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守霊界変  作者: クロガネガイ
第二部
130/145

終結?

『応!』


 百目鬼の持つ鎚と剣が光輝く。それは神楽と呼ばれた少女と同じ輝きだった。光に包まれ百目鬼の姿は見えなくなった。次に現れた姿は眼を疑うものだった。

 先程までなんの変哲もないこの世界の衣服に身をまとっていた百目鬼が兜に鎧と戦装束を身にまとっていた。


「ベリルさん…あれは…」


「知らん!」


 目の前で繰り広げられるヒーローショーのような光景には心が踊った。だが、その現象は謎に包まれており、折角親しくなった同郷の友の状態に心配した。


「やればできるじゃあないか」


「えーっと、これでどうすりゃいいんですか?」


「封印は神楽に任せてお前は奴から奪ったものを奪い返せ!細けーことは成り行きに任せろ」


「はは…なんかよくわかんないな。でも、俺にもこんな力があったんだ。殴鬼おうき打鬼だき、アイツが奪ったものを…刃鬼バキやみんなの記録を取り戻す。行くぞ!」


 颯爽と駆け出す百目鬼…身につけた鎧はゆらゆらと揺れている。それなりの重量があると思われるがそんなことはお構い無しにダライのいるところへと疾走する。


猛虎もうこ、あれも守霊の力なのか?」


『さぁな。オレにもわからん…だが~あの姿は百目鬼の守霊のものだろう。主とシンクロしているようにも見えるが…あ~もう、なんなんだあれは!』


 猛虎もうこに尋ねてもよくわからないと入った感じだった。同じ守霊なのにわからないってことがあるらしい。そういえば前に俺が猛虎もうこの力を行使したときに姿が変わったって聞いたけどそれとは違うんだろうか?


「なぁ、猛虎もうこ


 本人に聞こうとしたとき…キーーンと甲高い音が響いた。百目鬼の持った剣がダライの鎧に当たった衝撃音だった。

 ボロボロなそれだがこうも甲高い音を響かせるんだなと思うとともに猛虎もうこに尋ねようとしていたことも吹き飛んだ。百目鬼の振るう剣は相手を斬るというよりはその刀身で殴っているといった感じだった。鈍器と変わらないな。


「お前らこれでいいのか?」


『…』


「なぁ、さっきみたいに答えてくれって」


 百目鬼の問いに彼の守霊は沈黙を貫いた。その間も両手に持った剣と鎚で絶え間なくダライを打ち続けていた。


「封印と聞いて肝を冷やしたがどうやら貴様らにはできぬようだな」


 ダライが状況を理解したようで神楽たちの策が無意味なものだと気づいたらしい。粉砕された鎧はそのままに新たに自身の体を薄い鉄膜のようなもので覆っていく。


「安仁屋、ヤバイかも」


「ウィードだ!確かにやばそうだな。百目鬼、まだか?」


「まだかっていわれてもわかりませんって」


「まぁ、確かにな…俺にも奪われたものの取り戻しかたなど知らん」


「安仁屋にもわかんないの?」


「ウィードだ。何か手はあるはずだが知らん」


 彼らが話している間にも着々とダライはその身を新たな鎧で隠そうとしている。


「ケント、動けそうか?」


「すこしだけならって感じですね。本気でいくなら一瞬ってところです」


「俺らは盗賊とは違うが…何かを奪うのなら一気に、素早く、強引にやるもんだ。記録という形のないものだがそれを記録する場所は決まっている」


「そうですね。記録するところそれは…」


「頭ん中!」


「せーので一気にかかるぞ?いいか、遅れんじゃねぇぞ」


「ベリルさんこそ遅れないでくださいよ」


「ふん、それだけの口が聞ければ問題ねぇな。そんじゃあいくぜ」


 ダライを覆う鉄膜は体中央から湧き出るようにして発生し徐々ににその範囲を広めていっていた。ベリルさんとのすこしの会話時間でその範囲はほぼ全身へといたろうとしていた。


「神楽!一旦封印の儀は後回しだ。もう一度こいつをぶちのめさないとまずいっ」


「うん、わかった~」


 ウィードが事態の悪化を察し指示をだすがその間にも鉄膜の動きは止まらない。それがどのような代物なるかはわからないが体勢を整えさせるのだけはヤバかった。


「百目鬼!はやくしろっ」


「このっ!お前たち答えてくれって」


 剣と鎚でダライを打ち付けようともその攻撃は効き目が無さそうだった。見た目だけは派手だが一度の応答ののちそれらは沈黙を貫いた。


「さぁ、茶番は終いといこうか…貴様らは我らの驚異になりうる。盤石な状態ではないがここで放置して帰還した後のことを考えるとこうするほかあるまいな」


 ダライは両の手を広げ何かの準備をし始めた。鉄膜もほぼ全身を覆いつくし終えかけている。


「記録はとく保持されたり、我を除くすべての意味は欠如した。更地へと帰れ!抹消オールデリート


 詠唱を終えたダライの前に砂時計が現れる。それをゆっくりと傾け砂が下へと落ちはじめる。


「記録の保管が終わるとき、お前らも我も…消えてなくなる」


「せ~~のっ!」


 パリーンっと砂時計が砕けちり四方に中の砂が飛散する。


「嘘…だろ?」


「どうにかなるもんだな」


「ですね」


拳斗けんと君!?」


 ダライの隙をついた見事な一撃だった。完全に覆いきれていなかった頭部をベリルと拳斗けんとの連携攻撃で切り飛ばした。


「まさ…か…この…ように…な…る…だと…」


「おい、アンタ!今のうちに体だけでもどうにかできねーのか?」


「アンタじゃねぇ、ウィードだって…そんなことはどうでもいい。神楽ぁ!体の封印を試してみろ」


「うん、おっけ~」


 神楽と呼ばれた子がもう一度詠唱をはじめる。


「邪なるもの。大罪犯した罪人よ。汝、その定められた命を終え、その約定を破棄せよ。吾、異界の者。この世界の闇を晴らすべく与えられし力を行使する!」


 すると先程とはうって代わり首のない胴体を光が包みこみそして消え失せた。


「できたよ~」


 封印の儀とやらがうまく行ったのかははっきりしないがおそらくうまくいったのだろう。ウィードと名乗った男に向かって神楽は笑顔で手を振っていた。


「なるほどな…記録は頭部にあった。それを含めていては不可能だとしてもその部分を除外してやれば話は変わるってことか…お前たち、なかなかやるな」


 ウィードが俺とベリルさんをみてそう言った。側にはまだダライの首が転がっていて本当に決着がついたかわからなかったがひとまず終わった…みたい?

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