危機さりて
そのあと、百目鬼の体を借りた鬼姫により武器に移された記録は持ち主の元へと変換された。ただ、ダライによりその肉体が消されたものの記録はどうしようもなかった。
「あんたたちはよくやったさね」
「鬼姫…」
鬼姫さんは肉体を失ったものたちの記憶が記録されている武器ひとつひとつに語りかけそのひとつひとつに励ましと賞賛、お礼を述べていた。
「それらはどうするよ、鬼神?」
「この子らのことはアタシに任せるさね。どんな姿になろうともアタシらの同胞であることに変わらないさね」
「そうか…」
「鬼姫…」
「なんさね、刃鬼?」
「いえ…その~いつまでその格好でいるのかと…そろそろ自分の体に戻られてはいかがでしょうか?」
「……あっ、そういえばこの体はアタシのじゃなかったさね。百目鬼があまりにも静かにしているもんだからついつい長居してしまったさね」
そういうと百目鬼の体が急に糸がきれた操り人形のように崩れ落ちた。側にいた刃鬼が咄嗟にその体を支える。
「おい、百目鬼大丈夫か?」
刃鬼がぐったりとしている百目鬼に声をかけて安否を確認しているが反応はなかった。
「いや~やっぱりこっちのほうがしっくりくるさね」
そんな中、自分の体に戻った鬼姫がゆっくりと体の節々をならしながら現れた。
「おい鬼姫、百目鬼が目を覚まさないぞ!どうなってやがる?」
「そんなに慌てなくてもいいさね。かなりの力を消耗しているだけさね。今はゆっくりと休ませてやりなさね」
「本当にそれだけなんだな?」
「そうさね。今さっきまでアタシがいたのを忘れたさね?肉体も百目鬼の意識にもなんら問題はなかったさね。もすこし休めば元気になるさね」
「そ、そうか…」
「鬼姫さま~」
意識がもどった鬼人のひとりが鬼姫を呼びにきた。今回の件での被害状況についてや今後の対策などについて話したいとからしい。
皆、このような状況になったにもかかわらずあまり気にしていないようだった。そんな雰囲気がすこし変に感じた。
「すまないが百目鬼のことを頼むよ。アタシは長としてやることがたくさんあるからね。今日はもどれないかもしれないさね」
「気にするな。百目鬼には俺の目的達成にまだ協力してもらわなきゃならないからな。こんなところでくたばられては困る」
すこし心配そうな顔をした鬼姫にウィードはボソッと呟いた。
もとから愛想のいい人ではないけれどそのかえしはあまりにも素っ気なかった。
「あの~」
「なんだ?」
「これからどうしますか?」
「これからか…」
いつもならベリルにでも聞く質問を何故か俺はウィードにしていた。
唐突な問いにも狼狽えずウィードはすこしだけ考え込んで口を開けた。
「百目鬼が目覚めてからやろうと思っていたが先に話だけでもしておいていいだろう」
「話…ですか?」
「あぁ、今後についてのな。お前とお前の仲間にも関係する話だ」
「俺にも関係あるっていうのはどういうことだ?」
「理由は省いて単刀直入に話すか…霊仙拳斗、俺らと共にこい!」
「え…?」
「何を言い出すかと思えば随分雑な勧誘だな」
「そんなことはわかっている。俺は俺の使命と目的を果たすためにいる。そのためには選ばれた力を持つ仲間が必要だ。拳斗、君はイレギュラーな存在なのかもしれないが奴らに対抗しうるためには必要な存在になる。その力の正しい使い方なら俺や神楽が教えられるし、君のためにもなるだろう。どうだ、俺らと一緒に来てくれるよな?」
ウィードが片手を俺の目の前にだし俺の決断を催促する。
確かに猛虎の力…守霊の力はかなり強力なものだ。それをあつかいこなせればダライやガンサクに対して苦戦することも少なくなるだろう。でも…
「すみません。俺はあなたたちとは一緒に行けません」
「そうか、残念だが仕方ない。君の返答が良いものであれば棚からぼた餅のような幸運であったが仕方がない。君の意思をねじ曲げてまでの勧誘はしないでおくよ」
「はい、そうしてもらえると助かります」
「あとは…」
ウィードは意識のない百目鬼をみて何か言いたそうにしていた。




