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守霊界変  作者: クロガネガイ
第二部
111/145

作戦決行

 次の日…


「これが頼まれていた品だ。自分の目でしっかりと確認するといい」


 刃鬼バキがそういいながら手甲の部分に盾のような装飾がついた手甲鉤ハンドクローを渡してきた。


「あの…」


「なんだ?」


「この盾のような部分ってなんなんですか?」


「あぁそれか…敵からの攻撃を受けるための部位だな。お前が以前どのような守りをしていたかは知らないが鋭利な爪の部分で攻撃を受けるのは刃が痛む最もな原因となる。だからできるだけ面で攻撃を受けられるようなところを設けたというわけだ」


「守りですか?」


「そうだ。どんな強者でも敵の攻撃をすべて躱すことなんて不可能だからな。故に戦闘においてはあらかじめ予測しながら武具の選定を行うのがいいとされる。俺ら鍛冶師はその予測を含めて武具をつくるんだ。その盾はお前がもしもの時に咄嗟に身を守るうえで重要な役目を果たすだろう」


「は、はぁ…」


 刃鬼バキはそういうと誇らしげにその場を後にした。敵の攻撃を受けることを想定した武器選び…かよくわからないな。武器ってのは敵と戦うための道具なわけで守るのなら盾を別に用意したらそれでいいんじゃないか?う~ん、刃鬼バキのいうことがイマイチパッとしない。


「おう、はやいな。ん?なんだそれは…もしかして昨日頼んだ新しい武器か?」


「あ、ベリルさんおはようございます。そうみたいです」


「そうみたいですってなんだよ。納得いってないのか?」


「いえそんなわけではないんですけど…」


「どれ俺にも見せてくれよ」


 ベリルさんが俺の新しい手甲鉤ハンドクローを手に取るとまじまじとそれをなめるように見ていた。


「ほう、なかなかいいものじゃないか。どこに不満があるんだ?」


「いやさっきも言いましたけど不満はないんですって!でも~なんか前使っていたものの名残みたいなのがあってこの盾の部分に違和感があるんです」


「盾の部分?あ~これか!そういやお前に渡したのって刃がついただけのものだったからな。守りなんてお構いなしでやってきたからか違和感が残るというわけか」


「そんなところです」


「気にすんなって。これはこういうもんだって思っていればいい」


「そうなんですかね」


「あぁそういうもんだ。それより前よりも選択肢が増えたことを喜べ!」


「選択肢が増えたってどういうことですか?」


「前のは敵を切り裂き斬撃を放つことしかできなかったがこいつはちと違ったことができる。例えば敵の攻撃を逸らしたり弾いたりなんかがそうだな」


「でもそれって斬撃で打ち消せばいいじゃないですか」


「それもそうだが選択肢が増えるというのはいいことなんだ。確かにお前がいうとおり斬撃で打ち消せばいい場面も多いだろう。だがもし斬撃で打ち消したらよくない場面に遭遇したらどうすればいい?」


「斬撃で打ち消したらよくない場面ってなんですか?」


「あ~もう細かいことはいいんだよ!その場面のことを想像しやがれ!その場合お前はどうするよ」


「その攻撃を避けます」


「お前の背後に仲間がいたとしてもか?」


「えーっとそれなら…」


「そんな時にこれがあればその攻撃を逸らしたり反射させたりと選択肢が増えるだろ?要は手数にゆとりが生まれるんだ。戦闘ってのはな単に真正面から殴り合えばいいってもんじゃねぇ。時には相手の裏をかいて相手が予期しないことをすることで隙を作ることが重要になってくるんだ。だからこの盾があることで前よりもお前の戦闘が進化することになるんだぜ」


 そういうとベリルさんは二っと笑って俺に新しい手甲鉤ハンドクローを返してくれた。新たな戦闘の選択肢…そんなことは考えもしなかった。真正面からぶつかりあい強い方が早い方が勝つ…それが俺が経験してきた戦闘だったけどまだまだ俺が知らないことがあるんだと思わされた。


「よしお前ら準備はいいか?これより攫われた鬼神救出作戦を決行する。まずは敵の位置を把握することを優先し攻撃は情報共有をしたのち行うこととする」


「はい」


 冒険者としての経験を重視されたのか今回の作戦の総指揮はベリルさんが行うことになった。普段のやればどうにかなるだろうみたいな雰囲気はあまりなく不器用ながらも威厳を持った様子で作戦の開始が告げられた。


「なんかドキドキします」


「そう?」


 俺の隣でシュアちゃんがソワソワとしていた。確かに今回の作戦は彼女がギルドに加わってからの初のクエストとなる。緊張なり色々とあることだろう。


「大丈夫だよ、いつも通りにやってればうまくいく」


「はい、頑張ります」


 俺はそんな彼女を軽く鼓舞することしかできなかった。俺もこなしたクエストの数ではまだまだ浅い。だから先輩面した発言ができるわけではないのだがすこしでも彼女の緊張をほぐそうと思って優しい言葉をかけたのだ。下手に圧をかけても余計に緊張させてしまうのでこれくらいが丁度いいと経験上知っていた。これに関してはこの世界にきてから学んだことではない。元の世界で培った経験則だった。

 人は何事も初めてを経験するときは緊張してしまうものだ。それを頑張れなどといった言葉をかけて奮いたたせようとするとかえってダメになる人もいる。俺はどちらかというと頑張れてしまう側の人間だったから問題なかったのだが俺の友人の中にはそういった人がチラホラ見受けられた。普段通りに練習通りにやれていれば問題なくこなせていたような奴が些細なミスで失敗していくのを俺は見てきた。だからこういった場面では先程のような対応が望ましいと思うのだ。シュアちゃんは先程のソワソワした感じからすこし緊張がほぐれいつものテキパキした雰囲気に戻っていた。もともと一人で何でもできるような子なのだ、あまり心配はいらなかったらしい。


拳斗けんと、俺はどうしたらいい?」


 背後から声がした。振り向くともう一人、オロオロとする百目鬼どうめきの姿があった。そういえば彼も初めての体験をこれからするのだ。不安があることに変わりはなかった。


「お前は恩人を助けたい…そうだろ?なら自分のベストを尽くせばいいだけさ」


「俺のベスト?」


「あぁ今の自分にできる精一杯をやる。状況、条件、自分の余力、実力それらのすべてをフルに活かしたならばどんな結末になろうと後悔することはないと思う。そこに俺たちの力が加われば絶対うまくいくからさ」


「そうか…そうだよな。分かったやってみる」


「うん」


 百目鬼どうめきもシュアちゃん同様に目に火が灯りやる気に満ちあふれていた。


「なぁに先輩面してんだよ」


「えっとこれは~ですね…」


「お前も自分のできることやり遂げろよ。前回のクエストからかなりの成長を遂げているのは俺が認めてやる。仮面の悪魔のような得体のしれない奴がいつ襲ってくるかわからない。十分に気を付けてことに挑むこと…いいな?」


「はい!」


「いい返事だ。これでお前もすこしは肩の荷が降りただろうよ」


「あっ…ベリルさんありがとうございます」


「うるせぇよ。ちゃっちゃと終わらせてガリズマたちのとこに戻んぞ」


「そうですね」


 こうして鬼神救出作戦の火蓋が切って落とされた。この先に何が待ち受けようとも俺はできることをやるだけだ。

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