焦り
村を出て敵が逃げたとされる南東の方角へと突き進む。メンバーは俺、ベリルさん、シュアちゃん、シンリーさんと鬼人族から刃鬼、数名の鬼人そして百目鬼で今回の作戦に挑んでいる。パーティー編成にしては多すぎるので二つに分かれることになった。
一つ目のパーティーはベリルさんをリーダー格とした編成でメンバーをベリルさん、刃鬼、数名の鬼人で構成している。このパーティーは殲滅力の高い大技を持つ刃鬼と偵察と揺動を得意とするベリルさんで隙のない攻撃を行えるのが強みとなっている。それとベリルさんがリーダーを務めることで捜索などの知識を活かし無駄なく鬼人族の統率を容易にすることも可能だ。
もう片方のパーティーは俺、シンリーさん、シュアちゃんに百目鬼という編成だ。リーダー格はシンリーさんが務めることになっているが俺とシンリーさんの二人で協力していく形になるだろう。ベリルさん曰く、爺さんの動きや考え方を見て盗んでこいとのことだ。歴戦の冒険者だったシンリーさんの実力はまだまだはかり知れない。それを戦闘の最中まじかで感じれるようにベリルさんがこういう編成にしたそうだ。百目鬼は鬼姫さんの判別ともし話がごちゃついた時の説明役だ。戦闘面は俺とシンリーさん主体で担うことになる。ベリルさんのパーティーよりも戦闘面では心元ないので直接戦闘は避けて敵と遭遇してもまずはベリルさん達との合流を優先することになっている。確かにシュアちゃんはベリルさんのキツイ特訓を受けてはいるがまだまだ戦闘は不慣れな面が多く見受けられる。敵がそこらのチンピラなら問題ないだろうがそこそこの手練れであれば厳しいだろう。百目鬼も似たような理由で戦闘面は期待できない。彼も俺同様に守霊がいるのだが猛虎曰くまだ目が覚めていないらしくそれを宛てにするのは危険だ。だから後方支援を主にやってもらう手筈になっている。
「拳斗、すこしいいか」
「いいけど~どうかしたの?」
ベリルさんのパーティと別れ各々敵が逃げた痕跡を探すべく散策をしている最中、百目鬼が俺のところに近づいてきてコソッと尋ねてきた。
「お前が守霊に目覚めたときの状況を教えて欲しい」
「俺の守霊が目覚めたときの状況?」
「あぁそうだ。もしもの時に備えて知っておきたい」
「わかったけど~正直俺もあまり覚えてないんだ。うろ覚えにのるけど大丈夫?」
「問題ない」
「あれは俺がギルド【ガベラ】に入って初めてのクエストの時だった。バーハニーっていう蜂蜜を採取するクエストだったんだけど~滅茶苦茶背丈の高い木の上にあるエイトビーという蜂型の魔生物の巣の中に行く必要があったんだ。エイトビーの陽動役をギルドマスターのガリズマさんとラーシャルドさんが担ってくれて俺とベリルさんが巣の中からバーハニーを採ってくる感じで動いてたんだ。でも、問題が起きて巣の中にエイトビーの希少変異個体とされるビーインフィニティがいたんだ」
「ビーインフィニティ?そいつはどんなやつなんだ」
「簡単に言うとばかでかい蜂だね。希少変異個体っていわれるものだから滅多に現れないんだけどその脅威は小さな村なら一瞬で壊滅できるレベルらしい」
「そんな化物とであったのか…やばいな」
「うん、そうなんだ。まだ素人に毛が生えた程度の俺には荷が重いと判断してベリルさんがいち早く俺を逃がしてくれたんだけど暫くして俺はその場所にまた戻った」
「え!?どうして」
「俺もなんでなのかははっきりとは覚えてないんだけどクエストが始まる前にギルドマスターであるガリズマさんからベリルさんのことを頼んだって言われたのを思い出したからかな~こな世界で初めてできた仲間だったし大切にしたいっていう思いもあった…だから危険だと知りつつも戻ったんだと思う」
