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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
17/145

二つの得たもの

「いってぇぇぇえええええええ」


 翌日、激痛とともにも飛び起きる。


 きゅ~?


 トーナが全身を少しだけ傾けて何してるのって顔で此方を見てくる。真ん丸すぎて首と胴体の境目がないので首を傾げようにも全身になると…可愛いのはいいんだけど痛すぎてそれどころではないんですよね。

昨日、ギルドホールにたどり着くとすぐさま俺とベリルさんはギルド直属の治療師のもとに連れていかれ、回復魔法をかけられた。回復魔法といっても傷が完治するものではなく痛み止めと傷口を一時的に塞ぐものらしく、時間経過でその効き目が無くなると当然なりを潜めていた痛みが顔を出してくるわけで…ちっこいトーナが飛び乗っただけで激痛が走ったと…回復魔法ってこんなにも不便なものなんですかね?一応傷口は塞がってはいるから傍から見れば完治しているように見えるのに、ただの見掛け倒しじゃねぇかよ。傷やケガが一瞬で治るなんて非現実なことだけどさ~そこは魔法の力でチャチャっともとどおりみたいなの異世界ならありでもよくね?まぁ、今回の件で回復魔法は鎮痛剤みたいなものだってわかったから良しとしよう。でも、痛すぎるな~治療師曰くあばら数本にヒビと二本がポッキリイっちゃってると…そりゃ痛いよね~骨折なんてはじめてだけどこんなに痛いならごめんだね。


「ケント君~大丈夫かい?」


 ガリズマさんの声が扉越しに聞こえた。そういえばクエストも達成したことだし、このギルドハウスに居られるのもあと少しなんだな。元々頭数合わせで参加してガリズマさん達の好意でギルドハウスの一室を借りてたんだよな~元々、ギルドメンバーじゃない俺はここに居られるのも期限付きと…少し寂しいけどそういうもんだし新たな拠点を探さないとな。


「大丈夫です。イテテ」


「ドア、開けるよ。いいかい」


「どうぞ」


「叫び声が聞こえたから何事かって見に来たけど~トーナちゃんが傷口のところに飛び乗っちゃった感じかな?」


「そんなところです」


「ふふふ、初めての骨折なんだってね。やっぱり痛むかい」


「そうですね。すっっっごく痛いですね」


「完治には時間がかかるからその間は少しの辛抱だね。でも、その痛みは君がベリルを守るために受けた傷…云わば名誉の負傷ってやつだから誇っていいと思うよ」


「ありがとうございます。そういえばベリルさんは大丈夫なんですか?」


「ああ~ベリルかい、ベリルなら…」


「ガリズマ、呼んだか?」


 ガリズマさんの言葉を遮るようにベリルさんが割って入った。両腕は白い布でグルグル巻きにされていてそれが重いのか前のめりになっている。なんか不機嫌そうだ。


「なぁ~ここまでやる必要あったか?しかもこの布、滅茶苦茶重いぞ!どうなってんだよ」


「ベリルはさ、何度も骨折して感覚がバカになってんの。昨日、こっそり治療師から回復薬を貰っているの見ちゃったからね。放っておくと無茶しそうだったからちょっと重めの布で拘束も兼ねて巻いちゃった」


「オイ、俺はケガ人だってこと忘れてないか?重くて腕千切れるって!」


「大丈夫。治療師から貰った回復薬があるじゃないか痛すぎるならそれを飲めばいいんだよ」


「クソっ、この野郎~」


「ほらほら、ケガ人はおとなしくしといてね~」


 ベリルさんはぶつくさ文句を言いながら自分の部屋へと消えていった。なんだろう…俺よりも重症だったはずなのに慣れって怖いな。


「ケント君もベリルのあーいうバカみたいなところは覚えないようにね」


「はい、大丈夫です」


「うん。あ、そうそう~昨日の件について話そうと思っていたんだ。はいこれ!」


 ガリズマさんから何かが詰まった袋を渡された。どっさりと重みが伝わる。


「これはなんですか?」


「ビーインフィニティの討伐報酬とバーハニー採取クエストの分け前だね。君とベリルが治療師に連れていかれたあとギルドホールの責任者と交渉したらこのように報酬がでたんだよ~良かったね」


 ビーインフィニティの討伐報酬か…そう言えばあの化け物を倒したんだよな?あまり実感がない。でも、みんなは俺が倒したって言ってるし…


「この報酬、俺が貰っちゃっていいんですかね。俺が倒したっていってもベリルさんが弱らせてくれていただけかもしれないのに…」


「う~ん、そのことね~ベリルが弱らせていたとしても君が倒さなかったら今頃君もベリルもここにはいなかったわけで~ベリル曰くケント君が倒したって言い張ってるからこの報酬を君に渡すしかないんだよね」


「俺が倒したって…俺は気絶していただけですよ」


「ベリルが倒したのを見届けているよ。私はね、ベリルと冒険者をやって長いけどベリルが嘘なんてい言っているのを見たことがないんだ。君が何と言おうとベリルが君が倒したといったんだ、なら君が倒したってことなんだよ。受け取らないとかいうんならベリルがすっ飛んできてまた転がされちゃうよ」


 ガリズマさんはふふっと口元を覆い笑いを堪えていた。こんなに言われちゃもう認めるしかないよね。どうやって倒したかわからないけど、俺が倒した…そういうことにしよう。


「あ、そうだ。ケント君、君さこれからどうするんだい?行く当てとかあるの?」


「いえ、ないです」


「そうか~じゃあさ、私たちのギルドに入るなんてどうかな?歓迎するよ」


「え!?」


 ガリズマさんからの提案に驚いてしまった。まさかギルドに誘われるなんて…


「俺、弱くて戦力にならないかもですけどいいんですか?」


「戦力にならない?何言ってんのさ~君はすでに仲間を救えるだけの力を持ってる。だからさ、私たちと冒険者しようよ!」


「…はい。よろしくお願いします」


「うん。ケント君、ギルド【ガベラ】へようこそ!」


 ガリズマさんはそう言って手を差し出した。俺はその手を握って…ギルド【ガベラ】の一員となったんだ。

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