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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
46/145

追跡者

「次なる標的…」


 村長からの言葉を聞いてゆっくりとミスティのほうを振り返る。謎の仮面に狙われるということは次の被害者になるかもしれないということだ。突然、あなたの寿命はあと一週間ですなんて宣告と似たような衝撃を受けてもおかしくないだろう。だが、彼女の表情は迫りくる恐怖におびえるでもなく、穏やかな表情をしていた。


「ミスティ大丈夫かい?」


「平気よ。次に狙われるのは私ってことよね」


「君はその意味がわかっているのかい…死ぬかもしれなんだよ?」


「私は死なないわ。だって、カイザ君が守ってくれるんだもの」


「ミスティ、それは約束できない。私は持ちえるすべての力を尽くすつもりだが…奴に勝てる保証はない。現に先程相まみえたときにルドーさんの娘さんの魂を守るのもギリギリだった。いや、守ったというよりかはどうにかこうにか奴の手の届かないところに避難させたってところか…」


「カイザ君なら大丈夫よ。私はあなたのことを信じてる」


「ミスティ…」


「きゃーーーーーーーーーーーーーー」


「この声は?!」


 ミスティへ返答をしようとしたとき、村の入口辺りから女性の悲鳴があがった。悲鳴とほぼ同時に村人たちが騒ぎ出した。一体何が起きたというのだろうか?もしかしたら次なる被害者がもう出たのか?いや、今までの傾向からして次の標的になるのはミスティだって今さっきはなしてたのに…奴も思わぬ抵抗を受けてなりふり構わず狙ってきたのだろうか。とにかくミスティを守りつつ奴をどうにかしないといけない。


「ミスティ、これを…」


「これは?」


「霊位石と呼ばれる不思議な石さ」


「霊位石?」


「うん。奇跡を起こす石なんて呼ばれてる。今まで見つけてから一度も奇跡を見せてはくれていないけれど念のために持っていてくれないか」


「わかったわ」


「よし、じゃあ行こうか。私の傍を離れないでくれ」


「うん」


 注意を払いながら村の入口へと向かう。空間魔法を使っていない今、奴の姿は視認できない。いつどこから襲撃されるかもわからないというのは恐怖でしかないな。注意をするだけ無駄かもしれないが何かしら攻撃の際に姿を現す可能性も考えて目視での警戒を怠ってはいけない。


「何があったんですか?」


 村の入口に集まっている中の一人に事情を尋ねた。その人の話によると人形を抱えた男が突然暴れ出し、止めに入った人が倒れ、息をしていないといらしい。人形を持った男といえば私の弟子になりたいとか言っていた人がいたが彼のことだろうか?だが、暴れる理由がわからない。一刻も早く弟子になりたいとは言え村で暴れる理由になるだろうか。とにかく確認を急ごう。


消命ダイイングライフ


 暴れている男のもとへたどり着くと周囲にはたくさんの人が倒れていた。男はそれらに手を翳し何かつぶやいていた。


「君は何をしているんだ!」


「ナニしてるかって?それはね…質のイイ魂を探しているのさ。フヒヒヒヒヒヒ」


「質の良い魂を探している?それはどういうことだ」


 その男は私に弟子入り志願してきたときとはうってかわり何か様子がおかしかった。まるで別の何かが乗り移ったような感じだった。


「アァ~あの娘のタマシイを逃がしたのはオシカッタ。よくもジャマしてくれたな」


「あの娘の魂って…お前もしかしてあの時の…」


 人形男はニヤリと笑うと一気に距離を詰めてきた。突然のことに反応が一瞬遅れてしまった。


「うぐっ」


 人形男は力任せに私の腹に拳を食らわせてきた。腹部に激しい痛みが襲う。だが、痛みにひるんでいる暇などなかった。どうしてこの男にあの謎の仮面が乗り移っているかはわからないが、私のすぐそばにはミスティがいる…彼女だけは守らないといけなかった。


「ニクタイというものはイイものだ。カンショクが直にツタワッテくる」


「君はどうして人の魂を狙うんだ」


「ワガ主様に捧げる。いいタマシイあげると主様ヨロコブ。主様、イノチとナマエくれた。オレイしないとイケナイでしょ?」


「名前?」


「ガンサク。それがワガ名!」


「君はそのためにたくさんの人を殺すというのかい?」


「主様のため…ならネ。フヒヒ」


「君の主がどのような奴かはわからないが罪もない人から無理やり命を奪うなんて間違っている!」


「うぅぅ…こいつはマリィと話せるようにしてくれるって約束してくれたんだ。モクテキなんてどうでもいい。僕のジャマをしないでくれ!」


「え…」


 さっきまで話していた奴とは別の私に弟子入り志願してきたあの時の少年の声だった。この体の本来の所有者、その人物はあの謎の仮面に乗っ取られているのか…いや、邪魔をするなと彼は言った…それはつまり彼は乗っ取られているのではなく自らの意志で奴に体を貸しているということだ。マリィというのはあの人形のことだろうか?作り物が動き出すわけはないのにそれに命を見出す彼の幻想にうまく付け入った感じか。


「もう暴れるのはやめるんだ!」


「ジャマをするなぁぁぁぁああああああああああああ!」


 ガンサクと名乗った謎の仮面か体の持ち主である少年なのかどちらなのかはわからないが鬼気迫る表情で声を荒げた。説得は無理に近いな。奴を止めなければ皆亡くなってしまう…ミスティも…それだけは阻止しなければいけない。

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