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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
30/145

朽ちた森

「ぅぅ…何が起きたんだ」


 死人のような男の謎の攻撃を受けてから記憶が飛んでいる。辺りを見渡すと開けているが俺たちがさっきまでいた混迷樹の森とは別の光景が広がっている。朽ちた木々が周囲を囲み不気味な雰囲気を漂わせている。イメージとしてはホラーゲームとかで見る海外の墓地みたいな感じだ。地面が盛り上がり今にもゾンビの大群が這い上がって気そうだった。


「みんなは…ガリズマさん!ベリルさん!ラーシャルドさん!一体どこにいったんだ」


 周りにギルド【ガベラ】の皆の姿はない。もちろんギルド【ブラッド番人ウォーデン】の人たちの姿もなかった。謎の攻撃でどれくらい意識を失っていたかはわからない。意識の無い間に別の場所に移された可能性もあるし、まだその攻撃を受けている最中なのかも判断しかねる。


「なにが起きているかわからないけどまずは行動だな。この場所にとどまっていても何か起きるわけでもないだろうし、ベリルさん達なら何か行動に移しているはずだ」


 朽ちた木々の間を周りに注意しつつ通っていく。地を踏みしめる度に地面に落ちた朽木がペキッと音をたてて折れる。どの木も瘦せこけていて細いものばかりだがその分数が多く、隙間から遠くを見るってことはできない。この森は純粋に青々とした草木に覆われた混迷樹の森と性質が似て非なる場所だが、進みにくいのだけは同じなんだよな。雰囲気はこっちのほうが不気味で嫌なんだけどさ。


 カサッ


「ん?なんだ」


 朽木の上の方だろうかなにかが動いたような音がした。細い木の枝の上を人間が移動するのは無理に近いからおそらく魔生物か何かだろうが確認するのも勇気がいる。その魔生物がもし強力な魔生物だったらかなりマズイ。具体的に何がまずいって俺が今いる場所は隠れるのには優れているが逃げるにはかなり不便な場所なのだ。朽木を使っての隠密はできても一度視認されるとそれも厳しい。逃げるのに不便なのはそれもまた朽木があるからだ。全力で駆けようにもたくさん生えている朽木が邪魔をする。だから、俺ができる最善策はできるだけ隠密しつつこの朽木林を抜けることだ。もし、見つかったら戦闘は避けられないがそうならないことを願い移動を開始した。


 カサッカササ


 さっきよりも何かが近づいてきているみたいだ。ただ朽木の上を移動しているだけならいいが、見つかっていたら最悪だ。


 カサッカササササ


 まずい!かなり近い。もうすでに見つかっていたのだろう。


「仕方ない…」


 戦闘は避けられない。俺は手甲鉤ハンドクローがしっかり固定されていることを再確認し構える。相手が好戦的な魔生物とかじゃないといいな~


 ササササ…サッ…ペキッ


 謎の生物が朽木の上から落ちて地面に降り立った。不明だったその正体が今露になる。


 キュ~?


「え…トーナ?」


 目の前に落ちてきた謎の生物の正体はなんとトーナだった。そういえばギルド会談に勝手についてきたことから今回のクエストには最初から同行させていたんだったな。


 キュ~キュッキュ~


 トーナは俺に出会えたことが嬉しいのか地面の上でぴょんぴょんと飛び跳ねている。跳ねる度にペキッペキッっと落ちた枝の折れる音が響いていた。


「トーナ、あまり騒がないでくれよ~」


 緊張からの解放とトーナの愛くるしさですこしだけ元気がでてきた。


「よし!トーナ、皆を一緒に探そう」


 すこしだけ大きな声を出してしまった。


 キェーーーーーー


 なんか胡散臭い祈祷師が出しそうな声が遠くから聞こえた。え、もしかして…


 ガサッサササ


 あ、これまずいやつですね。


「トーナ、行くよ」


 トーナを抱きかかえ進みにくい朽ち木群をできるだけはやく駆ける。途中から気づいたんだが手甲鉤ハンドクローで薙ぎ払いながら進めば道ができて進みやすくなった。刃が痛むとかベリルさんに怒られそうだが今は逃げるためにこの武器を振るう。すこし進むと目覚めた場所と似たような開けたところに出た。なんか地面に枝と混じって白い何かが落ちているがなんだろうか。


 キェーーーーーーーー


 追跡してきた何か…おそらく魔生物が一直線に飛んできた。咄嗟に避けて次の攻撃に備える。


 カッ


 飛んできた魔生物と手甲鉤ハンドクローがぶつかる音が響いた。全力の突撃を受けて少しだけふらついたがどうにか耐えることができている。鍔迫り合いの要領で魔生物を抑えている隙に魔生物の正体を確認する。うげっ、なんだこいつ気持ち悪い。目の前にいる魔生物、その見た目は簡単にいうと人面鳥だ。翼のついた鳥の胴体に悲愴な表情を浮かべた人の顔を持った生物。こんな魔生物もいるのかと目を疑ったが目の前に実際にいるんだから否定はできないな。鍔迫り合いの末に人面鳥をはじき返した。思ったよりも力はないみたい。でも、人の顔があるだけでやりづらいな。これで人の言葉を話したら最悪だよ。いまのところそんな様子はないからいいんだけどね。


 キィェェェエエエエエ


 はじかれた人面鳥は一旦態勢を立て直し、俺を一瞥するといきなり叫び声をあげた。あまりのうるささに思わず耳をふさいでいた。


 キェーーーーー


 遠くから人面鳥の鳴き声が聞こえる。あ、これ仲間呼んだってやつですかね。え…それはヤバくね?空を見上げると遠方から羽ばたく何かが多数見えた。本当にマズイかもしれない。

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