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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
36/145

助けを求める声

「お~い、誰かいるのか?」


 謎の声の主に問いかける。もし、敵だとしたら危ない橋を渡ることになるが、味方になりうる存在であれば是非とも味方に迎え入れたいものだった。


「タス…テ」


「たすて?何言ってるかよく聞こえないんだけど~」


「おいケント、油断はするなよ。これだけ霧が深くなって視界も悪いんだ。そんな風に大声上げて、もし相手が敵だったら一方的に蹂躙されるってことになりかねんぞ」


「ああ、それもそうだけどさ~もしこの場所に詳しい人だったら出口とか知ってるかもしれないじゃん」


 正直、この場所についてはわからないことばかりだ。奇妙な人面鳥がいるわ、その人面鳥は魂の無い抜け殻で強い意志で動いてたりとか、そもそもどうやってこの場所に移動してきたかとか謎が深い。


「タス…ケ…テ」


 謎の声は段々と俺たちの方に近づいてきているみたいだった。それにしても近くなって少し聞き取れたが「助けて」って言ってないか?ってか何から助けてほしいんだよ!今俺たちもここから出てみんなと合流したいんだよ。こっちだってこの奇妙な森から出るために助けてほしいよ。


「一体お前は誰なんだよ。助けてほしいのはこっちも同じだって!」


「カイザ ヲ タスケテ」


「カイザを助けて?ってカイザって誰だよ」


「ケント、あぶねぇ!」


 猛虎もうこが叫んだかと思ったら俺は後方へ吹き飛んでいた。なぜ吹き飛んだかは猛虎もうこが俺に体当たりしてきたからなんだけどなぜそんなことをする必要があるんだ?っと思って先程までいた場所に目を向けると、白い何かがそこに突き刺さっていた。


「なんだあれ?」


 よく目をこらしてそれを見ると…


 カタッカタカタ


 なんとその何かが急に動き出したのだ。謎の声の主による攻撃かはたまた別の何かか、どちらにせよ猛虎もうこのおかげで助かったというわけだ。まぁ、一時的にだけどね。


「ケント次が来る。構えろ!」


 猛虎もうこに言われるまま手甲鉤ハンドクローを構える。すると先程動いた何かが一直線に俺の方へ飛んできた。


「うわっ」


 構えていたおかげかどうにかその飛んできた何かを受け止めることができた。割りと強い力で押されている。力の差は俺の方に分があるみたいで余裕をもって受け止めていられる。だから、その正体を確認しようと目を向けた。


「なんだこれ、骨か?」


 目に映った光景は鳥のような骨の塊だった。嘴らしきものはないので恐らく人面鳥のものとみられるがなんでこんな状態になってまで動けているのか理解できない。次々と襲い来る骨の塊、流石に面倒すぎるぞ。


「カイザ…タスケ…テ」


「あ~もう!わかった。あんたのいうカイザってやつを助ければいいんだろ?助けてやるからあんたの姿を見せろって!あとこの骨はあんたがしむけてんのか?ならやめてくれよ」


 執拗に助けを求めるその声とこの骨の塊が連動しているのかは定かではないが声が聞こえ始めてから攻撃?が始まったしおそらく関係があるんだろう…多分な。

 俺の返答を聞き入れてくれたのか骨の塊が飛んでこなくなった。やはり謎の声と関係してたみたいだ。そして、俺らの目の前の霧が段々と濃くなって人影のようなものを作り出した。


「カイザ…タスケテ…クレル?」


「ああ、助けてやる。だけど助けてやる代わりに一つ条件をつけてもいいか?俺らは敵の仕業でこの場所に送られてしまったんだけど元の場所に戻って仲間たちと合流したいんだ、だから元に戻る方法なんかや出口を知っていたら案内してほしい」


「カイザ…カイザ…」


「あの~聞いてますか?」


「おいケント、こいつ何かに縛られてやがるぞ。おそらくそいつのせいで発言に制限がかかっているんじゃねぇか?」


「縛られているってこの人、霧から生まれたように見えたけどそもそも人なのかって話からじゃないか?」


「さっきの鳥野郎どもとは違った雰囲気だぜ。なんならケントに近い雰囲気だ」


「それって俺と同じ人間ってことか?それとも異世界人ってこと?」


「前者のほうだな。でだ、奴の周りに虎撃連舞フーランペイジを繰り出してみろ。そうだな~何かつながったものを断ち切るイメージでやるんだ」


「そんな簡単に言うがまだできていないんだけど。お前、見てたよな?」


「必要になればどうにかなるだろ。そうだな~おいあんた!ケントに向かって結構しつこく攻撃してくれ、できるだけあんたの周りに攻撃が飛んでくように射線も意識しながらな」


猛虎もうこ、お前な~」


 猛虎もうこの言葉を聞き入れたのかまた骨の塊が俺めがけて飛んできた。やはりこの霧の人影と関係していたらしい。てか、俺を守るとかいってたやつがその対象に攻撃を仕向けるように指示するとかマジかよ。文句を垂れる前に攻撃に備える。骨の塊の突撃を避けつつ手甲鉤ハンドクローを構えて意識する。骨の塊を一刀両断し、そのまま霧の人影を縛っているモノを断つ…そんなイメージだ。


「よし!今だ、虎撃連舞フーランペイジ


 目撃に迫る骨の塊を殴るように切り付けた。直接手甲鉤ハンドクローが命中し骨が砕ける感触が手甲鉤ハンドクローを通して腕に伝わる。


 ザッシュ


 俺の振りは骨の塊を一刀両断…ではなく粉砕しそのまま斬撃の余波が霧の人影のほうへと飛んで行った。なんか一応技がでたみたいだな。


 バチン!


 なにか張り詰めたゴムが切れるような大きな音がした。


「きゃっ!?」


 女性の声が聞こえた。猛虎もうこがいう束縛みたいなものが解けて、とらわれていたものが解放されたのだろうか?よくわからないがまずは確認だな。

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