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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
3/145

金と依頼

「それじゃ、ここでお別れだな。商人としちゃぁ金でも取るのが道理ってもんだが、今回は移動のついでに乗せただけだし勘弁してやんよ。まぁ~せいぜい頑張んなよ、あんちゃん!」


 ドレッドさんはそう言い残して去っていった。用があるんだったっけな。荒野からここまで結構な距離を馬車で移動してきた。もしドレッドさんに出会えてなかったら今頃どうなっていたか…想像もしたくないな。


「あ、ドレッドさん!ありがとうございました」


 颯爽と走り去って行くドレッドさんの後ろ姿に向かって心からのお礼を叫ぶ。移動のついでとは言っていたけれどわざわざ一般客用の通り付近で降ろしてくれたのはドレッドさんなりの優しさだろう。俺の声が聞こえたのか片手をあげて返事をしてくれた。もし次会う機会があったら何かお礼をできるくらいにはならないとなと思いつつ街の散策を始めた。数分が経った。俺はとある重要な問題を忘れていたことに気が付いた。そうそれは俺が無一文であるということだ。俺が今いるのは商業街…見渡す限り露店や商店が並んでいるところだ。食べ物や生活必需品、それに武器に宝石と様々なものが陳列している。それらを手に入れるにはやはりお金が必要となってくる。だが、俺の手元にはこの世界のお金なんてありはしない。なんせ荒野のど真ん中に着の身着のままで放置されていたんだ。逆に持っているほうがおかしいってもんだよな。異世界を舞台にした漫画とかだとモンスターからドロップしたり、転生特典やらで王様あたりからもらっていたっけ…あれ?俺は~何もなし…そんなのありですか?


「さて、今の状況は分かった…で、お金をどうするかってなるんだよな~」


 金の宛なんて無い。なんせついさっきついたばかりで知り合いなんていないからな。ドレッドさんがいたら働き口を紹介してもらえたかもしれないが用を済ませるために去ってたからな~まぁ、とりあえずここから動くか。何かないか探してみよう~なんて考えながら突き当りの角を曲がった。


「キャッ?!」


「うわっ?!」


 角を曲がった瞬間誰かとぶつかった。いやいや、前くらい見ろよな~ぶつかった俺が言うのもなんだけどさ。


「痛てて、すいません大丈夫ですか」


 軽く当たっただけだったしすぐに起き上がりぶつかった相手に手を差し伸べる。するとそこには角と尻尾を生やした可愛らしい女の子が立っていた。え?!なんてことだ…角と尻尾ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。いや、待て落ち着くんだ俺、ここは異世界だろうってなんとなく認識し始めた矢先に何このTHE異世界美少女は!え、それってコスプレか何かですかって?いや、そんなわけあるかい。滑らかにクネクネと動く尻尾に艶があり鋭利な角…これが作り物なわけねぇよな。手を差し出したままその衝撃的な光景に硬直していると…


「だ、だいじょうぶ…です」


 女の子はそう言って俺の手を取り立ち上がった。女の子は俺が固まっているのを心配してか此方の様子を伺っている。


「あ、あなたはだ、だいじょうぶ?」


「あ、はい。大丈夫です。はい」


 女の子に話しかけられて我に返った。差し出していた手を引っ込めて彼女のほうを見る。すこしオドオドとしていて何かに怯えているのだろうか。手を前のほうでモジモジとさせている彼女はなにやら小動物的な感じで今すぐにでも抱きしめたくなる可愛さだった。


「あ、うぅ~ご、ごめんなさい。さ、さようなら」


 彼女は俺の視線に気づいたのか急に尻尾と角を着ていたローブで隠し走り去ってしまった。もしかして怯えていたのって俺に対してなのか?でも、なかなか可愛い子だったな。元の世界でもなかなかお目にかかれないTHE美少女ってやつだった。異世界に来れて良かったと今初めて思ったよ。なんてことを考えながら俺もその場を後にした。


「さて、これからどうしたものか…」


 街についておそらく2時間程だろうか…入口付近の店は大方見てしまった。まぁ、見るだけで何も買ってはないんだけどな。なんか冷やかしてるみたいで気が引けたけど情報収集は必要なんだよね。得られたことは入口付近には主に食品や生活必需品など日常的に必要なものが揃っていた。食品類も見た事の無いものばかりでここが異世界ですよって言われている気がした。散策ついでに何かお金になりそうなものも探した。ついでとは言いながらも今一番の問題なんですよね。すると、とある店の店主から薬草採取の依頼を受けた。なんかその店の品を誉めたら急に機嫌が良くなって色々と話しかけてきた。それで俺が無一文で困ってることを伝えたら薬草採取の仕事をくれたんだ。普段はきちんとした仕入先から仕入れているが今回は特別だとのことだ。


「で、兄ちゃんや。おめぇ、なんで金もないのに商業街に来たのよ。俺ら商人はそういう冷やかしが嫌いなもんだぜ」


「いや~俺もこの街で買い物するのを楽しみにしていたんですけどね~いざ買い物をしようとしたら財布が入ってるはずのところに何もなくてですね。落としたみたいなんですよ。色々といい品があるというのに手が出せない悔しさわかります?おやっさんの店の品なんか特に珍しいものばかりで目移りしてたのにな~」


「おう、兄ちゃんやなかなかいい目をしてんな。うちの品揃えは天下一品よ!今日は特に売れ行きが良くてよ~品が尽きかけてんだ。そうだ兄ちゃんや小遣い稼ぎに俺の依頼を受けないか?受けてくれりゃそれなりの報酬をやると約束するぜ、どうするよ」


「そりゃ~いいね。で、どんな依頼?」


「そうだな~街のすぐ近くにある森にあるこれと同じ草を持ってきてくれよ。日没までにこの籠一杯にしてきたら更に報酬を弾むぜ。今回は特別だ」


「わかったよ。任せてくれ」


 なんて感じに急に仕事が決まった。結構ノリのいいオヤジで助かった。正直、このままだったら野宿する羽目になるところだったからな。依頼内容は森まで行って頼まれた草を取って来ること!簡単だろ?さぁ~行こうか。俺は早速森へと向かった、そこに何が潜んでいるかもまだ知らないまま…

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