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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
11/145

軍隊蜂

 次の日…


「さあ、行こうか」


 ガリズマさんの言葉とともにギルドハウスを後にする。トーナは昨夜決めておいた通り、ギルドハウスでお留守番してもらっている。念のためトーナがなにか仕出かした時に備えて、ギルドマスターであるガリズマさんには了承を得ている。


「どれくらいで着きそうですかね?」


「う~ん、陽が昇りきる前にはつくだろうね。実際、森に入るのはすこし食事をとった後にするつもりだよ」


「そうですね」


「ケント、俺が稽古つけてやったんだから足だけは引っ張るなよ」


「わかってますって、ベリルさんこそ足手まといにならないでくださいよ」


「ほぉ~そんなことをいうからにはしっかりと役目をこなすんだな。できなきゃ戻ってまた転がしてやる」


「ふふ、二人ともかなり仲良くなったみたいだね」


「仲良くなってねぇよ」「違います」


「はいはい、わかったよ。ほら、もうそろそろ目的地が見えてきそうだよ」


 色々と他愛ない話をしていたら目的地…混迷樹の森のすぐそばに着いたみたいだ。森のすぐそばの見晴らしの良い木陰で食事をとる。食事はガリズマさんとラーシャルドさんが買い揃えた持ち運びに優れた保存食だ。近くに落ちていた木の枝を集め、焚火を点ける。その炎で軽く炙って頂いた。


「森に入る前に最終確認をするよ。陽動は私の光魔法を使ってエイトビーをおびき寄せる。巣の警戒が疎かになった隙にベリルとケント君で中に侵入してくれ。もし、赤い個体をみたら何が何でもいい、すぐ逃げてくれ。命大事にだよ」


「おう」「わかりました」


 最終確認を終えて森の中へと入る…木々の一本一本が高くそびえ立ち、自分が小人にでもなったような感じだ。ガリズマさん達とわかれそれぞれ所定の位置に着く。俺とベリルさんは巣のある木の真下、ガリズマさんとラーシャルドさんはそれから少し離れた木の陰だ。


 ガリズマさんが持っていたワンドを掲げる。これから魔法を使うっていう合図だ。


「瞬くは刹那、光輝け!輝神来光フラッシュ


 カァッーーーっと眩い光によって森中が照らし出される。合図があったから目を細めていたがそれでも眩しいと感じるものだった。輝きが収まりまたもとの暗がりへと戻る…と思いきや。


 ブブブブブブブブブブブ


 何処からか羽音がなり始め、その音は徐々に激しさを増した。頭上の巣から一匹の蜂のようなものが飛び出し、それを幕開きに巣からどんどんと蜂のようなものが飛びだす。よく目を凝らして見てみるとそれは八匹の小さな蜂が組合わさっているように見えた。巣からわらわらと飛び出すそれらを見届け、羽音が過ぎ去るまで俺とベリルさんは身を潜めた。


「そろそろですかね?」


「そうだな。行くか」


「はい」


 羽音が聞こえなくなったのを確認して木を登り始める。装備している手甲鉤ハンドクローがなかなか役に立った。武器としてだけでなく直立した木を登るのに使える、このクエストにうってつけの武器だなって感心した。巣の入口までどうにかたどり着いた。下を見下ろすとかなりの高さだった。別に高所恐怖症とかではないけれど、すこし足が震えた。


「気をつけろよ。落ちたらひとたまりもねぇぞ」


「わ、わかってますって」


「ならいい、んじゃいくか」


「はい」


 ベリルさんの後を追って巣の中に入る。エイトビーの巣は一般的な家屋と変わらない大きさと広さで各部屋がしっかりと区切られていた。


「ベリルさん、さっきのがエイトビーなんですか?」


「そうだ、それがどうかしたか」


「いえ、なんか八匹で一体みたいな感じだったんで不思議だなって思いまして…」


「エイトビーは八匹で一体の魔生物だ。頭一、腹一、手足四、針二の計八匹で構成されている。だが、頭をたたいてしまえばその統率は失われ倒せる。もし、遭遇したら頭を狙うんだな」


「わかりました」


「ん?この匂いは…あった!あったぞ、ケント!」


 ベリルさんの後をついていくと金色に輝く部屋へとたどり着いた。その部屋の中心には光り輝く液体が溜まっていた。


「ベリルさん、これって…」


「ああ、そうだ。これがバーハニーだ。こんなに綺麗なものだったなんて知らなかったぜ」


「ベリルさんも初めて見るんですか?」


「いや、見たことはあるがこんなに輝いているものを見るのは初めてだな。今まで見てたやつが偽物ってくらい輝いているぜ。ほら、さっさと集めるぞ。陽動もどれだけ稼げるかわかんねーからな」


「そうですね。さっさと集めてしまいましょう」


 ベリルさんとともに持ってきた瓶にバーハニーを注いでいく。空だった瓶にどんどんバーハニーが注がれていく様子はまた別の美しさがあって綺麗だった。

 大方手持ちの瓶に入れ終わり、そろそろ帰ろうかと準備をしていると…


 ブーブブブー


「ケント、奴らが戻ってきたようだ」


「そうですね。でも、そこまで数は多くなさそうですよ」


「ああ、だがこの荷物だと少し厳しいから、さっさと下に行くぞ」


「はい」


 ベリルさんとともに巣の入口へと急ぐ。蜜の入った瓶がかなり重く、そこまで速く走れなかった。


 ブブブ…ブ…ブ…ブ…ブ…ザッ


「まて、何かおかしい」


 ベリルさんに静止され、巣のなかの小部屋に入る。


「どうしたんですか」


 ガチュッガチュッ


 入口の方から刃物を打ち鳴らし何かをすり潰しているような音が聞こえてきた。


「ここで待ってろ。少し偵察してくる」


「はい」


 そう言い残してベリルさんが単騎、巣の入口のほうへと向かっていった。


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