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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
23/145

ギルド交流➂

「っぷはぁぁぁああああああ…げほっげほ」


 回復薬を飲まされたそれは勢いよく飲み干しそしてむせていた。


「ラスト、大丈夫ですか」


「大丈夫にみえるっしゃ?」


「随分派手に連れまわされたようだな」


「もういやっしゃーウォーデンの旦那、トカゲ扱い酷いっしゃ」


 遠目に見ていたそれは人の言葉を話しているが人のそれとはまったく違う見た目をしていた。その見た目というのはトカゲ…口からシュルシュルと長い舌を覗かせ背にはヒレのようなものがあり、手には長い爪、下半身には長いしっぽがついていてどことなく緑色な体だった。


「ガリズマさん…あの人って…」


「あ~操者レインラストだね。ウォーデンのお目付け役だよ」


「いえ、そんなんじゃなくて見た目が…」


「ケント君は亜人を見るのは初めてかい?」


「え、あ~は、初めてではないですけど~あれが亜人なんですね」


 なるほど、亜人かそんなのもいるんだったな。そういえば、街で出会ったあの少女も角と尻尾があったよな~あの子も亜人なんだろうか…


「ケント君はさ、亜人のことをどう思っているんだい?」


「亜人について…ですか?少し驚いたくらいですかね」


「他には?」


「え~別に…何かあるんですか」


「そうかい。いや、何も思っていないならいいんだよ。この街にはあまりいないんだけど亜人のことを差別したりする人たちもいてね。それで確認をしたってところだよ」


「あ~そういうことでしたか」


 亜人差別か…確かに人間とは見た目が大きく違うし、人によってはそれを忌み嫌ったりするんだろうな~俺はその人のことを知りもしないで嫌うとかいやだね。見た目がなんだっていうんだよ。それはその人にとっての立派な個性の一つだ。それを頭ごなしに否定するなんてしたくない。嫌うにしろまずは面と向かって話をしてからだよな。元の世界にも差別とかあったけどどこの世界にでもあるんだな~


「そういえば、ガリズマさん」


「なんだい?」


「ウォーデンさんってあんなに幼いのに一人で万の軍勢を相手できるんですか」


 そう…いくら不滅で何度でもゾンビアッタクができるといってもこんなに幼いんじゃ無理だろう。見た目は小学校低学年くらい。それくらいの子供が一騎当千みたいな活躍をするとは到底思えないんだよね。


「確かに今のウォーデンには万の軍勢と渡り合うなんて無理に近いかもね。ほらさっき話した内容を覚えているかい。何かしらの欠損があって元通りになるって話だよ。ウォーデンは祝福エメの不滅を使う度に一時的に幼くなるんだ」


「ってことは今の姿は祝福エメによる損失によるものってことですか」


「そうだね。元のウォーデンは私よりも年上のオジサンみたいな人だよ」


「なんか想像できないですね」


「そうだね。今のウォーデンと元のウォーデンでの類似点は無邪気で無鉄砲ってところくらいだね」


 そこは変わらないだ。でも、封人シラの呪いと祝福エメって色々あるんだな。ラーシャルドさんの言の葉の呪いと気流操作、ウォーデンさんの痛覚の喪失と不滅...なんか失って得ているものも素晴らしくいいとはいいがたいな。本人たちがどう思っているかはわからないけど俺なら言葉が話せて痛みも感じる方がいいかな。痛いのは好きじゃないけどね。


「ガリズマさんじゃないっしゃ~お久しぶりですっしゃ」


「やぁ、ラスト。君も色々大変みたいだね」


「大変ってもんじゃないっしゃ。ウォーデンの旦那の扱いにはうんざりするっしゃー。ん、そいつははじめて見る顔っしゃ。新人っしゃ?」


「紹介するよ。ケント君っていうんだ。ほら、ケント君も名乗ってよ」


「え~っと英雄エロイ霊仙レイセン拳斗ケントです。初めまして!」


操者レインラストっしゃーよろしくっしゃー」


「そういえば、私たちも名乗ってなかったですね。私はミヤ、鮮血公ブラドウェルミヤです。魔法攻撃を得意としています。以後お見知りおきを」


「そういやそうだったな。名乗らせておいて名乗り忘れていたな。オレ様は暴れベルセルクルシウス。よろしくな。そんであそこのちっこいガキがうちのギルマスのウォーデンだ」


「は、はい、よろしくお願いします」


「で、ガリズマ。お前今日の会談の内容は聞いているか?」


「いや、聞いていないよ。普段通り定期連絡じゃないのかい」


「それならいいが~ほら、あそこのギルド【賞金首狩り《ノロジング》】を見てみろ、珍しく完全装備だろ。賞金首狩りのクエストなんて今のところないのになんでだと思うよ」


「確かに変だね」


「オレ様はな~今回のギルド会談で何かしらの緊急クエストがでるって思ってんだ。で、ギルド【賞金首狩り《ノロジング》】はそれをいち早くかぎつけて武装してるって思ってるわけだ。お前はどう思うよ」


「その可能性はあるかもね。あの二人、基本的にはギルド会談に出るだけって感じなのに今回のは何かやる気を感じさせる出で立ちだ。どんなクエストにせよ私たちも気を引き締めて挑まないとね」


「だな。でも、お前のとこの幻影ファントムはあれで役に立つのか」


「ベリルは~」


「オイ、なんだよ暴れベルセルク!俺がどうっていうんだ」


「いや~お前さんのその姿だと皆の足手まといになるのではないかと思ってな」


「へっ、言ってろ。腕が使えなくてもできることはあるんだぜ」


「ほぉ~では楽しみにしているぞ」


 ベリルさんとルシウスさんの間になにか火花のようなものが散ったように見えたが気のせいだろう…この二人、本当に仲が悪いだな。

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