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守霊界変  作者: クロガネガイ
第二部
122/145

鐵の鬼神

 鎧の振るう刃が鬼姫キキへと迫る。だが彼女はその場を動こうとはしなかった。


 ふん、鬼神と自称するただの凡人か…まぁ、よい。奴の記憶には少なからず価値はあろう。


 目前まで刃が迫った時…


「あたしが鐵の鬼神って呼ばれてる所以を知ってるか?」


「なにを今更」


「これがその力さ!強靭なる鋼よここに…」


 鬼姫キキが叫ぶと突如として彼女の周囲に鉄の壁が展開された。鬼姫キキに届こうとしていた刃はそれに弾かれ甲高い音を響かせた。


「なに!?」


「これが鐵の鬼神の力、鐵のアイアンバース!」


…」


 刃鬼バキは悠然と立つ鬼姫キキとその四方を囲む鉄壁を見ると力尽き、その場に伏した。


「なんだその力は…魔法の類いか?」


「この力かい?さぁなんだろうね~あんたに教えてやるつもりなんてないよ」


「貴様が教えなくとも問題ない。貴様の記憶を見れば全て解決する」


「そうかい。でも、そう簡単に見れると思わないことだね。あんたは既に村の同胞に手をあげちまっている。そんな不届き者をこれ以上好きにはさせないよ!」


「たかが鉄の壁を出せただけで…いい気になるな!」


 激昂した鎧は再び剣を鬼姫キキ目掛けて振るう。鬼姫キキはその攻撃を微動だにせず大剣で受け流す。何度も何度も振るわれる斬撃のただ一つでさえ彼女に到達することはなかった。


「小癪な…」


「そんな馬鹿の一つ覚えみたいに振り回してもあたりゃしないさね」


「…りぬ」


「なんだって?」


「足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬぅぅぅううう」


 突如激昂して鎧は頭を抱えた。


「足らない?なんのことさね。あんたは力はあれどそれを使いこなせてないだけだよ」


「鐵の鬼神、貴様の知識…必ず奪う」


「奪えるもんなら奪ってみなさね」


「まずはぁ…」


 それは予期しないことだった。鎧は攻撃してくるのではなく鬼姫キキから逃げ出したのだ。


「脱兎のごとく逃げるとは…いや違う!」


「足らぬなら足せばいいだけの話!容量はまだある」


 鎧が逃げた先には意識を失って倒れている刃鬼バキがいた。その距離半歩程…今から追いかけようにも決して届くことない距離だった。


「あんた、何を!?」


「失意の果てへと飛び立て、汝が生み出す知性の欠片は我が喰らいて無へと帰す…亡創失意ドラウガロ


 鎧は淡々と詠唱を行う…ほんの数秒で詠唱は完了し刃鬼バキの体がそれとともにビクンと痙攣した。


「フハハハハハハハハ。これで良い!鐵の鬼神、鬼姫キキよ。貴様の右腕たるこの者の記憶ありがたく頂いたぁあ」


「何やってんだい!刃鬼バキさっさと目を覚ましな!」


 ぐったりとしている刃鬼バキに呼び掛けても一切の返事がない。


「ふむふむ、実に面白い。なぁ鬼姫キキよ、無駄はよせ。もうこやつはただの脱け殻に過ぎん。こいつが刻んできた記録

、このダライが頂いたのだ。さぁ、第二回戦と行こうではないか」



 一方、拳斗けんとらは…


「はぁはぁ…あの人、人使いが…」


「なんなんだよアイツは、俺らを足代わりに使うだけ使っておきながらよぉ、着いたら置き去りかよ」


 更にすこし前…


「さぁて、あんたらあたしを村へとつれてくさね」


「鐵の鬼神だか知らねぇがそれが人へものを頼む言い方か?まずは助けてやったんだ礼の一つくらいあってもいいと思うが?」


「礼ならあとでたんまりとしてやるさね。今はそんな状況じゃない…あんたもわかっちゃいるんさね」


「ちっ、まるでわかった気でいやがる。あぁそうだ。はやく村へと戻ってあんたを拐った奴をどうにかしねぇとやばそうだ。別に仲間でもねぇお前らがどうなろうが知らねぇがあんたらがいなくなれば武具の供給が断たれる…それは重大な問題になる。まぁ、あとで報酬は頂くがその態度、すこし改めたらどうだ?」


「頼むさね…この通り!」


 鬼神は深々と頭を下げた。それもベリルの言葉が言い終わるとほぼ同時にだ。


「お、おう…さ、最初かれそうすりゃいいんだ」


「ベリルさん!」


「あぁ、わかってる。でも…どうするかだな」


「一刻もはやく戻りたい…何かないのか?」


「ケント」


「なんですか急に?」


「俺の速さについてこれるか?」


 ベリルさんが真っ直ぐ俺を見てそういった。ベリルさんについていく…そんなのいつもじゃないか。あなたの後ろを追いかけて今の俺がいる。速さ…速さか~確かに猛虎タイガースタンス中ならどうにかなりそうだけど通常時でならまだまだ厳しそうだな。


「どうなんだ?」


「力を使えばなんとかってところですかね」


「そうかならいい。おい鬼神さんよぉ俺らはとりあえずお前を村へと届ければいいんだよな?」


「あぁそうさね」


「村へついたあとはあんたがどうするか仕切る…そう言うことでいいか?」


「それで構わないさね」


「じゃあ、そういうことだ。ケント、俺とお前でこいつを村へと届ける。力の消耗も気にはなるが村についたらこいつがどうにかするとのことだ。とにかく俺らは…」


「そうですね。そういうことなら…」


「で、どうするんだい?」


「準備はいいか?俺はいいぜ。遅れんじゃねぇぞ」


「ベリルさんこそ足引っ張らないで下さいよね」


「爺さん、嬢ちゃん、お前ら極力急ぐ形でいい。俺とケントではお前らまでっていうのは無理があるからな」


「ふふ、任されるのじゃ。ほれ先を急ぐんじゃろ?」


「あぁ、そうだな。行くぞケント!」


「はい、ベリルさん!猛虎タイガースタンス


「うわっなんだいその姿は!?」


「細かい事気にすんなって今から爆即で村へと向かう。覚悟しろ!」


「あ、あぁ…そりゃあたすかるよ」


「それじゃ行くぞ」


「はい!」


 ケントの返事を書き消すようにものすごい勢いで加速する。鬼姫キキさんの腕をベリルさんと俺で片方ずつ掴み全力疾走する。鬼姫キキさんは予想だにしない移動に目を丸くしていたが文句もいう暇などなくただおとなしく逆風を背に浴びているた。


「もっとだ!もっと速く!」


「はい!」


 更に加速するベリルさんと俺…

 あまりの速さに木々の側を通りかかると葉が大量に散った。

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