業鍛剣製
「何をするかと思えばハッタリか?フン、つまらぬ…つまらぬなぁ!」
そう言い放ったダライは鬼姫目掛けてて雷撃を射ち放った。音もなく光一線で鬼姫目掛けて飛来するそれは認識することも不可能に近かった。
バチンっと鞭を打ち付けたような音と共にゴロゴロと激しい雷鳴が鳴り響く。直撃…その音はダライの放った雷撃が命中した音だった。
「これで終いか?呆気ない。おい女、まだ息の根はあるか?勝手にしぬことは許さんぞ。お前の知識は我が記録するのだからな」
勝ち誇ったようにほくそ笑みゆっくりと鬼姫が立っていた場所へと向かう。その場所には黒煙が立ち上ぼり詳しい様子は窺えなかったが何かが熱されたような熱さが周囲に伝播していた。
「き、鬼姫…様…」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」「う、うわぁぁぁぁ」
周囲にいた鬼人たちが目に映る光景を見て阿鼻叫喚した。ダライのことなど一切お構いなしに鬼姫のしを悟り、絶望していたのだ。
「ええい!五月蝿い。有象無象よ、今すぐ消えたいか?」
その様子に怒りを露にするダライ…その怒りに共鳴してか落雷が周囲に落ちる。幸いそれは誰に命中することはなかったが鬼人たちを黙らすには十分な脅しだったようで皆、目に涙を浮かべながら必死に声を殺していた。
「さて…しに去る前に奪ってしまわねばな」
ダライが黒煙の中に手を伸ばし詠唱を始める。
「失意の果てへと飛び立て、汝が生み出す知性の欠片は…うぐっ」
詠唱の途中でダライが苦痛の表情を浮かべる。ゆっくりと黒煙に伸ばした手を引き抜くと肘より先が消え失せていた。
「おのれぇぇ、死に損ないがふざけた真似をしよって!」
ダライが肘より先のない腕を天へと掲げると肉が盛り上がり元通り再生した。怒りの表情を浮かべ黒煙を睨み付ける。
すると今度はもう片方の腕が肩から弾けとぶ、更に片足が続け様にふっ飛んだ。
周囲にいた鬼人たちはそのその光景を見てさっきまでの様子とはうって代わりキラキラと輝く表情をしていた。
「調子にのるのも受け継ぐのかい?ほんと…アンタってやつは…変わらないね」
「貴様…何故?」
「アタシをなめるのも大概にしなよ。アンタは知っているはずさね。本気で怒ったアタシの怖さを…」
「黙れっ!鳴剣飛雷ィ」
黒煙へ向けて雷撃を放ったがそれと同時にもう片方の腕が弾けとんだ。覆っていた黒煙が徐々に晴れ、その中から無数の浮遊する剣と共に鬼姫が現れた。
「アンタの雷撃で一度でもアタシのうった武具を切断できたかい?ねぇ、どうなのよ。記憶を記録する盗人さん?」
「貴様ぁ、我を侮辱するのか!?」
「侮辱じゃないわ。呆れてるんさね」
「おのれぇぇぇぇ、貴様の記憶…その創造を我が物に…こうなるのであれば捕らえた時に奪っていれば良かったのだ」
何故我はあの時躊躇した…直感的に容量が足りぬと思ったのか…いや、違う。我に及ばぬと思ったのだ。たかが小娘一匹…
ダライが困惑していると残る片足も根元から弾けとんだ。
「業鍛剣製…鐵よ、刃となれ!」
鬼姫が鎚を軽く振るうと鐵の母で産み出した鉄の塊が一瞬の間に煌めく刃へと変貌した。
「なるほどな。わかった…」
ダライがポツリと呟いた。次の瞬間には鬼姫が精製した刃の雨にその肉体を斬り刻まれ塵へと変わっていた。
「アタシにはアンタが何をしようとしていたのか皆目検討もつかないよ…」
鬼姫の周囲に浮遊していた剣が一本、また一本と急速に錆び付き朽ちていった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」「鬼神様の勝利だぁぁぁ」
周囲にいた鬼人たちが一人また一人とと歓喜の声をあげる。皆鬼姫が危険を取り除いたとそうわかったのだ。
そんな最中鬼姫はふらつきながら歩いていく。その先には地に伏して動かない刃鬼のもとだった。
「ほら、起きな!アンタはアタシの右腕なんだろ?シャキッとするさね」
刃鬼は鬼姫が声をかけても微動だにしない。
「これが…記録の消失ってやつなのかい…なぁ刃鬼目覚めるさね」
それでも刃鬼の反応はなかった。
「鬼姫様っ!?」
突如鬼人の人が声を荒げた。
「なんさね!」
すこしイラつきながら鬼姫が声の方へと振り替える。すると…先程粉微塵に斬り刻んだダライの鎧が宙に浮いていたのだ。
「これは…なんさね」
宙に浮く鎧に右足、左足と失われた部位が形成される。鬼人たちは信じられないといった感じでその光景をただ見ていた。失われた四肢の再生が終わった時、鬼姫は我にかえった。
「皆の者、はやくこいつを止めるさね!」
鬼姫の言葉で何名かの鬼人らは自分の持つ武器に力を込める。そしてすぐさま再生していると思われる鎧に斬りかかった。その数十名程だろうか…彼らはその殆どが刃鬼とともに行動していた刃鬼の部下たちで刃鬼をこんな目に合わせた元凶に対して少なからず怒りの感情を持っていた。彼らが鬼姫の命令を耳にした時にいち早く動いたのはその怒りによるものであった。
「おのれ刃鬼様の仇っ!」
四方から刃の檻で包囲された鎧…ジリジリと鬼人達の手にする刃が迫る。皆が勝利を確信した…その時…ブチュリッという音とともに鎧に群がっていた鬼人たちが飛沫を上げて飛び散った。
「お前たち!?」
「やれやれ…まさかこの記録が役に立つとはな。容量を圧迫する無駄かと思っていたが今こうして我の役にたった」
「貴様…何故生きている?粉微塵にしたはず…」
「驚くか?驚くであろうよ。我は朽ちぬ。我の記録にある再生の術があるかぎりな!」
ダライはそう宣言すると周囲に散らばる肉片を踏みつける。
「たかが有象無象ごときが我に止めを指せると思ったか?貴様らにはその姿が似おうておる。価値の記憶の残骸であるな」
「貴様ぁぁぁぁ」
勇敢に挑んだ同胞を侮辱され鬼姫は激怒した。自身の周囲に鐵の母で鉄の塊を展開し、すぐさま業鍛剣製で刃に変える。数十本の浮遊剣が物の数秒で現れた。鬼姫がダライを指先すとその浮遊剣は一直線に向かっていった。




