのゴリ押しもできなくなるしな。それじゃあ~


「くらえ!!虎撃連舞フーランペイジ


 俺の放った一撃はものの見事にデカブツに命中した。そりゃ~あれだけでかけりゃ当たらない方がおかしいってなるな。ギシッ…ギシッ…と鈍い音を響かせながら骨が徐々に削れて辺りに散っていく。なるほどな~集まることで骨密度が高くなっているみたいだ。さっきのように簡単に粉砕はできなくなってるな。でも、壊しにくくなっただけで他は何も変わらない…なら連撃で押しとおる!


「もういっちょ!虎撃連舞フーランペイジ


 ギシッ…ギシッ…


 うーん、芯の部分はより頑丈になっているんだな。なかなか削れない。削り散らした骨も時間が経つにつれて元に戻っているしこれはどうしたものか…あれ、もしかしてこいつを一撃で仕留めれない時点で持久戦に持ち込まれて俺らがジリ貧になって負けるのでは?再生し続ける敵か…カイザはこいつを盾にするように背後を陣取ってるし目の前のこいつを無視して本丸を落とすってのもできない…一体どうすりゃいいんだ?


「危ない!避けるのじゃ」


「え?!」


 ほんの数秒程度の油断だった。奴を倒す算段を考えることに意識を割きすぎたみたいだ。その一瞬の隙をつかれてしまった。こちらに気づかれないように遠回しに湾曲させた腕による薙ぎ払い。それが俺の胴体にクリーンヒットした。幸い、運が良かったのか手甲鉤ハンドクローを介して受けたおかげで多少なりに軽減されたみたいだがその一撃で戦況は大きく傾いた。前線を支える俺がその役割を一時的ではあるが担えなくなった隙にデカブツが好き勝手に暴れ出した。特にキツイのは場所の制圧だ。この限られた空間を俺らとデカブツで二分割していた状況からやつが空間の半数を占める状況になってしまった。特に痛かったのが牢への道と俺らが進むはずの道の両方を敵に塞がれたことだ。これで本当に逃げも隠れもできなくなったわけだが…こいつとやり合っても勝てる算段が見えないのに退却も許されないってこれってもう詰みですかね?


「もう終わりか?所詮口先だけだったようだな小僧」


「まだ負けちゃいないだろ!」


「そうだが、これからどうするっていうのだ?屍墓群勢グレイブディールは滅びず絶えずお前たちの前に立ちはだかる壁となるのだぞ。先程の攻撃で押し切ることができないとわかったはずなのに諦めが悪いな」


「それは…」


 確かに奴の言う通りだ。突破するだけの力がないのはわかっている…でも、皆を助けるためにはどうにかしてこの状況を乗り越えなくちゃいけないんだ。考えろ~考えろ~俺。


「あまり長く遊んでいても時間の無駄かもしれんな。お前らの実力はそれなりだと見て取れた。はやく終わらせてドルフィネに報告するとするか。さぁ、やれ屍墓群勢グレイブディール!!」


 カイザの号令でデカブツがその大きな四肢を振るいあげる。逃げ場なんてない…虎撃連舞フーランペイジでも押し切られてしまう…万事休すか…


疑似水砲アクア・ノーツ!」


 ザッパァーン


「な、なんだ!?」


 どこからか聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと目の前のデカブツがよろめき倒れこんだ。その体の周りには水溜りができていた。


「何事だ?!」


「ふ~間に合ったみたいね」


「誰だ貴様は!」


「カイザ君…私のこと…わからないんだ…」


「貴様のことなど知らぬわ!我が遊戯の邪魔をするとは貴様、覚悟はできているな」

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