打刃
「で、どんな武器を所望する?❝鐵の鬼神❞の右腕として要望に沿った一品を鍛えよう」
百目鬼に叱られ終えた刃鬼がそう聞いてきた。
「どんな武器かぁ…」
「あぁ、ある程度具体的な情報があればあるだけそれにそったものを作ることができる。クエストとはいえわざわざこんな遠方の村まで足を運んだんだそれなりに欲しい性能だったりを考えてきているのだろ?」
さもそれが当たり前だと言わんばかりの口調で尋ねてくる。だが…
「えーっと…なんか手に馴染んで長持ちして頑丈なの~とかですかね」
「は?」
「ケントお前ってやつは…」
何故か皆が俺の方を見てあきれたような感じで見てくる。ベリルさんは天を仰いだ手で自身のおでこをペシリと叩き刃鬼は目を見開いて信じられないと言った様子だった。
「俺、なんか変なこと言いましたか?」
「お前な~ふつうもっとあるだろ。こういう形状で材質はこうでとかさー」
「そういわれても武器とか詳しくないですしとりあえず使いやすくて壊れなければいいかな~って」
「確かに使う分にはそれでいい。刃鬼、お前が拳斗に合うものを作ってやればいいじゃないか?無理なら俺が打ってもいいが?どうする」
「百目鬼は鬼姫様から鍛冶場に容易くいれるなと仰せつかっているからな。それは許されない。また鈍を打たれては資源が持たない。ここ最近、俺の目を盗んで練習しているようだが現場を目撃しだい鬼神の右腕として貴様を始末してくれるからな。肝に銘じておくことだ」
「それは理解している。鬼神の右腕としてのお前は何よりも恐ろしく職務を全うするからな。で、どうするんだ?」
「装備者に要望がないのならそれでいい。言われたように頑丈で長持ちし手に馴染むものを作ればいいだろ…ケントといったか、お前が以前使用していた武具はどのようなものだったんだ?それに似せて作れば使い勝手は変わらないだろ」
「俺が使っていたのはベリルさんから貰った手甲鉤ですね。両手に装備するもので引っ搔いたり突き刺したりできるものです」
「そうか、ではすこし時間を貰おう。遅くても明日までには完成させる。それまでに…」
刃鬼が百目鬼の方を一瞥しまたこちらに向き直る。
「鬼神様奪還に向けての策を練っててくれ。百目鬼あとは任せた」
そう告げると外へと出て行った。
「本当にあんな感じで大丈夫なんですかね?」
「問題ない。刃鬼が作るものはかなりの業物だ。彼に任せておけばきっといいものができると思うよ。じゃあ、俺たちは鬼姫奪還について話し合おうか」
「あ、はい」
「それじゃあまずは何からしたらいいか~」
「話し合う前に一つ確認良いか?」
「あぁいいですよ。あなたは~ベリルさんでしたっけ?どうぞ」
「さっき出ていったやつとお前の会話に出てくる鬼姫ってやつと鬼神ってやつは同一人物だということでいいのか?」
「あ~それか。そうだったな。そのことについて説明してなかったんだ。その通り、❝鐵の鬼神❞こと鬼姫はこの村、鬼人族の長のことだ。鬼人は皆、彼女のことを名で呼ぶことはあまりないんだけどやっぱり生まれ持った名があるならそっちで呼んだ方がいいと思ってな。俺は名前で呼んでいる。因みにこの村で鬼姫と呼ぶのは俺と刃鬼くらいだな」
「なるほど…疑問は解けた。で、その鬼姫って嬢ちゃんは何処に捕らわれてるのか知ってんのか?」
ベリルさんが百目鬼と今後について話し合っている。いつもはガリズマさんがこういった戦略面を担っているからベリルさんがそれをこなせるか少し不安だった。でも、いつにもなく真剣な表情のベリルさんを見るとちゃんとこのパーティーのリーダーとして頑張ろうとしてるんだなって思った。
「まぁ、それでいいんじゃないか」
「確証はないけどやってみる価値はある…」
「お前らもわかったか?」
「無論じゃよ」「はい」
「え?」
驚いて変な声が出た。二人で話し合いをしていたと思っていたら俺もその会話を聞いてることになっていたらしい。確かに聞こえる声量で話していたけど別のことに意識を割いていたせいか何のことを話していたか記憶にない。
