え!?これが噂の異世界ってやつですか?
オッサンと二人で馬車旅…そこまでひどい揺れも無く何もない荒野を進んでいる。
「あんちゃん、名前は?」
「俺は霊仙拳斗って言います。オッサンの名前は?」
「俺かぁ?俺はドレッド商会の商人兼取締役のドレッドさ。ここ等一帯の行商組織を任されている。って、あんちゃんなぁ~オッサンはねぇだろ。俺はこれでもまだ23だぞ」
「えっ!?」
正直驚いた。パッと見40そこらのオッサンにしか見えなかった。でもよーく見ると23にも見えなくも…ないかな?
「レイセンケント!えらい長い名前だな」
「ちょっ、"霊仙・拳斗"ですって!姓が霊仙で名が拳斗ですよ」
「んぁ?姓って家名かなんかのことか?お前何処かの貴族のボンボンか何かか?」
「いや、名前って普通姓と名って感じじゃないですかね?ドレッドさんもドレッド何とかだったり何とかドレッドって感じなんじゃないんですか?」
「ん~よくわからないが俺はただのドレッドだ。前にも後にもなにもねぇよ」
「そうなんですか、家名ってやつは貴族しか持たないんですか」
「まぁ、俺の知る限り家名を付けているのは貴族か名のある騎士様かそんなところだな。で、お前の見た目じゃ騎士の家系ではないだろうと思ってな。貴族のボンボンが家出して迷子になったんじゃねぇかって思ったのよ。まさか見習い騎士だったりしねぇよな?」
「違いますね。まぁ、名前なんて親から貰ったものなのでもしかしたら親が貴族やら騎士様やらだったのかもしれないですけど、俺はそんなんじゃないですね」
「ふーん、そうかい。まぁ、自分がどこから来たかもわからないほど教養のない貴族も騎士もいねぇよな。で、街についたらどうすんだい。俺は用があるから案内はできないぞ」
「街まで連れて行ってもらえるだけでも助かります。街についたら自分なりに調べてみようと思います。」
「そうかい、頑張りな。あ、そうだな~今向かっている街のことを話しておいたほうがいいか。今向かっているのは商業街ノーヴァってところだ。俺が知りうる中でかなり商業が発達しているところだな。情報屋なんかもいるからお前が何処から来たのか調べるのに役立つかもしれないな」
「そんなところでドレッドさんは商店を持ってるんですか?すごいですね」
「オイオイ、そんなに褒めてもなにもでねぇよ。おっとそろそろ着きそうだな。すこし手綱に集中するぜ」
「あ、はい」
ドレッドさんは俺の返事を聞くと前へと向き直り、馬?みたいな見たことのない生き物についた手綱を操りだした。ドレッドさんと話して分かったことがある。それはこの世界には貴族やら騎士様やらが存在しているといこと、そんで俺がいた日本ではないってことだ。日本じゃないなら海外かなとも思ったけどドレッドさんと話が出来ている時点で海外って訳でもないだろう。自慢じゃないが俺、外国語なんて殆ど話せないだよな~そして、荒野で見たあの爆走していた生き物、あんなもの今まで生きてきた中で見たことない。ドレッドさんが手綱を引くこの馬モドキも初めて見る。これらのことから薄々気づいてはいたんだけど、ここって異世界ってやつなんじゃないでかね?そんなもの漫画やアニメとかの話だと思っていたけれど今の状況に当てはまるものだとそれくらいしか浮かばない。正直、異世界系の物語って死んだりして特別な能力を与えられて異世界ライフを満喫ってのが王道みたいなところがあるけど俺みたいに荒野に置き去り、能力据え置きってパターンもあるんですね…ってなんでだよ。扱い酷くないですか?せめて小さな村とかに置き去りでもよかったんだけど…荒野に置き去りで爆走する生き物にひき潰されそうになるって災難すぎではないか?まぁ、一度死ぬよりはいいか…危うく死にかけたけどな。もし、転生とかしてたら何かしら転生特典とかあったんだろうか。まぁ、そんなことわからねぇか。とりあえずはこれからどうするか考えないとな。たまたま通りすがったドレッドさんと出会えて街まで連れてきてもらえるのは運が良かった。でも、俺、金なんてないのに商業街でなにやるんだろ…
「あんちゃん!そろそろ着くぜ。あれが商業街ノーヴァだ」
ドレッドさんが前方を指さしている。その方向に目を向けるとワイワイガヤガヤと賑わう街が見えてきた。