転生者に問う②
「あなたたちは一体何者ですか?」
「何者ですか…か…自己紹介でもいったが俺は転生者ウィード。それじゃだめか?」
「神楽ちゃんの呼ぶ安仁屋っていうのは?どうして百目鬼と面識があるんですか?奴らの正体を知ってるんですか?どうして…」
わからないことならたくさんある。人は答えを欲する生き物だ。わからないことがあれば知ってる者に尋ねる。その過程を通して自身の知識の幅を広げていく。この世界にきてからは何故と思うことは多くあれどそれに答えてくれる存在はいなかった。だが、今目の前にいるウィードと名乗る青年はその答えを知っているかもしれない人物だ。この機会に積もり積もった疑問をぶつけるというのは至って普通のことだった。
「あー待て待て、もうすこし詳しく話してやるから落ち着けって」
次々と溢れてくる質問の波をとめるようにウィードが告げた。
「それじゃあ…」
「あぁ、そうだな~先ずは何から話すべきか…あいつの俺の呼び方についてから話すのがいいか」
少しだけ悩んでからウィードは話し出した。
「神楽が俺のことを安仁屋って言うのは俺が転生する前、安仁屋勇としてこの世界に転移してきた人物だったからだ」
「え、転移…ですか?」
「あぁ、俺は君よりも前にこの世界に迷い混んだ…いや、この世界に呼ばれたものだったってわけだ」
「それはどういうことですか?世界に呼ばれたって…」
「普通に暮らしていた人間がある日突然別の世界に飛ばされること、君はどう思う?」
「どうって実際に俺は飛ばされてここにいるわけですけど~」
「あ~悪い、そういうことじゃないんだ。その現象についてなにか裏があると思ったりはしないかい?」
「裏ですか…あったとしても俺にはわかりませんよ。わかるんだったら文句のひとつでも言いたいところです」
「そうだね。でも、それは叶わないよ」
「なんなんですかそれ、ウィードさんの時はそれができた風な言い方っ」
「俺の時はできたよ。俺も俺をこの世界に転移させたい奴にたくさん文句をいった…」
「それってつまり…転移は誰かが意図的に起こしたってことですか?」
「あぁそうだ」
嘘だろ…転移には誰かが関与していてそいつのせいで俺はこの世界に飛ばされたってこと?そんでウィードさんは俺よりも前に転移してきた人でその時にはそいつに会えた…でも、今は無理?どういうことなんだよ。そいつに会って文句のひとつでもいいたいんだよこっちは!
「どうして叶わないんですか…その俺らを転移させたやつは、今どうしてるんですか?」
「消えてしまった…ダライやその主から俺たちを庇ってな」
「庇って消えた?」
「あぁそうだ。奴らの主のところまであとすこしというところで一瞬にして消し炭にされたんだよ。なにがあったかはそれを体験した俺でさえわからなかった。その攻撃で俺や他の転移者は消えてなくなる運命だった…が肉体が消滅し魂も消えかけようとしたとき俺らを転移させた奴…第四の龍、界変龍ワルドの力によって別の存在として置換されたんだ。それが俺だ」
「第四の龍?置換?どういうことですか」
「この世界の誕生…伝説は知ってるか?」
「えーっと…なんでしたっけ」
「龍創真夢伝説、この世界を産み出した三体の龍の話だ。遥か昔の話で本当かどうかも怪しいものだが今こうして世界がある以上本当のことなんだろう」
「その~第四の龍っていうのは一体…」
「原初の三龍が擬似的な神としてそれぞれの力を分け与えた存在?…みたいなもんだ。俺も詳しくはわからない。そいつが俺らを転移させた張本人だ」
「どうして転移させたんでしょう?」
「ワルドはこの世界の安定を取り持つのが役目だ。だが、その安定を脅かす存在が現れた」
「安定を脅かす存在?」
「あぁ、ダライたちの主だ。そいつは突如現れたらしい…外界からの侵入か突然変異なのかさえもわからないぽっと出の脅威…」
「脅威とわかってるなら神として排除とかできなかったんですか?」
「できなかった…いや、排除という段階まで至らなかったんだ。その脅威はダライらという僕を使いこの世界へと介入する。お前らも戦ってみてやつらがどれ程強いかしっているだろ?親玉へとたどり着くにはまずはそいつらから排除しないといけないってわけだ」
「えっそれって…その第四の龍じゃあいつらに及ばなかったってことですか?」
「ま~そういうことになるな。奴らは万能ではない…がある一部の特性において神とされるワルドを遥かに超える力を有していた。しかも、そいつらはその能力を他者から奪い強化できる。いくら神とはいえど全能とまではいかないワルドが突出した奴らに叶うわけがなかったんだ」
「それでワルドはどうしたんですか?」
「おおよそわかってきたんじゃないか?俺らがいる理由を…」
「俺たちに…助けを求めた…ってことですか?」
「そういうことだ。ワルドもひとつだけ特殊な力を与えられていた。別の世界とリンクするという力だ。といってもその世界で好き勝手どうこうできるってわけじゃない。ただ数多ある世界を元に自分の世界をどう作っていくかの参考にと与えられた力なんだとアイツはいっていた。他世界を観察しこの世界を界変するのが神としての役割、安定させ末永く存続させるそのための力をアイツは利用したんだ。世界を見ていくなかで俺らの世界の異世界をテーマにした漫画とかを見ていたらしくてな。それを真似たともいっていたな」
「神様が漫画とか読むんですか?」
「あぁ、神といってもそこまで厳粛な奴じゃなかったからな…ま~そういうわけで俺らがここにいるってわけだ」
「そういえばどうして転生したんですか?」
「それは奴らに襲われたんだ。まずなぜ転移させたかというとこについて話すか。転生と転移、今すぐ戦略とするならどちらがいいと思う?」
「えーっと転移…ですかね。だって成長した状態で呼ばれるってことですもんね」
「そうだ、ワルドは即戦力として異世界者を転移させる方法をとった」
「でも、成長はしてるけど異世界者だからって異能力とか持ってるかはわかんないんじゃないですか。ただの人を連れてきてもやられるだけですよね?」
「そこのところも考えてた。現に守霊という力を持っていただろう?まーもとの世界では顕現すりゃしないものだがその辺は神としてすこし弄くったらしい。世界の断りを逸脱しない範囲で調整したらしい」
「ってことは~そのワルドって人がこの世界で守霊を扱えるようにしたってことですか?」
「いや、そこはちと違う。アイツがやったのは守霊を目覚めさせただけだ。もともと守霊は主を守る力を持っているが主の中で眠っているだけのものなんだ。火事場のバカ力っていうのを聞いたことはないか?あれはいつも眠っている守霊が主の窮地を救うべく短時間の間目覚めるっていう現象なのさ。その守霊を短時間ではなくしっかりと目覚めさせること…それがワルドが自身の力を用いてやった調整さ」
「守霊の覚醒ってやつですかね」
「そんなところだな」




