世界を騙せ
「ここは…?」
私は目覚めると真っ白な場所にいた。全身が…特にお腹まわりに痛みを感じたがそれよりも一緒にいたはずのカイザ君を探した…が、誰もいなかった。痛むお腹に手を当てるとポケットから何かが落ちた。
それは、カイザ君から受け取った奇跡を起こす石…霊位石っだった。
「これは…きゃっ!?なに」
霊位石を拾い上げると突然それは眩い光に包まれた。あまりの眩しさに目を開けていられず、目を閉じてしまった。驚いた拍子に霊位石を落としてしまった。
「あら~梨衣?どうしちゃったの~」
「だ、誰?」
「あっそうか~私ってあなたたちからは見えないんだったか~私はね、あなたの守護精霊…名を誘無身っていうのよろしくね~」
「リイ?一体誰のことを言ってるんですか?私の名前はミスティといいます。人違いではありませんか?」
「そんなことないわ。あなたから私の主の梨衣、霧生梨衣の存在がビンビン伝わってくるんだもの」
「で、でも私は~」
私のことを誰かの名で呼ぶ彼女、その名前も彼女の存在もどこか懐かしく感じられた。そういえば私ってこの世界に転生しちゃってたわよね。もうかなり前のことだから忘れていたけど…もしかして目の前の彼女のいう霧生梨衣ってのが転生前の私の名前ってこと?そして、転生前の守護精霊が彼女?よくわからないわね。
「ここはどこなの?」
「う~ん。ここは誘獄ってとこみたい」
「とこみたいって何よ」
「目が覚めたら梨衣ちゃんが倒れていて頭の中にあなたとここを守れってあったんだもの」
「何よそれ…って私は霧生梨衣じゃなくてミスティよ!私は転生して生まれ変わったの」
「ふ~ん。そうなんだ。だからすこしだけ雰囲気違ったのか~」
「そうよ」
誘無身との会話をなぜか懐かしく感じた。本当に彼女は転生前の私の守護精霊なのだろうとなんとなく感じた。
「ねぇ、ここからどうやったらでれるの?私、はやくカイザ君のところに行かないといけないの」
「う~ん。わからないわ。それよりあなた、大丈夫なの?」
「大丈夫ってなによ?」
「だって~体が…」
誘無身に言われて自分の体に目を向ける。目に映ったのは薄くぼやけた地面だった。
「何これ?」
「あなた、消えかかってるみたいね」
「ねぇ、どうして?なんで私消えようとしているの」
「それは~もう死んでるからとか?」
「何よそれ!じゃあ、あなたと話してるのは誰なのよ」
「今のあなたは消えたくても消えられない存在みたい…あなたの彼が最後に使った禁術のせいかもね」
「カイザ君が?私に何をしたのよ」
「彼があなたにしたのは輪廻の輪からの解放みたいなものかしら。本当はあなたたちを襲ってきた奴から守りたいだけだったのかもしれないけど結果的にあなたの魂は帰る場所を失ってるってわけね」
「それじゃあ、私は…」
「あなたはもう転生した世界には存在できないものになってる」
「そんな…ねぇ、なにか手段はないの?私、カイザ君を助けたいの!」
「手段か~それなら一つだけあるわ」
「それはなに?」
「私と一つになることよ」
「一つになるってどういうことよ」
「何故かはわからないのだけど私はこの世界での存在が確立しているみたいなの。おかしいわよね、主である霧生梨衣はこの世界にはいないっていうのに…」
「ええ、確かにおかしいわね。だって霧生梨衣は転生して私になったんですものこの世界にはいないはずよ」
「そこよ。この世界に霧生梨衣はいないけれど守護精霊である私は存在している。それで転生したあとのミスティ…あなたはもうこの世界に存在できない」
「何が言いたいのよ」
「私と一つになって転生前の霧生梨衣として存在する。それがあなたがこの世界にいられる唯一の方法よ」
誘無身の提案は隙をついたような案だった。存在だけはあるが実態はない霧生梨衣、実態はあるが存在がないミスティ、それらはもとは同じであるものであるから今の状態から脱するにはミスティである私が霧生梨衣となり存在するということだ。そのために霧生梨衣の守護精霊である誘無身と一つになれというのだ。神様がみたらそんなバグみたいなって思いそうなことをやろうとしているけど…私の答えは…
「わかったわ。あなたの案にのってあげる」
「じゃあ、いくわよ~」
「いいわよ」
「あ、一つだけ言い忘れたけどあなたは霧生梨衣として存在することになるのだけどこの空間からはでることはできないわ。とても強い力で私でも脱出はできないの。誰かがココから出してくれるのを待つしかないわね」
「うん。待っててカイザ君、あなたを絶対に助けるから…」
ミスティの過去編はここまで!
次回から拳斗視点に戻ります




