雲が空を駆ければ
一方商業街ノーヴァでは…
「ケントさん達が旅立って結構な日が経ちますけど大丈夫でしょうか?」
「わかんないわ。そんなことよりカイザ君このお菓子の味はどうかしら?」
「あ、うん。イイ感じの出来だと思うよ」
「そう、なら良かったわ」
「ギルドマスターはどう思います?」
「うーんどうだろうね。確かに結構時間が掛かってる方だと思うけど~距離もあるので何とも言い難いね」
「ねぇ、どうして急にカイザ君があの子のことを心配するのよ」
「それは…彼には色々と助けてもらったからね。今度何かあれば私にできることをって思っていたんだ。何かこう不穏な気配を感じるのだけれどそれが何かはわからない。あの仮面に操られていたせいかもわからないけど前のように霊との干渉もできなくなっているんだ。この不穏な気配がただの気のせいであればいいんだけどすこし気になってね」
「ふ~ん、まぁ確かに拳斗には色々と世話になったわね。カイザ君のこともそうだけどあの空間から出られたのもあの子のおかげだったかもしれないわね」
「梨衣さん、一つ聞いてもいいかい?」
「いいわよ。で、何を聞きたいわけ?」
「君の能力で長距離を移動できるものがあるとケント君から聞いていたんだけど~それは本当かい?」
「ええ、あるにはあるわよ。それがどうかしたかしら?」
「お願いというかギルドマスターとして君に頼みたいんだけどその力を使ってケント君たちのことを見てきてくれないかい?問題が無ければいいんだけど何かあったとしたら助けがいると思うんだ。私も行きたいのは山々なんだがギルドマスターとしての仕事もあるし今はここを離れられない。だから…お願いできないだろうか?」
「う~~~~ん…面倒なことね」
「そこを何とか」
「ミスティ、私からも頼む。彼らは私たちの恩人じゃないか。彼らが困っている時こそ恩を返す時だよ」
「あ~もうわかったわよ。仕方ないわね」
「ありがとう」
「行くのはいいけど問題が無ければ何もせずに戻ってくるわよ。それでいいわよね?」
「うん、それいい」
梨衣はガリズマの返事を聞くと一人でに準備をし始めた。
「あ、そうだ。ギルドマスター、カイザ君のことお願いね。行くのはいいんだけどこの力は一人用なの。本当はカイザ君と一緒に空の旅もいいな~って思ったけど残念ね」
「うんわかった。ギルドマスターとしてカイザさんのことは任せてくれ」
「じゃあ、カイザ君行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
カイザの言葉を聞くと梨衣はスッと彼の側に近寄り頬に口づけをして空へと消えていった。
「何もないとイイんだけど…」
そんな彼女の後姿を見ながらカイザはポツリと呟いた。
「ひとまず今私たちにできることをしますか」
「そうですね。ガリズマさん私にもできることがあれば何なりとお申し付けくださいね」
「じゃあ~そうですね…もうすぐお昼時ですしラーシャルドやトーナちゃんを呼んできてもらえますか?」
「わかりました」
カイザはフラフラとまだぎこちない足取りでラーシャルドの居る部屋へと向かった。コンコンとノックをし部屋にいるか確認を取る。戸を叩いて数分…戸が開き中からラーシャルドが顔をだした。何か用かといった様子で戸の前に立ちカイザを見ている。
「ラーシャルドさん、そろそろお昼の時間ですので食卓へ来てくださいとのことですよ」
カイザは簡潔に用件だけを伝えた。ラーシャルドは首を縦に振り部屋から出て食他のある方へと歩いていった。それを見ながら次はトーナの部屋へと向かう。ギルドハウスには複数の部屋が用意されておりもともと少人数であったギルド【ガベラ】には多すぎるほどであった。空き部屋は物置や空き部屋として放置してあったが今はそれぞれのギルドメンバーにひと部屋ずつ割り当てられている。
「トーナさん、お昼の時間ですよ」
戸を叩きそう告げる。普段はトーナが皆のことを呼びに来るのでこういったのは珍しいことであった。
「あれ?返事がありませんね…トーナさんいますか?」
カイザが何度呼び掛けても返事はない。そういえば最近あまり彼女の姿を見なかった。いつもなら彼女の主であるケントさんにべったりで元気にギルドハウスの中を掃除したりと生き生きとしていた。ケントさんが旅に出てからはその姿も見なくなり少し気になっていた。ドアノブに手をかけてまわすとスルリと回った。失礼なことだと思いながらも中の様子を伺う。中はシーンとしていてそこに居るはずであろう部屋の主の姿はなかった。
「これは…」
カイザは覚束ない足取りで食卓へと向かった。
「ガリズマさん、トーナさんが何処にもいません」
「え!?」
ギルドハウスに残ったお留守番組は食卓を囲みいなくなったトーナのことについて話し出す。誰も彼女の姿を見ていないという…
「トーナちゃんはどこにいったんだろう…」
「ガリズマさん大丈夫でしょうか?」
「う~ん…」
ふと行方知れずとなった少女は一体どこへ行ったのであろうか…ガリズマらはギルドハウス内をくまなく探すも見つからなかった。
「もう拳斗のやつ面倒ごとを…ベテラン冒険者が一緒についていながら何やってんのよ」
雲霧に乗り空を疾走する梨衣は一人小言を言っていた。彼女としてはギルドハウスでカイザとともに居たかったのだが世話になっている身の上でギルドマスターの頼みと彼女の最愛の人からのお願いを同時に言われては従うほかなかったのだ。
雲霧は空気中の水蒸気の密度を高めてその上に人一人が乗っても大丈夫なものとなっている。どういう原理なのかは不明だが空を疾走できる力で彼女が謎の空間から出てすぐに拳斗と合流できたのはこの力のおかげでもあった。
「主様大丈夫かな~?」
「知らないわよ。まぁでも守霊がついている以上簡単には死なないわねって…え!?トーナちゃん?」
「うん、トーナだよ~」
「いつから私についてたのよ?」
「お姉ちゃんが主様のとこ行くっていってから~」
「あのね~危ないでしょ。もし私が気づかずに速度を上げたりアップダウンをして振り落とされでもしたらどうするのよ」
「ごめんなさ~い。だってトーナ、主様のとこに行きたかったんだもん」
「あ~もうわかったわよ。振り落とされ無いようにしっかりとつかまっててよね」
「は~い」
トーナはそういうと梨衣にギュッと抱き着きニコニコしていた。当の梨衣は天を見上げ頭を抱えていた。
「ただ見に行くだけだったのにこれじゃあそうもいかないじゃない…」
トーナに聞こえないくらいの小声で愚痴をこぼしていた。




