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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
38/145

ミスティ

ミスティとカイザの過去の話になります。しばらく視点はミスティになります。

 目を覚ますとそこには見知らぬ二人の男女がこちらを覗き込んでいた。見舞いかな?でも面識もない人からの見舞いなんておかしいわね。最近は実の両親も忙しいのか顔を出さなくなってきたというのに、この人たちも体裁なんかを気にして形だけのものを済ませに来たのだろう。あぁでも退屈するよりはましね。一日中ベッドの上で横になってるだけなんて退屈でしかないのだもの。人との会話も定期的に見回りに来る看護婦さんと一言二言かわすだけ、こうやって見舞いに来てくれるだけでもありがたいわね…誰だかわからないのは少し不安だけど幼少の頃より重病に侵され入退院を繰り返す日々、たまにはこういうイベントも悪くないわね。


「-----・・・------」


 あれ…この人たちはなんて言ってるんだろう?私の耳が衰えてしまったのか、それとも別の国の言語なのか…三十そこらになってもわからない言葉なんてものがあるのね。もう一度言ってもらうのも手間だし、適当におかしくない返答でもしておけばいいかな。


「あぅぅあぅぁぅ」


 え?!今のはなに?私の口からでたの?そんなわけないわよね。だっていくら病弱だからってそれなりに学んで普通に話せていた…はずなのに…


「----・・---・・・---!!」


 え、なに…この人たち急に手を取って泣きながら喜んでるわ。私が口を利けないことがそんなに喜ばしいことなのかしら?二人の男女は少しの間抱き合ったりしていたが落ち着いたのかまたこちらを向き直った。そろそろと女性の方が私に向かって手を伸ばしてきた。ちょっ、何をするつもりよ。私は怖くなり目をつむった。彼女の手が私の体を包み込み、そして私は宙へと浮かび上がった。私もそれなりに体重があるはずなのに同じくらいの年齢の女性にこんなに簡単に抱きかかえられるなんて夢でもみているのかしらね。恐る恐る目を開き、彼女の胸の中で高くなった視界から新たな情報を得る。え?私の寝ているベッド、病室のものと全然違うわ。それにまるで赤ちゃんが寝るようなサイズだわ。頭の中が疑問符で埋め尽くされそうになる。意味が分からない、本当に夢か何かかしら。


 すこし時間が経過してわかったことがある。それはここが私のいた病室でもなく、ましてや別の世界だってこと!本当に訳が分からないわ。一体何がどうなればこういうことになるのよ。まるで漫画やアニメでありそうな展開じゃない。不慮の事故で亡くなり神様の力で別の世界に転生ってやつ!病室で暇つぶしに見たことある程度だけど、私の今の状況ってそれにあてはまってるのよね~得られる情報から推察するに、今の私は転生して赤ん坊になっている。先程の私を覗き込んでいた二人は私の両親…この世界でのだけどね。得られた情報はそれくらいかな。だって首は自由に回らないし、自分で動き回ろうにもいうこと聞かないんだからどうしようもないのよね。病室で寝たきりだったころとほとんど変わらないわね。


 順調に成長を続け今は六歳になったころかしら…異世界で新たに生を受けて六年、意外と時間が過ぎるのも早いわね。前の世界での知識などがあったから生きていくのにはほとんど苦労せずに過ごせたわ。でも、この世界の言語習得には多少なりに苦労したわね。アニメとか漫画とかではこういうのも自動翻訳されてたのに変なとこだけリアルなのよね。そこら辺もひっくるめてファンタジーの世界観であってほしかったわ。あ、そういえば今日はこの世界で初めての友人ができた日なのよね。前の世界では幼少の頃から入退院を繰り返して友達なんてほとんどいなかったけど今の私は健康優良児そのものでできないことなんてないのよ。あぁ~自分で自由に動き回れるってこんなに最高なことなのね。あ、忘れるとこだったわ。その友人について紹介しないと…あれ?私は誰に紹介しようとしているの…まぁそんなことはどうでもいいわね。

 あっちにいる虚空を見ながらひとりぶつくさ言っている頭の可笑しな子…名前をカイザ君っていったかな~なんかミステリアスで面白いのよね。


「カイザ君、誰と話しているの?」


「ん?あ~ミスティ、最近ここら辺で亡くなられたお爺さんが道に迷ったらしくてね。道を教えていたところなんだ」


「ふ~ん、そうなんだ」


 カイザ君は所謂霊感のある人みたいでああやって虚空を見ながら独り言を言っている時は霊とお話をしているらしい。周りはそういう彼のことを気味悪がって近寄ろうとしないけど私はそんな彼が不思議で好きなのよね。私も見た目は子供だけど中身は三十そこら…若い子たちから見たらほぼおばさんみたいなものだしね。見た目は子供、頭脳は大人って感じのフレーズが有名な作品もあったわね、私の場合はそこまで頭もよくなかったから見た目は子供、中身は大人?って感じかしらね。周りからみて可笑しな子供のカイザ君と生い立ちが特殊な私、そんな二人が仲良くなるのに時間は…それなりにはかかったわね。仲良くなったからにはとことん大切にしてあげなくっちゃね。孤独の辛さは前の世界で痛いほど味わったんだもの、誰かと一緒にバカやれるのって憧れていたのよね。

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