ギルド会談➀
「皆様、お集まりになられましたでしょうか」
皆それぞれが久しぶりの会話に花を咲かせていたころだろうか、それを遮るように一つの聞き覚えのある声がギルドホールに響いた。その声の主は俺が出会った時よりも身なりも立ち振る舞いもピシッとしており、一瞬誰かわからないくらいだった。
「この度はギルド定例会談にお集まり頂きありがとうございます。本日は私、ドレッド商会取締役兼商業街ノーヴァ行商組織管理責任者であるドレッドがギルド会談の司会進行役を務めさせていただきます。何卒宜しくお願い致します。さて、突然本題に移りますが宜しいでしょうか」
「え~あれ…ドレッドさん?」
「ケント君、知り合いかい?彼はこの街の行商組織をまとめている偉い人だね。でも…珍しいこともあるんだね~普通ギルド会談の司会進行なんて適当に誰かが始めるのに…」
「ギルド会談ってそういう感じなんですか?」
「まぁ、ある程度の格式みたいなのはあるんだけどとりあえずは情報交換会みたいなものだからね」
ガリズマさん曰く、ギルド会談とはギルド同士の情報共有をする会みたいなものらしいが今回のはいつもとなにか違うらしい。
「待ちな」
「はい、なんでしょうか。そちらのギルドの方は…」
「ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】の「強賊」ヴィスタだ。いまからあんたが話す内容は金になる話かどうか…それについて聞いておきたくてな」
「金の話になるかどうか…ですか。そうですねー私がその賞金を支払うわけではないので必ずしも儲かるとは言えませんが、今回の依頼主はかなり大御所ですので金銭については問題ないと思いますよ」
「そうか、トゥイトゥイ聞いたか?結構稼げそうだとよ」
「ええ、私の占いどおりのようですね」
何やら既に武装していたギルド【賞金首狩り《ノロジング》】の二人組が話しているが内容はよくわからない。俺はドレッドさんもこういった責任ある場ではしっかりするんだな~って思いながらそれを見ていた。
「他になにかあるギルドはいらっしゃいますでしょうか…ないようでしたら此方へ、奥の一室を貸し切っておりますのでそちらにて続きをお話いたしましょう」
ドレッドさんとギルドホールの職員らしき女性の案内のもと、ギルドホールの奥の部屋へと向かう。
「それではこれよりギルド会談を始めさせていただきます。司会進行はドレッド商会取締役兼商業街ノーヴァ行商組織管理責任者であるドレッドが担当させていただきます。では、本日の議題に移ります…その議題とはこの商業街ノーヴァに属しているとされるとある商会が誘拐容疑がかけられておりまして皆様にはその商会の捜索および確保をお願いしたいのです」
「オイオイ、それだけか?オレ様達全員にわざわざ頼まなくてもクエストとして貼り出せばそこのギルド【賞金首狩り《ノロジング》】が請け負っただろうによ~なにか裏があるんだろ?」
「はい、そうです。この話には一つ問題がありまして容疑が掛かっている商会が誘拐した人の中にノーブル帝国の皇女様が含まれているとのことで至急彼女の身の安全の確保をと帝国の方から商業街ノーヴァ行商組織管理責任者である私のもとに通達がありました。ですので、このように皆様にお願いしている次第であります」
「なるほどな~どこの商会かは知らねえがどっかのバカが帝国の嬢ちゃんを攫っちまって焦っているとそういうことか」
「概ね間違いございません」
「それにしても、そこの商会も無茶なことをしているね。わざわざ帝国の皇女様を攫う必要があったのかな」
確かにガリズマさんの言う通りかもしれない。そのノーブル帝国ってのがどれくらいの規模の国かわからないけどそれなりに大きな国家だろう。そんなところに喧嘩を売って得る利益なんてどんなものがあるというのだろう。
「で、その誘拐した商会の情報はどうなっているんだ」
ざわつき始めた一同を遮るようにギルド【賞金首狩り《ノロジング》】の「強賊」ヴィスタって名乗っていた人が尋ねた。
「その商会は…エデン商会というところで主に労働力を商品として提供している商会です」
労働力を商品?一体どういう感じでやっているんだろうか…などと考えていると
「そこは奴隷商か何かか?」
ベリルさんが唐突にその商品について問いただした。
「そうとも言いますね。商業街ノーヴァにおいて奴隷についての扱いは多々ございますが、何かしらの理由で商会と隷属契約を行うことは問題ありません。が、無理に誘拐などをしてそれらを商品とするのは認められておりません」
奴隷という存在は確立されてはいるものの無理やりその身分に落とすのはダメだと…そういうことなのだろうか。まぁ、借金とかの返済ができずにその身で返済するって存在って位置取りみたいなものなのに関係ない一般民を攫ってきて無理強いさせるのは違うよな。
「要するに私たちへの依頼はそのエデン商会ってとこのやつらをとらえればいいとそういうことですね?」
「はい、その通りでございます。捕らえた輩はノーブル帝国に引き渡したのちに処罰を下すとのことでできるだけ生きたままでと言われておりますが、皇女様の御身に危険が迫る場合は皇女様優先で何をしても構わないとのことです」




