リスとタヌキ
トリスターナと呼ばれる魔生物と一緒に今夜の宿を探す。なんでこいつと一緒なのかってのはもう諦めた。商人のオヤジと別れた後どうにか結束樹の森に返そうとエサで釣ったり遊んでやるフリをして放置しようとしたけどダメだった。何が何でも付いてくるみたいだ。因みに魔生物が何かってのを商人のオヤジに聞いたところ不思議な力を持った生物の総称だとか…今のところ特に悪さもせずただくっ付いているだけなのだが何故か周囲の視線を集めて疲れる。ただでさえクタクタだってのに俺が歩くとチラチラと見てきて気になってしょうがない。こいつの不思議な力って注目を浴びるとかだったりしねぇよな~
周囲の視線に晒されながらもようやく今夜の宿が決まった。この世界の単価なんてわからないから貰った銭袋を見せて泊まれるかどうか聞いた。お金を見て態度を変えないかどうか注視しつつ返答を伺うと連泊をご希望ですかって素の表情で聞かれた。一日だけと答えた。
部屋へと案内されると倒れるようにベッドへと倒れこんだ。元の世界のものよりかなり質は悪いが横になれるだけで十分だった。なんか疲労感がすごい…異世界生活一日にしてこんなに疲れることってあるんだな~目を覚ますと荒野のど真ん中に放置され、お金を稼ぐために草木をかき分け森の奥へ行き、変な生き物に懐かれたっと…異世界ってこんなものなのかなって思うよ。あ~でも商業街ノーヴァで出会ったあの女の子は可愛かったな~なんか怖がらせちゃったみたいだけどまた会ったら一緒に食事でも他愛ない話でもしたいな。
キューキュッキュー
なにやらリスタヌキが騒いでいる。
「なんだよ。少し静かにしてくれよ」
疲れのせいかすこし強めの口調で言ってしまった。
キュッキュッキュ~
リスタヌキはこちらを見て首をすこし傾げている。疲れがなければその愛くるしさに魅了されていたかもしれない。そんなことを考えていたらリスタヌキが体をよじ登ってきた。俺の肩のあたりまで登りきると俺の頬に自分の体を擦り付けてきた。なんだよこいつ労ってくれてるのか?
「なんだよ、おまえ…可愛いやつだな」
リスタヌキの可愛さによりすこしだけ疲れが吹き飛んだ?ように感じた。体を擦り付けるリスタヌキを抱きかかえその体をモフる。
「あ~イイ!最高だ~お前ほんと可愛いな~そうだお前っていうのもあれだから名前をちゃんと決めてやらないとな。リスタヌキってのが一番しっくりくるが…ただ見た目を言ってるだけだしな~えーっと種族総称がトリスターナだったっけ?で見た目はリスとタヌキを合わせた感じ…リスと…タヌキ…リスタ抜き…よし!お前の名前はトリスターナからリスタを抜いて『トーナ』だ」
キュ~キュッ
「お、気に入ったか?ならよかった」
トーナは俺の手の中から抜け出て俺の頬にすり寄る。あ~癒される~
ふと気づいたら日が昇っていた。どうやらあの後そのまま寝てしまったらしい。まわりを見渡してトーナを探す。いた、横を向くともともと丸い体を更に丸くして眠っていた。それはまるで毛玉のようで愛らしい。ぐっすり眠れたおかげかもう疲れはないようだ。
「さて、これからどうするか…」
とりあえず状況を整理してみよう。現状俺は異世界にいるらしい。これは何故なのか本当にわからないからどうにかして原因を調べようと思う。で、今の手持ちは毛玉と木の実とすこしのお金、そして元の世界の衣服…以上だ。まずは服と俺の食糧、それになにか仕事なんかもみつけておかないといけない。最低限この世界で死なないためにやれることをやろうと思う。そういえばドレッドさんがこの街には情報屋もいるとか言ってたな。仕事が見つかったら探してみるか。
ぐぎゅうう~~
腹の虫が鳴きだした。確かに腹減ったなぁ~そういやここの宿って朝食がついてたんだ。なにがあるかわからないけど行ってみよう。
数分後…
うん、まぁ~それなりのものだった。パンのようなものにスープ、なにかのゆで卵、初めて見るものばかりで少し躊躇したが食べてみるとなかなかのものだった。食わず嫌いは良くないっていうけど本当だったな。
「よし、準備はいいかな…荷物なんてほとんどないからそこは心配いらないよな」
朝食を済ませ身支度をする。身支度っていってもお金とトーナを持っていくだけでものの数分で完了だった。
「とりあえず服を手に入れるか~そんで食べ物と仕事を探す。よし、決まり!」
そんな感じで商店立ち並ぶ方へと足を進めるのであった。