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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
42/145

謎の仮面

 白く眩しい光になかなか目を開けずにいられた。しばらくしてようやくその輝きになれゆっくりと目を開ける。


「ここは…」


「ここが幽世カクリヨです。少し眩しいと思いますが徐々になれますのでもうしばらくお待ちください」


「あの、娘は?イーリアもここにいるのですよね」


「ええ、いますよ。イーリアさん、姿を現していただけますか?」


「おとう…さん」


「あぁ~イーリア!本当にイーリアなのかい?」


「う、うん。ここはどこなの?」


「ここは幽世カクリヨという霊と生者が一時的に共存できる場です。あなたの父君であるルドーさんから依頼を受けて私があなたを呼び寄せました」


「あ、あれ…私の体、なんで透けてるの?」


「イーリア?もしかして…亡くなったことに気づいていないのかい?」


「え…私って死んじゃったの?」


「そうだよ。すまない…私が傍にいたというのに…」


「ううん、私もよくわかってないけどお父さんより先に逝っちゃってごめんなさい」


「あぁ~イーリア!」


「お父さん!」


 原因もわからず亡くなった娘さんとの再会か…こうやってまた会うことができて良かったのだろうか?本来ならば死んだものとは二度と会えないのが世の常だが、この霊干渉者ダイストとしての仕事はまた会う機会を提供する。世の理を捻じ曲げているように思えてくるが…あんなにも再会を喜んでいるのだ、やって良かった…のだろう。


「カイザさん、本当にありがとうございます。娘とまたこうして話す機会を与えてもらって感謝しかございません」


「いえいえ、それが霊干渉者ダイストとしての使命ですので娘さんと出会えてよかったですね」


「はい」


 本当に仲の良い親子だな~残り少ない時間だが存分に話し合ってほしいものだ。幽世カクリヨには制限時間があって長くて十分しかこの空間には居られない。私の力不足もあるのだが、そもそも霊界へと旅立つ霊をやや強引に呼び寄せているので霊も長いができないという事情もある。短い時間の中で何をするのかは依頼主の自由であるが短すぎるなと思うところもある。


「あまり長い時間を過ごすと別れもつらくなるだけだからね…これくらいがいいのだろうか」


「カイザさん?」


「あ、すいません。すこし考え事をしていたもので、独り言を呟いていたかもしれません」


「そうですか、時間のほうはまだ大丈夫ですかね?」


「そうですね~あと三分ほどでしょうか」


「三分ですか…わかりました。イーリア、最後に言っておきたいことがあるんだ。いいかい」


「なぁに?」


「私たちのもとに生まれてきてありがとう。母さんを早くになくし生きるのが嫌になったこともあったがイーリアがいたおかげで今もこうやっていられてる。君はもう居ないけど先にいった母さんと私がそちらに行くのを気長に待っていておくれ。君の分まで長生きしようと思う。私の愛しいイーリア!本当に愛してる」


「お父さん…私ね…」


 パリン


 何かガラスが割れるような音が響いた。


「な、何なんだこの音は?カイザさん、これはいったい…」


「すいません。私にも一体何が起きたのやら…少しお待ちください、すぐに原因を突き止めますので」


「お父さん、怖いよ~」


「イーリア、大丈夫だ。お父さんががついている」


 音の正体はすぐに判明した。不気味な仮面に真っ黒のローブで全身を覆った謎の存在、それはただそこに佇みこちらの様子をうかがっているようだった。


「ミーツケタ」


「君は一体何者だ」


「ヒヒヒヒ…タマシイ サァ、オイデ ダイイング…ライフ」


 謎の仮面が片手を伸ばしボソボソと何かを呟いた。


「ぅぅ…い、いや…」


「イーリア、どうしたんだい。君!私の娘に何をしたんだ」


 突然、イーリアさんが苦しみだした…奴は何をしたというんだ。本来、幽世カクリヨには術者の許可なく入室できないのにあの仮面はどうやって入ってきたんだ?わからないが今はイーリアさんへ何か危害を加えようとしているみたいだしどうにかして阻止しないといけないな。


「黙らせよ!捕縛のタナトス


 霊干渉者ダイストの仕事の三つ目、悪霊の捕縛の際に用いられる魔法…捕縛のタナトスを使用し謎の仮面を拘束しようと試みる。対象が悪霊でなくともこの鎖は対象に定めたものを捕らえるまで無数の鎖を生成し捕らえようと追尾する魔法だ。その性質上かなりの魔力を消費するので連発はできないが一度紡いでしまえばあとは捕らえるのを見守るだけとなる。


「ルドーさん、イーリアさんを連れて私の後ろにいてください。あとはあの鎖が奴を捕らえてくれます」


「わかりました」


 さて、そろそろ鎖が捕らえた頃か…え?!これはどういうことだ?私の目に映った光景は予想だにしないものだった。無数の鎖は確かに謎の仮面を捕らえていた…が謎の仮面は纏っているローブごと絞られているだけですぐさまスルリと拘束を抜け出していた。まるで肉体が存在していないかのようだった。霊体か何かだろうか?何度も鎖が捕らえてもまるで無意味と言わんばかりに秒で抜け出す。謎の仮面は鎖の追尾を受けながらもこちらへと着実に接近していた。このままではルドーさん達のもとにたどり着いてしまう。それは何としても阻止しなければ…


「乖離せよ!現世ウツシヨ


 現世ウツシヨ幽世カクリヨとは別のもう一つの結界魔法。本来は悪霊などを拘束するために使う結界だが、今回は二人をこの謎の仮面から守るためにつかった。幽世カクリヨは霊体を招きいれるために入れる隙間が生まれる、その隙間は術者により招き入れた後は閉じられるのだがこの謎の仮面のように変幻自在に変質できるものならばごく小さい隙間をすり抜けてこれるのだろう。だが、現世ウツシヨ幽世カクリヨとは別物で隔絶する空間魔法だ、どんなものであれこの空間からは抜け出すこともできない。逆を言えば外から入ることもできないということになる。現世ウツシヨは閉じることで結界が生成し、開くことで解放する。幽世カクリヨと真逆だ。何故、現世ウツシヨをルドーさんらに使ったかというと、この魔法は素早く動くものを捕らえるのが難しいからだ。この空間内にいる限り外からの攻撃は不可能になる。そのためルドーさんらを守るということに変わりはない。

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