「それで?」
「それからは記憶が曖昧というかないというかよくわからないんだけど気づいたら目の前にビーインフィニティの残骸が散らばってたんだ」
「それって…」
「うん、戻ったはいいけど早速ピンチに陥った俺を助けようと猛虎が俺の肉体に乗り移って倒したらしいんだ」
「らしいって乗り移られた時の記憶はないのか?」
「うん、その時は一刻を争うとかで強引に俺の肉体を使ったらしいんだ。この話も猛虎から聞くまでしらなかった」
「ならほどな~主のピンチに駆けつける…それが守霊か~」
『おいおい、勘違いしてもらっては困るな』
「猛虎!」
「それはどういうこと?」
『我たち守霊は確かに主の命を守るために存在するがあの時はこの馬鹿が向こう見ずに突撃するからやむを得ずっつ感じだった。こいつが生きていないと我たちも存在できないからな。馬鹿みたいに突撃したり命を危険にさらしたりしなければ我らは顔を出さずに済むんだよ。拳斗もお前みたいに静かに暮らしてくれたらいいんだが言うことを聞きやしねぇからよ。やむ無しに自分の命を守る術を教えてるって訳だぜ』
「守霊ってのは普通は主に顔を見せたりしないものなのか?」
『それは色々だ。できる限り関与しないってのが暗黙の了解だがこいつみてぇにあぶなかっしいなら色々言ったほうが楽なんだよ』
「そういうものなのか?」
『そういうもんだ。お前の守霊が羨ましいぜ。下手に口出しせずとも安寧の日々を送ってくれるんだからよ』
「悪かったなあぶなかっしくて」
『ほんとそのとおりだ』
「でも、お前がいてくれて助かってるよ。無力な自分に頭を抱えなくて済む。やりたいことをやれる。お前がいてくれるからベリルさんたち仲間を守れる」
『なんだよ急に!照れるじゃねぇか』
「一つ言うとすればもう少し俺を主らしく扱ってくれよな」
『悪ぃそれは無理だ。ダーハッハッハー』
「こいつ~」
「なんかいいな…お前ら」
「そうかな?」
「あぁ、俺も…守霊が目覚めたらお前らみたいになりてぇよ」
「う~んどうだろう」
『ケントよりはいい主になれそうだな』
「おい一言多いぞ」
『本当のことだろ?』
「ほんと仲良いな」
百目鬼は俺のことを見てすこしだけ俯いた。何か言いたそうだったけどやめたみたいだった。下手に干渉して深入りはよくないと思い俺もそのことには触れなかった。
「そろそようつ気になったか…鬼神よ」
「あたしの考えは変わらないよ。さっさと村に帰して欲しいね」
「村ではお前の同胞が必死に魔刃を作ろうとしていると言うのにそれでいいのか?」
「それが出来ないと分かってるからあたしを手離さないんでしょ?」
「ふん、分かっていたか」
「魔刃っていうものがどういうものか知ってるのはあんたとあたしくらいだよ。本来ならばあんたが知ってることもおかしなことなんだけどね」
「我が主に捧ぐに相応しい代物なのでな。数少ない情報を元に探り当てた」
「そういうのを誠意を示してつくって貰おうと思わないのかい?」
「貴様に主導権があると?愚かな…貴様はただ命令のままに魔刃をうてばいいのだよ」
「い・や・だ・ね!」
「そうか…気は変わらぬか。時間もあまり無い…そろそろやって貰わないと困るのだが…」
「それはあんたの都合でしょ?」
「こうなれば面倒だが貴様が作りたくなるように仕向けるしかないな。都合の良いことに愚か者どもが此方に向かってきている。そいつらを使うとしよう」
「なんだって!?」
「貴様は嫌でも魔刃をうつことになる…」
そういうと男は不気味な笑いをしながら暗がりに消えていった。
「愚か者どもって…まさかね…」




