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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
28/145

案内人

 混迷樹の森を捜索し始めて数時間が経過しただろうか…森の入り口辺りから森の奥へと徐々に捜索範囲を広げていくがいまだに痕跡の一つも見つからなかった。そういえばウォーデンさんはラストさんを引き連れて走り去ってしまった。それが通常運転らしく皆気にしていなかったが良かったのか?


暴斧ベルセルク!まだ見つからねぇのか」


「なんだ幻影ファントム、貴様こそ見つけたのか」


 痕跡の一つも見つからないことに二人が言い争いを始めた。いつもの張り合い癖に手掛かりが見つからない苛立ちが加わり言い争いに発展してしまったらしい。


「うまく跳ねて移動しているではないか、まるでジャイアントホッパーのようだな。ハハハ」


「お前こそ、荒ぶるキラーマンティスのようだぜ。草刈り、楽しそうだな」


「なんだとぉぉお、幻影ファントム!」


「うるせぇ!暴斧ベルセルク


 うん。なんかくだらない…でも、下手に間に入るのも怖いんだよな~でも、こんなんじゃ捜索も進まないし止めないと…


「あの、ベリルさ…ん?!べ、ベリルさん!あれ見てください」


「んあ?ケントなんだよ、俺はあのデカブツを黙らせないと…ってなんだあれ、人か?」


「オイ、幻影ファントム!なにかあったのか」


暴斧ベルセルク、そのまま前に走れ!人らしきものが倒れている、早くしろ!」


「オレ様に命令するな!まぁいい手掛かりらしきものがようやく見つかったか…どれその人らしきものとやらは何処だ」


 木々の下を担当していたギルド【ブラッド番人ウォーデン】の四名がベリルさんの指示した地点へと急行する。俺たちも降りれる場所を探してその地点へ向かった。


「これは…亜人ですかね」


「ミヤ、先程の回復薬は持っているかい?見たところ外傷はなさそうだし、疲労によるものかもしれないから飲ませてみよう」


「そうですね」


 ミヤさんが懐から回復薬の瓶を取り出して倒れている亜人に飲ませる。うずくまっていたから顔が見えなかったけど、薬を飲ませるために起こしたので顔を見ることができた。うん…なんかネズミっぽい顔の人だな。この世界ではこういう人のことを亜人っていうんだっけか…ネズミ亜人かどこぞのマスコットとは似ても似つかないな。ハハッってこれ以上は危ないな、やめておこう。


「君、大丈夫かい」


「うっ…ここは?」


 回復薬が効いたのかネズミ亜人が目を覚ました。回復薬には疲労回復みたいな効果がある、負傷を塞ぐのは回復魔法じゃないといけないが外傷がなかったため回復薬を飲ませてみたというわけだ。なんかどちらにせよなにか物足りないな。


「ここは混迷樹の森だよ。君はどうしてこんなところに倒れていたんだい?」


「お、おいらは…あぁあああぁああああああ」


 ネズミ亜人が急に頭を抱えうずくまった。一体何があったというのだろうか。


「君、大丈夫かい。ここは安全だから何があったか私たちに話してくれないかい」


 ガリズマさんがそっとネズミ亜人を抱きしめ囁きかける。暫くして落ち着いたのかネズミ亜人が今までの経緯を話し出した。彼の名前はラタリー、この混迷樹の森には仲間とともに採取クエストをしに訪れたらしい。で、仲間とともに順調に採取クエストをこなしていたところ奴らと遭遇した…


「君の仲間を殺したという二人組は人形をもった男と死人のような男…の二人組だったのかい」


「そ、そうでやんす。お、おいらも仲間を守ろうと立ち向かったでやんすが死人のようなやつの攻撃で…」


「吹き飛ばされて、気づいたら私たちに介抱されていたと…そういうことでいいかい?」


 ネズミ亜人は静かに頷き、そのまま俯いてしまった。声を殺してすすり泣いている。そりゃそうだ、目の前で仲間を殺されたんだ悲しくないわけがない。


「私たちは君の仲間を殺したその二人組を探すためにこの森に来たんだ。無理にとは言わない、彼らの情報ができるだけ知りたいんだ。辛いかもしれないが協力してくれないかい?」


 ガリズマさんがネズミ亜人…ラタリーといったか、彼の背中をさすりながら情報を聞き出そうとしている。ラタリーの状況を察するとすこしそっとしておいてやる方がいいと思うが、エデン商会の二人組が殺しをやるとなるとゆっくりもしていられない。俺たちは奴らが攫った皇女様の保護という重要な役目があるのだから、ことを急がないといけない。


「わかったでやんす。おいらが奴らにあった場所まで案内するやんす。あんたらみたところ結構な手練れのようでやんすな。特にあんたとあんた、魔力が凄いでやんす」


 ラタリーは涙を拭い、協力の意を示した。それでガリズマさんとミヤさんを指さして魔力が凄いと一言…確かに二人とも魔法を得意とするからラタリーの見解は正しいんだけど二人ともラタリーの前で魔法なんて使ってなかったよな?どうやって判断したんだろ。


「私たちが魔法を得意であると何を根拠に判断したのですか?私たちはあなたの前で魔法を見せていませんが…」


 ミヤさんも同じ疑問を持ったらしくラタリーに聞いていた。


「お、おいら生まれつき魔力の流れが薄っすらと見えるでやんす。だから…」


「なるほど、噂で聞いたことがありますね。魔力の流れが見える特殊な目を持って生まれるものが稀にいると、そういうことでしたか」


「えーっとそこのあんたは魔力の流れがないでやんす。おいらも初めて見るでやんす」


 ラタリーが俺のことを指さしてそう言った。うん、確かに俺は魔力を持ってないけど魔力の流れが見える奴にはっきり無いといわれると悲しくなる。このことを忘れようとしてたんだぜ、掘り起こすなよ。


「ガリズマ、それは本当ですか?」


「あ~うん、本当だよ。珍しいよね」


「わかりました。あなたのその力、信じましょう。疑ってすいませんでした」


「気にしてないでやんす。おいらも助けてもらって感謝してるでやんす。道案内、任せるでやんす」


 俺らは闇雲に捜索していたエデン商会の行方を偶然にも手にいることができた。このネズミ亜人、ラタリーの案内のもと奴らの足取りを追うことになった。

一時間だけいつもより早めて投稿しています。残り二話も同様に!まとめて投稿とどちらがいいんでしょうかね。

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