手荒な歓迎
「ようしお前らあと少しだ気合見せろ!」
商業街ノーヴァを発って早五日目、もうそろそろ目的の地である鬼人族の村が見えてきてもいい頃合いに差し掛かってきた。皆一周回って段々とコツをつかんだのか分からないが自身に適した歩き方を見つけていいペースで進むことができていた。二日目に取った休息も彼らに良い影響を与えたようで無理して進み続けるのではなく、適度に体を休めることでその能率を最大限まで高めていた。
「もうそろそろですかね?」
「そうだな、ギルドから聞いた情報だとそのはずだ」
「そういえば鬼人族ってどんな感じなんですか?」
「鬼人族か?俺もあまり知りはしねぇからなんとも言えないが噂によると武具を作らせたら右に出るものはいない種族なんだとか聞いたな。爺さんはなんか知らないか?」
「んーっとそうですな~儂もあまり見たことはないうえベリル殿と同じようなことしか知りませぬが…確かに武具を作らせたら天下一品として有名ですな。種族的な印象としましては額に一本から三本程の立派な角が生えていまして皆魔法が得意と聞いた事がありますぞ」
「そういやそんなことも聞いた事があるな。あとは特定の場所に居座り外界の者との接触は最低限らしい。商業街ノーヴァの商人が彼らとの商法取引を成立したのも偶然の積み重ねだと言われてる」
「偶然の積み重ねですか?」
「あぁ、なんでも現鬼人族の族長である鬼神様ってやつと運よくであえたらしくな。直接交渉が実現したんだとなんでその鬼神と出会えたかは俺にもわからん」
「鬼神様ってどんな感じなんですか?神って言うからには鬼人族の中でも一番強いとかですかね?」
「鬼神様ってのはいわゆる族長の地位ですよって称号みたいなもんらしい。俺も詳しくは知らんが鬼人族の中で最も良い武具を作れるものがその地位につくとかなんとか…まぁそんなところだ」
「結構謎が深いですね」
「そうだな。あまり人族との関わりがない分情報が曖昧なんだろう」
そんな感じで進んでいると目の前に村らしきものが見えてきた。
「お、着いたみたいだな」
「結構な距離がありましたね~」
「そうだな。だが油断するな、俺たちの役目はここからなんだからな」
「はい」
俺たちがこんな遠方の村まで足を運んだのは商業街ノーヴァと鬼人族が結んだ商法取引の現状について確認をするためだ。どうして突然武具が送られてこなくなったのか、その原因を見つけて対処しなくてはならない。
「村の入り口には誰もいなさそうだな。近くまで行って呼べば対応してくれるのか」
そういいながら村の入り口辺りまで行くと…
ザッザッザッザッ
と急に天から剣が降りそそぎ俺らはそれらに取り囲まれる形になった。別に油断をしていたわけではないが何もないところから湧き出た剣には驚かされた。剣の雨?による攻撃みたいなものは不発に終わったが異様に地面に突き刺さっている光景には何かありそうな感じだった。
「なんだよこれは鬼人族なりのもてなしか?」
ベリルさんがやれやれって感じで前へ進もうとするとバイ~ンって感じに見えない壁に跳ね返された。
「おいなんだよこれ」
「呑気にくるとは油断しすぎではないか?この悪魔の手先め!」
「誰だ!」
声と共にあらわれたのは額に角を生やしたものたちで彼らは俺たちの周囲を取り囲んでいた。一瞬の出来事だった。それはまるでベリルさんの疾踪を使ったみたいだった。さっきまでそこには誰もいなかったはずなのにいまでは数十人の鬼人族らしきものらに取り囲まれている。
「大人しく鬼神様を解放してもらおうか、さもなければ今すぐここでお前らをコロす!」
「はぁ?何言ってやがるどういうことだ」
「何をとぼけたことを…次くるときは質の良い魔刃を受け取りに来るといったのはお前らの主であろう?部下が間抜けであの悪魔も頭をかかえてるであろうな」
「ベリルさん、この人たち…」
「あぁ俺らを何か別の連中と勘違いしてやがるな」
「さぁ、貴様らのねぐらを言ってもらおうか」
「待ってください。あなたたちは何か誤解しています」
「誤解?悪魔どもが何を言うかと思えば片腹痛い。そんな戯言で逃れようとしても無駄だぞ」
「私たちは商業街ノーヴァから来た冒険者です。あなた達鬼人族との商法取引について話をしにきました。鬼神様とか悪魔とか私たちに言われても一体何のことなのか…」
シュアちゃんが鬼人族らしき人達に俺たちの目的と正体について話した。彼女にとってこういった誤解を生むような場面には何度か遭遇したことがあるのかその振る舞いには慣れたものが見受けられた。確かに彼らの言う悪魔とかって話は俺らたちには関係がない話だ。もし仮に俺たちが取り逃がした仮面の悪魔に関することだったとしてもその情報が伝わるには早すぎるし、なにより俺たちが悪魔の手先にされているのが謎となる。
「悪魔はそういって俺たちをまた騙すつもりか…もういい、一度痛い目を見ないことにはその本性を見せないらしいな。構えよ、この悪魔の手先らに断罪の一撃を!」
「ケント!爺さん!」
ベリルさんが焦った表情で俺とシンリーさんの名を呼んだ。何かまずい事態になったことだけは俺にもわかった。でも、これから何が起こるかはわかりもしない。だから…
「猛虎の型!」「錬武!」
俺もシンリーさんもとりあえず自己強化を行い最悪の事態に備える。
「剣光よ、邪なるものに裁きの雷を!鳴剣飛雷」
リーダー格らしきものが叫ぶと俺らを取り囲んでいた五本の剣が呼応するように輝きだした。そして…
ドゴォーン
一瞬の内に剣から剣へと光の斬撃が放たれた。それは五本の剣の内二本の間に挟まれる形で立っていた俺めがけて放たれたものだった。俺は猛虎の型の技の一つである虎紋瞬光レベル一、壱虎を発動させそれを神一重で避けた。さっきまでたっていた場所には地面を何かが通ったような痕跡が残っており地面が若干焦げている匂いがした。
「まさか…避けただと?そんなことはない音よりも早い斬撃を悪魔と言えど躱せるわけがないはずだ!もう一発喰らえ鳴剣飛雷!」
また同じ技を放ったらしい。今度もなんとか避けることに成功する。音よりも早い斬撃とリーダー格らしきものは言っていたが確かに避けた後に雷が落ちたような音が響いているのでそうなのだろう。だが、俺の壱虎は移動速度に特化した技だ。この技は自身に電流を流すことで脳による信号ではなく筋肉を直に動かすことで人の動きの限界を超えて動くことができるものだ。音を聞いてから動けという命令がくだされるものならその斬撃を受けるのだろうが斬撃を感知するとともに即座に動ける俺ならばたとえ音の無い斬撃であろうとも回避は可能となる。
「バカな…まさかこの悪魔の手先どもの相当な手練れだというのか…」
「少しは俺らの話を聞いてもらおうか?」
「黙れ!悪魔の囁きになぞ二度と惑わされるか!もう一度だ鳴剣…」
「待て!刃鬼」
頭に血が昇ったリーダー格を止めたのは村から歩いてきた額に角もない人族の少年であった。