「おいケント、まさかお前…聞いてなかったって言わねぇよな?」
「い、いや~そんなことあるわけないじゃないですか」
「よし、なら大丈夫だな」
ベリルさんはそういうと外へと出て行った。それに次ぐ感じでシンリーさんもシュアちゃんも出て行った。家に残ったのは俺と百目鬼の二人となった。
「えーっとさっきの話の内容って~」
「内容?あ~なるほど、聞いてなかったのか?」
「あ…うん」
「あの感じで聞いてなかったとは言いずらいよな」
「わかってくれる?」
「あぁ、ちょうど君とも話したかったし話の序に教えてやるよ」
「ありがとう」
百目鬼がそういうと俺の側に腰かけた。
「単刀直入に聞く、お前は異世界っていうのを信じるか?」
本当に単刀直入だった。俺が彼と同じような境遇にあるのだと確信しているみたい感じでそれについて知っていて当然だみたいな口調だった。
「信じるよ」
「どうしてだ?」
「俺はこの世界とは違う世界の人間だから…かな」
「やはりか…」
「君もでしょ?」
「その通りだ。この世界で姓と名を持っているものは貴族か騎士様くらいらしい。お前の見た目からはそれらに関する要素が見受けられなかったしなにより…」
「なにより?」
「名前が日本人のそれだった」
「え!?確信を得たのってそこ?」
「確信?俺は別にお前が俺と同じような境遇であるという可能性を考えていたがそれはあくまで可能性の話だぞ。確信を得たのはお前の口から異世界から来たと聞いてからだな」
「え、でも俺はわかっているみたいな感じできいてきたじゃないか」
「別にそんなつもりはなかったが…そう見えたのか?」
「うん」
「そうか、俺は至って普通に聞いたつもりだったが今後は気を付けるとしよう。でだ、話を戻すがお前はどうやってこの世界に来たんだ?」
「俺は~」
俺は百目鬼とお互いの転移について話し合った。転移してから今までに起きたこと、この世界には俺ら転移者のほかに転生者も存在していることなど色々なことを話した。最後に…
「百目鬼の守霊ってどんなの?」
俺は一番最後に守霊について触れた。お互いの経緯について色々と話してきたけど意図的にこの話題については触れないように話していたのだ。百目鬼が話し出したら俺も話なそうとは思っていたけどそれまでは秘密にしていた。だけど一向に話す様子がないので耐え兼ねて俺から聞いてしまった。
「守霊?なんだそれは?もしかしてこのこいつのことか?」
百目鬼がそういって取り出したのは槌のようなものだった。確か刃鬼の暴走を止めてたときに振るっていたものだったかな~
「う~ん、わからない」
「そうか。で、守霊とはなんなんだ?」
「守霊とは俺たち異世界からの転移者を守る存在みたいなもの~らしい」
「らしいってなんだよ」
「俺も俺の守霊にそういわれたからそういうものとしか言えないかな」
「なに!?守霊ってのは会話ができるものなのか?確かにこいつは捨ててもいつの間にか俺の元に戻ってくる奇妙なものだったがまさかこいつは俺を守るためにいたなんて…」
あ~捨てたりしたんだ…確かに前の世界では槌のようなものって使うときにしか持ち出さなかったもんな。でも、見知らぬ土地で護身用に持っとこうとか思わなかったのか…いや、思わなかったから捨てたんだな。
守霊と話したことがないってのは猛虎みたいに守霊は主の前にしゃしゃり出ないのが普通なのだろうか?そこのところは俺もわからないんだよな~
『まだそいつは眠ってるみたいだぜケント』
「猛虎、急に喋るなよ」
「なんだこの声は…これが守霊ってやつなのか?」
『お前とそいつにしか聞こえないから心配すんな』
「いや、そういうことじゃなくてだな~」
「俺の守霊が眠っているってどういうことなんだ?」
「確かに、どういうことなんだよ猛虎」
『それはだな~』
「それは?」
『我にもわからん』
猛虎はそういうとダーハッハッってどでかい笑い声をしながらしゃべらなくなった。一体何しに出てきたんだよこいつは…
「眠って…いる?」
百目鬼は一人不思議そうに自分の守霊と思われる槌を眺めていた。




