消失
「久しぶりのギルドだ~ガリズマさんたち元気にしてるかな」
「主様~疲れた~」
「あーはいはい」
長旅もあとすこしで終わりノーヴァへと入って気が抜けたのかトーナヘナヘナと倒れこんだ。周りには商人やら買い物客なんかが行き来している往来のど真ん中だった。
俺としても疲れはあったがトーナ一人くらいなら抱えれないことはない…と思い背を向けて膝まづいた。
「ほら、おぶってあげるからのって」
「ヤッター」
トーナはすこしだけ元気を取り戻し勢いよく俺の背中に飛びのってきた。思ったよりも飛び付きが強く前のめりに倒れそうになった。
「こら、危ないだろ」
「えへへ~ごめんなさ~い」
満面の笑みを浮かべたトーナが俺の背中から顔を覗かせていた。反省しているかはさておきごめんなさいは言えたみたいだしこれ以上は言わないでいいだろう。
「ケントさん」
「ん?どうしたの」
「何か周りの様子がおかしくないですか?」
「え?」
シュアちゃんに言われて改めて周りをみたが特に変わらないノーヴァの日常だった。
「気のせいじゃないかな。久しぶりに戻ってきたからすこしの違いでもおかしく感じるんだと思うよ」
「そうですかね…」
なにやら浮かない感じだがそれよりもはやくギルドに戻ってガリズマさんたちに報告したかった。
「ほら、行くよ」
「はい…」
商業域を抜けギルドハウスが建ち並ぶ所へとやってきた。このあたりは商人やら客はあまり立ち入らない。主に冒険者がたむろする場所だ。
「もうすこし行けば俺たちのギルドハウスだ。あともう人踏ん張りだよ」
あとすこしということで足早になる。若干小走りぎみに角を曲がるとそこには俺らのギルドハウスが…あるはずだった。
「え?」
「ギルドハウスが…」
「ないですじゃ」
目に映る光景は予想だにしないものだった。俺らが旅だって一月も経っていないのにそこにあったはずのものがきれいさっぱり消え去っていたのだ。
「ガリズマさん、ガリズマさんとラーシャルドさんは!?」
ギルドハウスが消滅した驚きに放心していたがすぐに仲間の存在を思い出した。
ここには置いてきたガリズマさんやラーシャルドさん、梨衣にカイザーさん、大切な仲間がいたんだ…
「お前らどうしてここにいる?」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あなたは…ルシウス」
そこに立っていたのは共に戦ったギルド『ブラッドウォーデン』のルシウスだった。
「皆は…ガリズマさんがどこにいるか知りませんか?」
すがる思いで尋ねる。
「本当に何も知らないのか?」
「知らないって何をですか?」
「いたぞ!あいつらだギルド『ガベラ』、罪人の仲間だ」
「ちっ、まずいな」
ルシウスは悪態をつきながらこちらに向かってくる冒険者を見ていた。
「幻影のやつはどこにいる?あいつも知らないのか」
「ベリルさんはギルドに報告を…」
「そりゃまずいな。まぁいい、何かの縁だ。話しは後でしてやる。とりあえず俺の指示にしたがって貰う」
「はい…うぐっ」
返事とほぼ同時に腹部に激しい痛みが襲う。
「な、なんで…」
「指示に従って貰うって言ったろ…」
「ケントさん!」「ケント殿!」
「主様~」
皆が俺に向かって寄ろうとしている。もう視界が霞んできている。足元には深紅の水溜ができはじめていた。
「真紅の扉は開かれる。抜血開門」
「ケントさん、ケントさん!」
「あ~る~じさま~」
俺のことを呼ぶ声が聞こえる。全身に力が入らない。手先は痺れているのかわからない程感覚がない。寒い寒い寒い…体がスカスカであるかのように凍てつく寒さに包まれている。
「そこをどけ。はやくしないと手遅れになる。ミヤ頼む」
「これ程までに血を抜く必要はなかったと思いますが、不器用なのか雑なのか少しは私のことを思ってやってほしいものです」
「いいからはやくしろ。しんじまう」
「はいはい、わかってますよ」
何かが俺の体に触れた。とても暖かかった。そう思っていたのも束の間…段々とその触れたところが燃えるような熱さに変わっていった。
逃れようにも全身に力が入らないためただその苦痛に身を任せるしかなかった。
暫く耐えていると少しだけだが手先に感覚が戻り始めた。
先程までの苦痛は心地よさにかわってきた。
「ふぅ~あとは暫く安静にしていればいいでしょう」
ミヤはそういうと触れていた手をどけその場を後にした。
「うぅぅ」
「主様!?」「ケントさん」「ケント殿」
まだ少しだけ腹に痛みが残るが上体を起こして状況を確認する。どうやらここは天国でも地獄でもないらしい。
「目覚めたか?わりぃな、すこしやりすぎてしまったみたいだ」
「あれは?」
「血人に伝わる転移術さ。あのままあそこにいたら捕まってたからな」
「捕まるってどうして?俺らが何かしたって言うんですか」
「本当に何も知らないみたいだな…事の経緯についてはなしてやるよ」




