心は脆く…
「てめぇ百目鬼、貴様は何をやったかわかっているのか?得体の知れない者どもをお前の独断でこの村に入れて何がしたい。お前が同族のものを信じたいのはいいがここは鬼人の村だぞ、好き勝手されては困るな…」
「ようやく起きたか。好き勝手にするもなにも放っておいたらお前が村の前に屍の山を作る勢いだったもんだからな。鬼姫にもよく言われてただろ?『刃鬼は責任感が強すぎるあまり、時にやりすぎてしまう』とね。俺じゃなくてここに鬼姫がいたとしても同じようにされてたと思うぞ」
「そんなことはどうでもいい。一度忠告はしたぞ、邪魔するのであればお前もとな…」
「自責の念に駆られすぎなんだよお前は…お前が伸びている間にこいつらとは話をした。こいつらは俺らが通達したはずの商業街ノーヴァとの商法取引について確認しに来ただけなんだ。俺にもわからないことだが通達文書がどうやら商業街ノーヴァにとどかなかったらしい。それで武具が届かず困っている商人の依頼を受けて訪れたらしいんだ。そんなやつらが鬼姫を攫ったやつの手先なわけないだろ?」
「いや、しかし…そんなのはただの言い訳であるかもしれないだろ」
「今そいつが話した通りだぜ。俺らは武具を求めて店にいったが肝心の武具がないってもんでな、製作元であるこの村で何かあったのではと心配する商人の依頼で来ている。お前らんとこの鬼神とやらについては今そいつから聞いてしったところだ」
「嘘を言うな!アイツだって初めはそんな感じで俺らと接してきたんだ。それで鬼姫様を…」
刃鬼は俺たちの言葉を信じないといった様子で此方を睨み今にでも襲い掛かってきそうだった。
そんな彼の前にシュアちゃんが一人前へでて彼の手に触れた。するとどうだろうかシュアちゃんの手から陽炎息吹の光が溢れでて俺たちを包み込んだ。
「貴様!何をやった」
光が収まると同時に刃鬼が俺らから距離をとったが先程までの仇を睨むような形相は消えていた。敵意剝き出しであった様子もなくなっている。
「シュアちゃん何をしたの?」
「陽炎息吹を使っただけです。この技にはあらゆる傷を癒す力があります。それは傷ついた心も含まれるんです」
「傷ついた心?」
「先ほどの百目鬼さんの話から刃鬼さんは責任感が人並外れて強いということを知りました。彼は本来自分が守り切らなければならない鬼姫さんという方を攫われて自分を責めてばかりいたんだと思います。心というのはそこまで頑丈なものではないんです。強がっていても皆脆いものなんです。それを自ら傷つけていくことでどんどん摩耗し、すり減っていく…その負の連鎖により誰も信用できなくなる。そんな状態に彼は陥っていたのだと思います」
「それで?」
「陽炎息吹を使って彼の傷ついた心を一時的に癒しました。でも、これは一時的なごまかしでしかありません。体の傷は治せても傷ついた心を完全に治すことは私の陽炎息吹を持ってしても可能ではありません。ですが彼と話し合って協力していくには今これが必要だと判断しました。ダメ…でしたか?」
シュアちゃんは不安そうに俺たちのを見てきた。刃鬼も百目鬼も何の話かわからずポカンとしていたが百目鬼がなんとなくこちらの意図を察したのか刃鬼の様子をもう一度確認してた。
「刃鬼落ち着いたかい?」
「落ち着く?何がだ。確かに俺は自分のことを責めている。こいつらのことを信用していないのもその通りだ。だが、一つ思い出したことがあった」
「思い出したこと?」
「昔先代の鬼神様…鬼姫様の御父上に聞いた話だ。我ら鬼人族同様に立派な角を持ち背には羽根、尻の上からは蜥蜴のような尻尾を持つ者に出会ったら敵対するな…という話だ。何故とは聞かなかった。あの時の先代鬼神様の顔からその者らの凄さというのは伝わってきたからだ。この娘はその話に出てくる種族の者だろう。今しがた俺に施した術も異様だった…だが悪いものでは無さそうだ。貴様らが話したことすこしだが信じてやろう。そしてそこの女!もしこの村に害を及ぼすのであれば俺は先代の話に関わらず貴様を排除する。覚悟しておくんだな」
「え、えぇぇぇ」
突然の宣戦布告を受けたシュアちゃんは何が何だかといった様子だった。傷ついた心を癒したはずなのになぜこのような事態になっているのだろうか。
「話は済んだのか?」
「あぁおそらくね」
「ならいい。でだ、俺たちの目的は戦える武具だ。単刀直入に話すが一刻も早く特製の武具を作って欲しい。お前らの事情も分かった上で話している。作ってくれた暁には微力ながらあんたらの攫われたっていう鬼神様っていうのの救出に手を貸してやるつもりだが~どうだ?」
「協力か…武具を作れないお前らにどういった手助けができるんだ?」
「何もその攫った奴の要望を鵜呑みにすることはないだろ?そいつのアジトに乗り込んで無理やりその鬼神様ってのを連れ戻せばいいだけだろ?」
「フン、簡単に言ってくれるな。鬼神様は俺たちの中で最も優れたお方なんだぞ。そのお方が何もできずに攫われた奴にお前ら含めて俺らが太刀打ちできると思っているのか?」
「できるかだぁ?そんなもんやってみなけりゃわかんねぇだろ。俺らは前のクエストで凶悪な敵とやり合って見事人質を助けた実績もあるんだぜ。なぁケント!」
「え!?あ、はいそうですけど~急に俺に振らないでくださいよ」
「何言ってんだ。お前の隠された力があれば今回も楽勝だろ」
「楽勝って…そんな人任せなんですか」
「人任せじゃねぇ信用してんだよ」
「はぁ…」
「まぁ、よくわからんが確かに攫ったやつの思い通りにやるというのも腹立たしい。お前たちの実力がどの程度かわからんがその話試してみる価値はあるかもしれん」
「いいね。なら早速実行と行こうじゃねぇか」
「いや待て」
「なんだよやるならさっさとやっちまった方がいいだろ?」
「協力するにはお前たちの実力をある程度知っておく必要がある。だから…」
「あ~なるほど、お前と手合わせしてみないかと…そういうことか?」
「そういうことだ。俺の本気についてこられなければ話にならんからな。全力でこい!」
「よぅしお前ら日頃の俺の特訓の成果存分に発揮してやれ!負けは認めん」
「はい」「うむ」「はいぃ」
何やらベリルさんが勝手に話を進めて刃鬼という鬼人と戦うことになっているけどこれでいいのだろうか…
まぁでも新しい武具のためにもやるしかない…か。不安でしょうがないよ。




