ギルド会談②
「情報ってのはそういうんじゃねぇよ」
ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】の「強賊」ヴィスタって人がドレッドさんに向かって声を荒げる。目は真剣そのもので獲物を狙う狩人の目をしていた。
「そういうのじゃないとおっしゃいますと…」
「俺が聞きたいのは標的の数と行方だ。そいつらがどんな商売してんだとか必要ねぇんだよ」
「そうですね。確かに標的の情報としては不十分でした。今回の標的は二名…店主のドルフィネ、背格好は細身で長身長です。人形が好きなのか常に傍らに抱えています。もう一人はカイザ、蒼白い顔の死人のような男です。彼はエデン商会の用心棒的なもので見た目に反してそこそこのやり手だと聞いております。行方については私どもも把握しかねています。ただ、最後に目撃された情報をいいますと商業街ノーヴァ周辺の森にいたとのことです」
「情報としては心もとないが仕方ないか…トゥイトゥイ!行くぞ。早く捕らえて報酬を独占する」
「ええ、標的も二人のようですし、申し分ないでしょう」
「ちょ、ちょっと…お待ちください」
ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】の二人はドレッドさんの静止を聞き入れずにギルドホールの一室を出ていった。なんというか身勝手すぎると思えるがそれが彼らのスタイルということにしておこう。
「ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】のお二方は出ていかれましたが、皆様も各自準備を整えエデン商会の捜索・確保をお願い致します。優先順位としてはノーブル帝国の皇女様…アザレア・ノーブル様の救出です。最悪、エデン商会の確保はできなくても構いません。それではお願い致します」
今回の緊急クエストはこう…商業街ノーヴァに属する奴隷商、エデン商会がノーブル帝国の皇女様を誘拐した。俺たちの役目はエデン商会の捜索と確保だ。第一優先は皇女様の身の安全らしい。ノーブル帝国とやらがどれくらいの規模かはわからないけど皇女様一人をたった二人に誘拐されて取り逃すとかどうなんってんだろうな。
「ドレッドさん、お久しぶりです。覚えていますか?俺です。荒野からこの街に連れてきてもらった霊仙拳斗です」
「お、おう。あの時のあんちゃんか。まさかギルドに入っていたとは驚きだな」
「フフ、やっぱそっちの方がらしいっすね。なんかかしこまったドレッドさんって違和感の塊っていうか~おかしいなって…」
「俺も一応責任者としての顔を立てておかないといけねぇからな~だが、あーいうのは疲れるよ」
なんかすこしホッとする。俺が始めて出会った恩人はその時と全然変わらない様子だった。
「ドレッドさん、お久しぶりです。ギルド【ガベラ】のギルドマスターガリズマです」
「あ~久しいな。話は聞いてんぜ。ビーインフィニティの討伐をやったんだってな。期待の新人も加入したらしい今回のクエストは頼んだぜ。で、その期待の新人ってのはどいつだ。紹介してくれよ」
「あなたの目の前にいますよ」
「なに?もしかして…あんちゃんが倒したっていうのか?」
「はい…らしいです」
「本当かよ。あんちゃん見た目によらず強いんだな」
なんか見た目的には弱弱しいとかそういう風に見えているのだろうか…まぁ、筋肉とかそんなものはないし。強くは見えないか。
「そういえば~今回のクエストについて聞きたいことがあるんですがいいですか」
「おう、なんだい。俺の知りえる範囲でなら答えるぞ」
「まずはたった二人の賊に皇女様が誘拐されたという現状がおかしいと思ったのですがノーブル帝国の兵はどうしていたのでしょうか」
「ガリズマの旦那、そこなんだよな~俺も気になって帝国に聞いたがよくわからないんだ。一つわかっていることはその時の皇女様のお付き数十名が皆、意識の無い状態で倒れていたってことくらいだ」
「数十名が意識の無い状態で?」
「そうだぜ。そいつらは結構な手練れだったらしいが~皆抜刀もせずに倒れていたんだと…おかしな話だろ?手練れ数十名で警戒していたのに誰も気づくことなく一網打尽にされて皇女様は誘拐された…そんな芸当をたった二人でやるなんてどういう化け物なんだってな」
「確かにおかしな話ですね。私たちもかなり警戒していったほうがいいね」
「それじゃ~クエストの件は任せたぜ。俺はこれから帝国のほうに連絡を入れないといけないからな」
「ケント君、ベリル、二人ともまだ傷が癒え切っていないけど今回のクエストに参加してもらうよ。いいかな?」
「はい、大丈夫です」「拒否権はねぇんだろ?戦闘は厳しいが参加はしてやるよ」
「よし、それじゃ~準備をして捜索を開始しようか。ノーヴァ周辺の森と言えば結束樹の森、混迷樹の森、古来樹の森の三つか…さすがに規模があるね」
「待ってくださいガリズマ、今回のクエストは皆で協力してやるものではありませんか」
ガリズマさんの話しにミヤさんが割って入ってきた。
「ミヤ、そうだね。今回はギルド単体でやるには厳しいから協力するのがいいね。ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】以外に残っているギルドにも話を通してそれぞれ分担しようか」
「それがいいですね」
ガリズマさんとミヤさんが少し話をしたかと思うと二人はそれぞれギルド会談に参加していたギルドのほうに向かっていった。
「よし、大体話はまとまったかな。捜索する森は三つ、今残っているギルドは私たちを含めて六つ。それぞれの森に二つのギルドを割り当てることで話は通した。私たちとギルド【血の番人】で混迷樹の森を担当することになったよ」
俺達の捜索範囲はこの前、ビーインフィニティの討伐…じゃなくてバーハニーを採取しに行った混迷樹の森に決まったらしい。この前も行ったし他に比べて慣れてはいるから大丈夫かな。それぞれのギルドの分担も決まり、皆捜索に向けて準備を行うべく、一度ギルドに帰ることになった。




